韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は年金改革を政権の大きな課題としています。韓国は「低負担・低福祉」の建て付けでここまでやってきたのですが、右肩上がりの経済ではなくなり、人口が急減することが見えています。
「低負担」と「低福祉」を維持することも無理ではないか――というのが見立てです。
少なくとも維持できるシステムに作りかえないとならないと尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は危機感を露わにしています。前文在寅政権が何もせずに次期政権に丸投げしましたので、年金改革は焦眉の急なのです。
2022年06月、上掲の記事でご紹介しましたが、国民年金基金は2055年に枯渇し。2088年には「1京7,000兆ウォン」の赤字となる、と予想されていました。
※念のために付記しますが、枯渇しても年金を給付することは可能です。国がその分を全部負担すればいいのです。
合計特殊出生率※が「0.81」と世界最低で、2022年には「0.7」台に落ちることが確実視されていますので、状況はさらに悪化するのです。
年金の枯渇次期について、韓国政府は「01月中に公表する」としていたのですが、2023年01月27日、韓国政府は「第5次国民年金財政推計結果」を出しました(下掲)。
↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。⇒参照・引用元:『韓国 保健福祉部』公式サイト「国民年金財政推計試算結果発表」
そもそもこの推計は03月に出るはずだったのですが、2カ月繰り上げての公表です。なぜ前倒ししたかというと、それだけ事態が切迫しており、年金改革議論の真っ最中だからです。
今回の「第5次国民年金財政推計結果」によると、
現行の保険料率(月所得の9%)と給与所得代替率(2028年まで40%)が維持されると、
・2041年から保険料収入・基金投資収益などの総収入より支出が大きくなる
つまり、2041年に年金の財政収支が赤字になり、2041年からは積立基金が減り始めます。
――で、2055年には基金が完全に底をつきます。
この結果は先の上掲記事でご紹介した、ユン・ソクミョンさんなど識者の皆さんの予測とほとんど一致しています。ですから、識者の指摘していた危機感が正しいと政府が追認したことになります。
前文在寅政権が2018年に出した推計が、
でしたから、文政権下での(公的な)予測よりも赤字転換の時期が1年、基金枯渇の時期が2年早まったことになります。
ただし、これでも計算はまだ甘いかもしれないのです。
この推算を導いたパラメーターが以下のようなものだからです。
2023年:0.73
2024年:0.70
2030年:0.96
2046年以降:1.21/年
「2023年:1.27」「2040年:1.38」と推算して「なんとかなる」という認識を示した前文在寅政権よりも現実的ではありますが、「2030年:0.96」と反騰し、2046年以降は年平均「1.21」という予測はいかがなものでしょうか。
一応、保健福祉部は反騰の根拠を「新型コロナウイルス感染症の流行で先送りされていた結婚が増え、ベビーブーム世代(1955~1963年生まれ)の子どもである2次エコ世代(1991~1996年生まれ)が30代になって、出産率が小幅に上昇すると展望した」と述べています。
それが当たればいいのですが、外れた場合はこの推算では「甘かった」ということになります。「甘かった」と気付いたときには取り返しがつきません。
もう何度だっていいますが、大逆転の手は一つ。北朝鮮を吸収して一国となり人口を増やすことです。国は貧乏になるかもしれませんが、少なくとも人口急減は凌ぐことができます。
※合計特殊出生率は「女性一人が15歳から49歳までに出産する子供の数の平均」です。この数字が2.2ないと人口は増えないといわれます。
(吉田ハンチング@dcp)