2024年11月11日、『中国人民銀行』が、
「2024年10月社会融资规模增量统计数据报」
(2024年10月 社会融資規模増加統計データ報告)
「2024年10月社会融资规模存量统计数据报告」
(2024年10月 社会融資総量の統計データ報告)
および
「2024年10月金融统计数据报告」
(2024年10月 金融統計データ報告)
の3つのデータを公表しました。
これがなかなか興味深い内容なので、ご紹介します。
「社会融資総量」って何?
まずちょっと基本的なタームの説明をします。「社会融資総量って何?」――です。できるだけ簡単にやっつけますのでどうかご寛恕ください。
ご存じの方は次の小見出しまで飛ばしてください。
「社会融資総量」(社会融资规模)というのは、中国の金融システムが実体経済にどれだけの資金を供給しているかを示す重要な指標です。
具体的には、銀行の貸し付けに限らず、企業や政府が国内で行うさまざまな資金調達方法を網羅しており、広義の「信用供給量」と考えることができます。
平たく言うと、方法はいろいろあるけど政府・企業・家計がナンボお金を借りてるんや?――というストック(残高)のデータです※1。
ちなみに社会融資総量には、以下のような資金供給が含まれています。
1.人民元貸付:銀行が企業や個人に貸し出した人民元建てのローン。
2.外貨貸付:銀行が提供する外貨建ての貸付。
3.企業債券:企業が発行する債券で調達した資金。
4.政府債券:地方政府や中央政府が発行する債券で調達された資金。
5.委託貸付:企業や個人が第三者に資金を貸し出す形で銀行を通じて実施される融資。
6.信託貸付:信託会社が資金を企業やプロジェクトに貸し出す形で供給する資金。
7.未割引の銀行承兑(商業手形):企業が取引で使用する約束手形で、まだ銀行によって割引されていないもの。
8.株式:非金融企業が国内で発行する株式によって調達された資金。
中国の経済運営では、社会融資総量が実体経済における「信用供給量」の指標とされ、経済成長のペースや景気の冷え込み具合を判断するために使われます。
例えば、社会融資総量が増加していれば経済の成長が見込まれ、逆に減少すれば景気後退の兆候と見なされることが多いです。
金融政策や財政政策の効果を測定し、適切な調整を行うための重要な指標と考えていただれけばOKです。
例えば、新規の債券発行や貸付増加など、実体経済に流入する資金の増減を把握し、その期間中に経済がどれほど資金を吸収したかを示す指標でもあります。そのため、「どれだけの資金が調達されているか」という資金調達の総量(累計)を重視しています。
要するに、社会融資総量は、「政府・企業・家計が金融システムからどれだけの資金を調達しているのか」、すなわち、「負債残高」と「新規の資金流入(増加)」の両方を包括的に捉える指標と考えるとイメージが近いです。
経済が回復しているような気配はない!
今回面白いのは、これらのデータが中国の行き詰まりを見事に表しているからです。一応3つの資料をすべて全文和訳したのですが、貼るとものすごく長くなりますので、誠に申し訳ありませんが割愛させてください。
データからどんなことが分かるのかをご紹介します。
●中国人がお金を借りなくなっている!
まず、2024年01~10月における人民元の新規融資額は16兆5,200億元増加しました。ところが、10月単月で見ると、新規融資は4,997億元しかありません。
これは過去3カ月間で最低の水準です。09月の1兆5,000億元からも大幅な減少で、実に約66.7%も減少したのです。
何を意味しているのかというと、中国の皆さんがお金を借りなくなっているということです。
●中国人がお金を預金して、消費しなくなっている!
一方、広義のマネーサプライ(M2)の残高は309兆7,100億元で、前年比7.5%増加していますが、狭義のマネーサプライM1は63兆3,400億元で、逆に6.1%減少しました。
広義のマネーサプライ(M2)には現金(M0)に加えて、銀行預金や定期預金なども含まれています。
つまりM2が増加しているということは、企業や個人が銀行に預金を多く蓄えていることを示しています。
これは、個人や企業が資金を貯蓄に回している可能性を示唆し、預金残高が増加していることから、「消費や投資に回されず、手元に置いている資金が増えている」ことが読み取れます。
狭義のマネーサプライ(M1)は、M2の中でも流動性が高い部分で、企業や個人の「当座預金」や「現金」を指します。
M1が減少しているということは、短期で自由に使える資金が減っていることを意味し、企業が日々の取引や運転資金として保持する流動性が低下していることを示しています。
M1の減少は、企業や個人の「消費活動が鈍化し、資金を積極的に運用していない」ことを意味し、消費や事業投資が停滞している兆候として見られます。
つまり、預金はするけど消費しないよ――になっています。もっとも中国の場合、預金しても「自分のお金を引き出せるとは限らない」という地獄のような状況なのですが。
というわけで、今回のデータは「消費が伸びない」「投資をしない」「お金を使わない」「お金を借りない」という状況を示しており、このような有り様ですから、とても中国経済が回復したり、成長するなどとは考えられないのです。
(吉田ハンチング@dcp)