子供を育てるには、1人当たり1,000万円かかるなんていわれますが、それは成人するまでにかかるお金を全部合わせたもので、一度にその金額を支出するわけではありません。では、子供ができたと分かったときにいくらぐらいあればいいのでしょうか!?
■妊娠したときには2種類のお金が必要!
妊娠したときに持っておきたいお金の額について、ファイナンシャルプランナーの前野 彩先生に伺いました。
――子供ができた、妊娠したというときに、お金はいくらぐらい持っていたらいいのでしょうか?
前野先生 そうですね。まず、用途別に2種類のお金を考えましょう。
●産むためにいくらかかるか
●産んだ後はいくらかかるか
です。
今回は「産むためにいくらかかるか」にスポットを当てて、ママになる予定の皆さんに具体的なアドバイスをしたいと思います。
■「産むためにいくらかかるか」の検証!
――産むためにいくらかかるかは、いわゆる出産費用ですね。
前野先生 そうなのですが、出産で「払うお金」と「もらえるお金」があります。それぞれについて検証してみましょう。
●払うお金
・妊娠検査薬……約1,000円
・妊婦健診費用……助成がない場合は合計約12万円
・平均出産費用……平均額は、病院約48万円、助産院約45万円
(平成23年国民健康保険中央会調べ)
・マタニティーウエアやベビー用品などの出産準備費用……約10万円
(『たまごクラブ』調べ)
小計:約70万円
*……妊婦健診は、妊娠初期から妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24~35週は2週間に1回、妊娠36週~出産までは週1回の目安で行われます。ですので、1回目が8週目とすると、通常は14回受診することになります。
――けっこうかかるものですね
前野先生 でも、大丈夫! 70万円がないと子供が産めないわけではありません!
国は今、少子化対策に力を入れており、妊娠や出産で受け取れるお金があるのです。「もらえるお金」を検証してみましょう。
●もらえるお金
・妊婦健診……「妊婦健診受診票」の利用により公費負担が約10万円
(詳細は自治体により異なりますので確認してください)
・出産育児一時金……42万円
小計:約52万円
――もらえるお金もあるのですね!
前野先生 はい。ですから、「お金がかかる」と思い込まないで、利用できるお金を最大限にもらうことも考えましょう。
「払うお金」と「もらえるお金」を差し引きすると、出産までに準備しておきたいお金の自己負担はだいたい18万円になります。
■差額の18万円も、一気には必要なし!
――差額が18万円ですから、ぐっと減りましたね!
前野先生 この18万円も一度に準備する必要はありません。
高額なのは、「妊婦健診費用」と「出産費用」ですが、妊婦健診は「妊婦健診受診票」を使うと、毎回の自己負担は1,000円~1万円ほどになります。
また、出産費用の平均額は約48万円ですが、健康保険からお金がもらえる「出産育児一時金の直接支払制度」を申し込むと、出産育児一時金42万円との差額約6万円を払えばいいことになります。
――それは助かりますね。
前野先生 マタニティーウエアやベビー用品なども、少しずつ買いそろえていけばいいので、一度に10万円分を必ず買わなければいけないわけではありません。
――赤ちゃんは大きくなりますから、ベビー用品は譲ってもらうとか、いろいろできそうですよね。
■働く女性に利用を勧めたい制度!
前野先生 さらに、働く女性なら、出産で会社を休んでいる間に利用できる、次のような制度があります。
・働く女性が産前産後に会社を休むなら、健康保険から「出産手当金」……お給料の約3分の2(出産予定日前42日から出産後56日)
・仕事をするママ・パパが育児のために会社を休むなら、雇用保険から「育児休業給付金」……育児休暇開始~180日目は月給の67%/育児休業開始から181日目以降は月給の50%
――働いている女性は助かりますね。
前野先生 さらに、会社や自治体によってはプラスアルファの給付があるところもあります。
・自治体によっては、独自の出産祝い金制度があります。
例えば、
北海道福島町は第1子5万円、第2子20万円、第3子100万円
福島県矢祭町は第1子と第2子は各10万円、第3子は50万円、第4子100万円、第5子以上は150万円、第3子以降はプラス健全育成奨励金の合計50万円
などです。
・企業によっては独自の出産祝い金制度があるところも。
例えば、
ソフトバンクは第1子5万円、第2子は10万円、第3子は100万円、第4子300万円、第5子以上は500万円
アキュラホームは第1子30万円、第2子は50万円、第3子以降は100万円
などです。
・健康保険組合によっては、付加給付として、プラス数万円
(エヌ・ティ・ティ健康保険組合プラス3万円、観光産業健康保険組合プラス7万円など)
――勤務している会社に利用できる制度がないかをよく調べておきましょう、ということですね。
■いざというときのためのお金は持っておく!
前野先生 出産は病気ではないため、健康保険が使えません。その健診費用の負担を和らげるために「妊婦健診受診票」が用意されています。
また、その一方で、重症のつわりの治療や切迫早産、帝王切開などは「医療」に当たるので、健康保険が使えます。その場合は、かかった医療費の3割の自己負担が必要になります。
ただし、その場合も医療費が高額になった場合は、高額療養費という制度の利用により、自己負担は10万円ほどで抑えられます。
――上記のお金で賄えるか、実際と違ってくる場合もあるでしょうね。
前野先生 妊娠が分かったときには、「もしもの入院」や「手術」のことも考えて、30万円は準備しておきたいところです。
もちろん、子供が生まれると、今度は「生まれた後にいくらかかるのか」ということがあり、おむつやミルクなどの養育費はもちろん、教育費もかかります。明るい未来をつかむために、今から少しずつ貯蓄体質を心掛けることがポイントですね。
いかがだったでしょうか。さすがスゴ腕ファイナンシャルプランナーとして有名な前野先生! 非常に具体的なアドバイスだったのではないでしょうか。これからママになる皆さんにはぜひ参考にしていただきたいです。
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(高橋モータース@dcp)