この期に及んで。この時期に。
2022年04月22日、韓国の青瓦台・大統領府は、退任間近となった文在寅大統領と北朝鮮の金正恩総書記が親書の交換を行ったことを明らかにしました。
先週に北朝鮮のミサイル発射に対して、ついこないだ――わずか6日前の04月16日に国家安全保障会議(NSC)を開催しドタバタさせられたにもかかわらず、親書の交換を発表しています(以下は2022年04月17日のNSC開催についての大統領府プレスリリース)。
↑Google Chromeの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。大統領府は16日(土)北朝鮮のミサイル発射に関連して、昨日夕刻国家安保室1次長(NSC事務処長)駐在で緊急会議を開催したのに続き、本日午前には国家安保室長駐在に外交安全保障省次官級と合参関係者が参加する会議を開催し、北朝鮮の軍事動向の点検および対応方向を議論しました。
文在寅大統領は、関連状況を国家安保室長からリアルタイムで報告され、北朝鮮の動向を綿密にチェックする一方、関連省庁が徹底的に状況管理をするよう指示しました。
ミサイルで威嚇している相手と親書を交換するというのも相当な神経です。もちろん、緊張しているからこそ対話が必要と考え方もありますが、その親書の内容たるや、まさに「お花畑」なポヤ~ンとしたものです。
以下の青瓦台・大統領府の出したプレスリリースをご覧ください。
文在寅大統領と金正恩国務委員長は最近、親書交換を通じて過去5年間を回顧しながら、相互信頼と対話の中で朝鮮半島の平和と統一の努力を続けていくことに共感し、南北の同胞たちに温かい挨拶を伝えました。
金正恩国務委員長は、親書で「平和と繁栄のために共にした日々が感慨深く回顧された」とし、「私たちが希望したところまでは至らなかったが、南北関係のマイルストーンとなる歴史的な宣言と合意を出し、これは消し去ることができない成果」と評価しました。
金委員長は「今になってみると残念なことが多いが、ずっと傾けてきた努力を基に、南と北が継続して真摯に真心を注いでいけば、いくらでも南北関係が民族の期待に合わせて改善され、発展できるということは変わらない」と述べました。
また、金委員長は、任期の最後まで民族の大義のために心を込めてきた文大統領の苦悩と苦労、情熱について高く評価して敬意を表し、文大統領を忘れず退任後も変わらず尊敬するとしました。
文在寅大統領は親書で「大統領として最後の安否を伝える」とし、「惜しい瞬間が激しい記憶とが交差するが、それでも金正恩国務委員長と手を取り、朝鮮半島の運命を変える確かな一歩を踏み出したと思う」としました。
文大統領は南北の対話が希望したところまで至らなかったことに対する惜しさを表わし、対話で対決の時代を超えなければならず、北米間の対話がすぐにも再開されることを希望しました。
文大統領は、対話の進展は次の政府へ分かたれ、金委員長が朝鮮半島平和という大義を大事にして南北協力に取り組んでくださるようお願いした。
文大統領は、南北が生み出した板門店宣言と平壌宣言、9・19軍事合意が統一の基礎となり、南北の努力が朝鮮半島の平和の貴重な動力として蘇ることをいつも信じて待つと述べました。
文大統領は「もう平凡な国民の一人に戻るが、いつでもどこでも朝鮮半島の平和のために心を共にする」と述べました。
今回の南北首脳の親書交換は深い信頼の中で行われたもので、文在寅政府の最後の親書交換が今後南北関係の発展に基礎となると期待します。
これは、文大統領の自画自賛です。
経済的にも、外交的にも、内政的にもなんらの成果も上げられなかった文在寅が、最後にほめてもらいたいと提示したのが「北朝鮮との対話」なのです。
金正恩国務委員長が「私たちが希望したところまでは至らなかったが、南北関係のマイルストーンとなる歴史的な宣言と合意を出し、これは消し去ることができない成果」と述べたことになっています。
「金正恩総書記が消し去ることのできない成果を作った文在寅を讃えた」という意味に他なりません。
本当にこんなことが、その親書に書かれていたのでしょうか?
金正恩総書記は、文大統領との間で3回も行われた南北首脳会談については全く評価していません。なぜそんなことがいえるかというと、例の記念切手です(詳細は以下の過去記事を参照)。
北朝鮮の朝鮮切手公社は、「金正恩総書記の10年」の歴史と成果を振り返るという記念切手セットを公表したのですが、そのセットの中に、文大統領との会談(南北首脳会談)の写真は1カットもありません。
↑トランプ大統領との会談を切手化。
これは、金正恩総書記、そして北朝鮮が「文大統領との南北首脳会談」を成果として認めていない証拠です。ですから、(本当にそんな親書交換があったとして)本当に「南北関係のマイルストーンとなる歴史的な宣言と合意」なんて書いてあるのでしょうか。
金正恩総書記が「平和と繁栄のために共にした日々が感慨深く回顧」するとはとても思えませんし、ミサイルも撃ち込んでますし。
親北で走り回った揚げ句に……全く成果はなかった
読者の皆さまもご存じのとおり、文大統領は任期最後に「朝鮮半島の終戦宣言」を出させようとアメリカ合衆国、中国の間をどたばたと走り回りました。ローマ教皇にまで謁見して「北朝鮮に行ってくれ」と要求しました。
これらが本当だったのかは検証されるべきです。
しかし、結果は惨敗。「ごまめの歯ぎしり」というやつで、外交の天才という文大統領は全く事態を動かすことはできませんした。
また、何より北朝鮮の金正恩総書記自体が、「文在寅は仲介者づらするな」と述べ、合衆国と北朝鮮の対話について、文大統領の働きなど認めてはいなかったのです。
で――今回の親書交換です。
この時期に大統領府がこんなプレスリリースを出した目的は「自画自賛のため」としか考えられません。文在寅さんは、「自分は南北統一のための基礎をつくった人物」として高く評価されたいのです。
たとえ北朝鮮のTopから足蹴にされたとしても。
(吉田ハンチング@dcp)