2023年04月21日、『韓国電力』の鄭升一(チョン・スインイル)社長が異例の「電気料金」についての声明を発表しました。
このような電気料金についての社長による言及は、1982年に会社ができて以来、初めてのことです。
内容としては「『韓国電力』、および発電6社を含むグループ企業10社は、電気料金の調整に先立ち、国民の負担が最小限となるように、20兆ウォン以上の財政健全化計画を迅速に行います」というものでした。
先にご紹介したとおり、『韓国電力』の財務状態は無茶苦茶で、2022年の決算では「営業利益:32兆6,652億ウォン」という史上最大の赤字を記録しました。
もう何度だっていいますが、これは仕入れ価格より売電価格の方が安いという、電気を販売すればするほど赤字という頭の悪い状態を放置した文在寅前大統領のせいです。
しかし、インフレと景気の悪化という状態になっており、政治的には電気料金を上げることができません。国民の不人気を買うこと必至だからです。
そこを、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は2023年第1四半期には「上げなければならない」と断固たる決意を見せていたので、「おっ、やるじゃないか」でした。
ところが! 国会議員総選挙の日程が1年以内に入り、政権の人気が下がってきたものですから、与党圏から横槍が入ったと見えて――日和りました。
この日和った態度によって、『韓国電力』は計算のし直しです。電気料金が上げられるはずだったのに、急遽なしになったので、流動性危機は厳しくなったからです。
で、この発表。
骨身を削って自分たちで最大限努力をします――という発表ですが、ご注目いただきたいのは、「国民の負担が最小限となるように」という点です。
「国民の負担がゼロになるように」ではありません。
つまり、この声明は「私たちも最大努力しますけど、どうか電気料金を上げさせてください」という意味――と解するべきなのです。
しかし、こう言うのは当然で、2022年末時点で『韓国電力』の負債比率は「459.1%」。負債が自己資本の4.591倍あります。
韓国では、1997年のアジア通貨危機(韓国での呼称は「IMF危機」)以来、負債比率が200%を超えると、その企業の財務状況は危ないと見なされます。その意味では、『韓国電力』はいつ飛んでもおかしくありません(もちろん親方太極旗なので飛びませんが)。
また、単純計算でもそれは裏付けられます。
『韓国電力』が電気料金を据え置くと、流動性が約23兆ウォン(正確には22兆7,000億ウォン)足りないと予測されていました(『毎日経済』が証券会社と一緒に計算した結果)。
つまり、『韓国電力』が自前で20兆ウォンなんとかしたとしても、それでも約3兆ウォン足りないのです。
それはどうするのか?
電気料金を上げるしかないでしょう。巨額社債発行でロールオーバーの繰り返し、自転車操業も限界です。というわけで、韓国政府はどこかで電気料金の値上げの決断をしなければならないのです。
不可避ですが、これは政治日程とにらめっこになりそうです。どっかの自民党みたいですね。
(吉田ハンチング@dcp)