韓国メディアで、半導体戦争において韓国が置いていかれているのはないか?という不安を表明する記事が増えています。
日本『Rapidus(ラピダス)』は、Money1でもご紹介したとおり、2023年09月01日、最先端半導体の開発および生産を行う「IIM-1」の建設予定地で起工式を行いました。
熊本では、台湾『TSMC』の半導体ファウンドリーが完成し、2024年02月24日、開所式が行われました。すでに第2工場の建設も決まっており、2027年末までに、6ナノの先端ロジック半導体を量産予定です。
↑開所式について訪じるYouTube『熊本朝日放送』チャンネル。創業者であるモリス・チャン会長が訪日していることにご注目ください。
日本では、半導体製造において、アメリカ合衆国、ドイツを上回るスピードで施設を拡充させています。素材・装備だけではなく、最先端半導体そのものを日本国内で作るために、本格的な取り組みが始まっているのです。
日本・合衆国・台湾の取り組みに比べて、韓国が「遅れている」「ハミゴにされている」と感じるのは当然です。先にご紹介した、絵に描いた餅に過ぎない「622兆ウォン投入して世界最大規模のメガファウンドリー地域を造る」と言うのが精一杯です。
この孤立感と不安は相当なもののようで、『韓国日報』に面白い記事が出ています。
「抱擁と協力が必要なんだ」と主張
同紙の論説委員も務めるチョン・ヨンオ記者の手に成る、「半導体戦争と平和」というタイトルの記事で、興味深いのは最後の部分です。以下に引用してみます。
(前略)
その後、半導体はグローバリゼーションと自由貿易を原動力に急速に発展した。設計はアメリカ合衆国、生産設備は日本と欧州、生産は韓国と台湾で国際分業が確立された。
しかし、中国の台頭と武器のパラダイムが変わり、分業体制が揺らいでいる。これからの戦争は先端センサー、通信、AIが主役になるだろう。
この戦争は、データ、アルゴリズム、演算力の3要素によって勝敗が決まるが、中国はすでにデータとアルゴリズムで合衆国と対等な立場にあり、演算力、つまり半導体技術だけで負けている。
合衆国が韓国、合衆国、日本、台湾を「Chip4」という半導体同盟で結び、中国への先端半導体技術移転を徹底的に封鎖する理由だ。
価格と性能が優先されていた半導体業界に愛国心と独占という欲望が浸透し、半導体生産で韓国と台湾に押されていた合衆国と日本企業も活発に動く。
設計に注力していた合衆国『Intel(インテル)』などが半導体量産競争に参入し、日本は政府主導で半導体生産施設の再稼働に乗り出した。
このような動きの中で、韓国だけが孤独になるのではないかという不安が生じるのも無理はない。
しかし、独占と排除だけで勝者になるには、現在の半導体のグローバルバリューチェーンはあまりにも大きくて複雑だ。
最近、9,000兆ウォンを超えるお金を集めて半導体産業を再編するというサム・オルトマン『OpenAI』CEOの計画について、『Wall Street Journal』は「中国政府が天文学的なお金を投入しても効果がなかった」とし、「半導体産業の根本的な難題は、技術が非常に難しいということだ」と皮肉を込めて評価した。
半導体は、天文学的な支援でも簡単に真似できない技術とノウハウが無数に隠れている世界だ。
また、分業協力ほど競争も激しい世界だ。
合衆国政府がいくら「チームUSA」を叫んでも、『Intel』と『NVIDIA』が一つのチームになるだろうか?
また、台湾のTSMCが日本に工場を建てると、ファウンドリーの核心ノウハウを日本に提供するだろうか?
メモリー半導体最強の韓国が合衆国の「新しい相殺戦略」の中で生き残る道がここにある。
競争相手が追いつけない「超格差」を維持すると同時に、排除と独占ではなく、包容と協力が半導体競争で勝利する道であることを示すことだ。
「メモリー半導体最強の韓国」が香ばしいですが、排除と独占では駄目で、「抱擁と協力」が勝利の道と主張しています。
しかし、この主張は要するに「韓国を抱擁してくれ、韓国に協力してくれ」です。
なぜなら、日本は合衆国『Intel』と協力して、次世代2ナノ以下の微細行程の半導体製造技術を確立しようとしており、台湾『TSMC』との協力もすでに始まっています。
熊本に完成した『TSMC』第1工場では「12~28ナノ」クラスですが、第2工場ではさらに微細行程を要する「6ナノ」クラスの半導体が製造されることがすでに公表されています。
合衆国-日本-台湾の協力は実際に深化しているのです。
抱擁が何を意味するのかよく分かりませんが、これが「先端技術を韓国にもよこせ」なら全くのお門違いです。別に日本は台湾『TSMC』の技術を剽窃するために協力しているのではありません。対『Intel』にしても、得意なところを出し合ってお互いに新しい技術をものにしよう――と協力しているのです。
つまるところ、半導体戦争において、日本-合衆国-台湾の、いわば「Chip3」の結束・協力に「韓国はいるのか?」が問われているのです。Chip3は韓国を抱擁する必要があるのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)