韓国映画は歴史的な事件を題材にとった作品を十八番にしています。
例えば、全斗煥さんによるクーデターを描いた『ソウルの春』は大ヒットしましたが、現在『暗殺者たち(たち)』が大ヒットを記録しています。

これは朴正煕(パク・チョンヒ)夫人(陸英修(ユク・ヨンス)さん)が、在日韓国人・文世光によって狙撃され、死亡した事件を描いたもの。

秋夕を狙って2026年09月23日に公開されましたが、24~27日までの4日間だけで約140万7,000人を動員、この期間の韓国映画・外国映画を含めたボックスオフィスで1位でした。
27日(日)だけでも26万545人を動員しています。秋夕の大ヒット作品となったのです。
※2026年09月27日終了時点の累計は、156万6,220人です。
この作品が韓国内で物議を醸しています。
――というのは、タイトルが『暗殺者(たち)』となっていますが、この「たち」が曲者です。
1974年08月15日に起こった大統領夫人狙撃事件には、真の黒幕がいたのでは――という内容になっているからです。
しかも、あろうことか「朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の自作自演だったのではないか」と、陰謀論のような話を示唆する展開もあります。事件に青瓦台の介入を匂わせているのです。
日本警察は事件についてこのように述べている
日本の警視庁の「昭和50年 警察白書」には、次のように書かれています。
(前略)
大阪府警察は、文世光の行為のうち国内法に触れる部分について独自の捜査を進めてきたが、12月25日文にかかる殺人予備、窃盗(けん銃)、密出入国、旅券不正入手、銃砲不法所持等の犯罪事実をもって大阪地方検察庁に送致するとともに、特別捜査本部を解散した。なお、同特別捜査本部は、関係警察の協力を得て、この間延べ1万1,500人の捜査員を投入して、Fの逮捕、文の自宅等9箇所の捜索、参考人約130人の取調べ、約2万6,400箇所に対する聞込み捜査等を行ったが、なんらかの準備のためと認められる文の都内赤不動病院入院の経緯や、同病院の入院費、渡韓費用等今回の犯行に費消した資金約110万円の出所が今なお解明されていないので、送致後も引き続き捜査を進めている。
なお、韓国側の捜査によると、赤不動病院への入院も犯行に費消した資金も在日朝鮮総聯生野西支部政治部長の指導、援助によるものとしており、文自身も韓国における裁判でこれを認めている。
(ウ)事件の背景等
文世光は、大阪市で生まれ育ち、日本の学校で教育を受けた。
高校時代に民族意識を高め、また、共産主義に興味を持ち、反体制運動に参加したこともあり、犯行当時は専ら反朴運動に従事していた。
韓国捜査当局は、8月17日、事件は北朝鮮及び在日朝鮮総聯の指令、援助によって敢行されたもので、日本人F夫妻及び朝鮮総聯生野西支部政治部長は共犯者である旨発表し、日本政府に対し捜査協力を要請してきた。
この事件に加えて、「北の脅威」に関するいわゆる「木村外相発言」等で韓国に反日ムードが高まり、反日デモが強まって、ついに9月6日在韓国日本大使館乱入、国旗損壊事件の発生をみるに至り、日韓関係は緊張した。
日本政府としては、国内法の許す範囲内で捜査に協力する方針を決めるとともに8月19日田中首相が朴大統領夫人の国民葬に参列し、更に、9月19日椎名特使が訪韓するなど善隣友好関係の維持に努めた。
この結果、反日ムードは急速に鎮静したが、国内では朝鮮総聯に対する法的規制の問題等をめぐって国会で激しい論議が交わされた。
(後略)⇒参照・引用元:『警視庁』「昭和50年 警察白書 第7章 公安の維持」
朝鮮総連が関与していたのではないのか――という件について、少なくとも韓国警察は「あった」と認定しています(ただし日本警察は認定しておりません)。
文世光は「朝鮮総連にだまされた」と後悔
また、犯人の在日韓国人・文世光は、死刑執行(1974年12月20日)の直前に、
「私は馬鹿だった」
「朴大統領と陸夫人に申し訳ない」
「在日同胞として、何一つ国の役に立つことができず申し訳ない」
「私が死刑になるのは当然だ」
「朝鮮総連にだまされた」
「私が韓国で生まれていたなら、彼らにだまされることもなかっただろう」
などの遺言を残した――とされています。
保守寄り人士は「一線を越えた」と猛反発!
文世光の件はともかく、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領について、青瓦台が関与していた可能性を示唆するような展開を盛り込んだために、韓国内では保守派より人士から激しい反発が起こっています。
09月27日に朱晋佑(チュ・ジヌ)議員らが問題提起し、28日には『国民の力』の党執行部、朴槿恵(パク・クネ)元大統領に近い柳榮夏(ユ・ヨンハ)議員、慶尚北道・亀尾選出議員らへ急速に拡大しています。
国民の力の朱晋佑(チュ・ジヌ)議員は、
「映画『暗殺者(たち)』は、陸英修夫人暗殺事件の黒幕が北朝鮮ではなく朴正煕(パク・チョンヒ)大統領であるかのように歪曲した」
――と批判。
「盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の死を権良淑(クォン・ヤンスク)夫人が指示したという映画が作られたら、それも表現の自由なのか」
――と批判しています。
朱晋佑(チュ・ジヌ)議員はさらに、2002年に金正日(キム・ジョンイル)が訪朝した朴槿恵(パク・クネ)さんに「下級者たちが関与したもので、自分は事前には知らなかった」と述べた件を挙げ、「北朝鮮によるテロという歴史的真実を隠蔽した」と主張。
映画について死者名誉毀損罪に該当するとして、関係者の厳正な処罰まで求めています。
『国民の力』の代表である張東赫(チャン・ドンヒョク)さんは、
「陸英修夫人銃撃の黒幕に朴正熙大統領がいるという、実に荒唐無稽なストーリーだという」とした上で、金正日による2002年の発言を指摘(要する北朝鮮が行ったと認めたことになるので)。
「それでも左派はこういう映画を作る。そして『表現の自由』だと言う。表現の自由は左派の専有物なのか」と批判しています。
さらに「盧武鉉(ノ・ムヒョン)を扱えば告訴・告発されるのに、朴正煕(パク・チョンヒ)への侮辱は表現の自由になる」として、歴史表現をめぐる基準が政治的立場によって異なっているのではないか、という問題を提起しています。
――というわけで、『暗殺者(たち)』は左右対立を引き起こしています。そういえば、日本では安倍晋三さんを狙撃した事件を映画化する話が持ち上がっていましたが……。
(吉田ハンチング@dcp)





