韓国の文在寅大統領は「韓国は他国から先進国と認められるようになった」と自分の功績を誇っていますが、そんなことはありません。
Money1では何度もご紹介していますが、韓国市場はMSCI指数(MSCI All Country World Index)では先進国に入ってはおりません。
ネット上で「MSCI指数で先進国に分類されてから言え」といった突っ込みがあるのはそのためです。
↑韓国は新興国に分類されています。⇒参照・引用元:『MSCI』公式サイト
「これはなんとかしなければいけない」というわけで、韓国政府は2021年終わり頃から、「MSCI指数でも先進国に分類されるために努力する」とにわかにドタバタし始めました。
「ワシが討って出る!」と洪長官が出馬を表明
企画財政部の洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官は、自分が直々に出て交渉すると述べていました。
「ワシが討って出る」というわけです。
韓国のエライ人はなぜかボス交渉が大好きですが、何度もいいますが、ボスが直々に出たから先進国に区分される――なんてことはないのです。
『MSCI』が提示する条件を満たしているかどうかを調査し、『MSCI』が区分を決めるのです。また、すぐに区分が変わることはありません。観察対象国に指定され、最低でも1年間は経過が調査されます。
実際、韓国も2008年06月に観察対象国になったのですが、結局先進国には区分されず、2014年06月に観察対象国から落ちました。
理由は2009~2013年の間に制度の改善が『MSCI』が求めるものに満たなかったからです。
この過去の例からも分かるとおり、『MSCI』の規準を満たさなければ区分は変更されません。
洪長官が本当に討って出た!
2022年04月22日、洪長官が『MSCI』側と「韓国の先進国編入」について会談を行いました。
本当に討って出たわけです。
以下が企画財政部から出たプレスリリースですが、注目ポイントを和訳します。
洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官は04月22日(金)(現地時間)、アメリカ合衆国・ニューヨークで『MSCI』側*と面談を行い、韓国証券市場のMSCI先進国指数編入に関連して意見を交換しました。
洪副首相は、『MSCI』側に韓国政府が検討中の外国為替市場の先進化案を紹介し、先進国指数編入の妥当性を強調した。
ㅇまず、洪副首相は国内資本市場および金融産業の発展のために韓国政府が強い意志を持って外国為替市場の先進化案を設けており、
– 具体的には、外国金融機関の国内外国為替市場の直接参加許容、開場時間大幅延長、電子取引インフラ構築などを推進する計画であることを説明した。
– また、主要外国金融機関を対象に同方策に対する意見を集約した結果、外国為替市場のアクセシビリティが先進通貨水準に改善され、海外投資家の外国為替取引の便宜が大きく向上するという評価があったことを紹介した。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「洪楠基副首相『MSCI』と会談」
洪長官は、韓国政府が『MSCI』の要求する水準に向けて努力していることを紹介し、ゴリ押しした模様です。
問題は――「韓国内の外国金融機関」を対象に意見を聞いた結果、「先進国の通貨水準」に取り引きの便宜が向上すると言っている――という部分です。
確かにそうなのかもしれませんが、重要なのは『MSCI』がどう評価するのか――なのです。より具体的にいえば「グローバル投資家の実際の体感度」に基づいて評価が行われます。
つまり、韓国市場が『MSCI』の規準を満たした取り引きのしやすさ、先進国市場並のアクセスビリティを保証する改革を行い(市場を開放し)、そこでグローバル投資家が実際に取り引きしてみて、「ああ確かに先進国市場と同等だ」と評価しないことには、先進国市場とは区分されないのです。
だからこそ、観察対象国に指定して、経過を見る――ということを行うわけです。
ですから、「韓国政府は頑張ってます」みたいな話をされても、『MSCI』側からすれば「ああそうですか」としかいえません。
『MSCI』は「まあ頑張ってください」と返答
このプレスリリースによると、『MSCI』側は以下のようにレスを返しています。
(前略)
□『MSCI』側は、韓国政府の外国為替市場の先進化など市場アクセスの向上努力を歓迎し、ㅇ『MSCI』の市場アクセス評価がグローバル投資家の実際の体感度に基づいて行われるだけに、韓国政府が制度改善案をグローバル投資家に透明に公開し、積極的にコミュニケーションする努力が重要だと付け加えた。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「洪楠基副首相『MSCI』と会談」
最初の「歓迎します」はリップサービスです。
まだ韓国政府の努力が韓国市場に実際に反映されているわけではないので(韓国政府の話はこれからこのように努力しますというだけです)。
ですから、『MSCI』もグローバル投資家が納得するようにやってみてください――という回答になっています。
「門前払い」とまではいきませんが、「まあ頑張ってください」という生暖かい反応といえるでしょう。
 
 
ともあれ、「私が直々に交渉する」としていた洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官が公約(?)を守りました。
もう任期が終わるというのに、約束を果たすべく、また大統領の「韓国は先進国なんだ」の方針に従って『MSCI』に正面切ってぶつかった洪長官は立派だといえます。
『MSCI』の反応は生暖かいものだったかもしれませんが、洪長官がぶつかってくれたおかげで次の政権はそのバトンを引き継ぐことが可能です。
「どんなにつらかろうが、とにかくやるべきことはやる」という態度は称賛されるべきで、少なくとも筆者などは決して洪長官を嫌いになることができません。
旗色が悪くなるとスグに誰かの後ろに隠れる文在寅という人物よりはるかに信が置けます。
(吉田ハンチング@dcp)