念のために冒頭お断りしておきますが、筆者が言っているのではありません。韓国メディア『朝鮮日報』がインタビューした年金改革研究25年というユン・ソクミョンさんの発言です。
Money1では何度かご紹介していますが、韓国は「低負担・低福祉」の国です。「明日が信じられる」高度成長の時期ならこれでも通用するかもしれませんが、韓国は2020年に人口が自然減少フェーズに入りました。しかも合計特殊出生率※は世界最低の「0.81」です。
年金改革を行わなければ、低福祉も維持できなくなってしまいます。そこで、歴代政権が年金改革に着手しようとしたのですが、行えませんでした。そもそもが保険料率を上げざるを得ず、人気と政権への支持を失うものになるからです。
前文在寅政権も結局、効果的なことは何もしませんでした。
そのため、尹政権における年金改革は待ったなしとなりました。
「どうするんだ」というわけで、『朝鮮日報』が年金改革研究25年のユン・ソクミョンさんに取材した記事を出しているのです。
同紙の記事から一部を以下に引用してみます。まず、ユンさんの危機感についてです。
(前略)
――年金改革がどれほど緊急か。「翼がないので墜落するしかない。
公務員年金と軍人年金引当負債が昨年基準で1,138兆ウォンに達する。
国民年金も時限爆弾だ。
国民年金積立金が928兆ウォン(03月末暫定)を保っているが、2088年までに累積赤字が1京7,000兆ウォンに達するのが国民年金の実状だ。
今、年金制度を維持しようとするなら、国民年金は保険料率を9%から18%以上に、公務員年金は18%から38%に2倍以上引き上げなければならない。
私学年金も改革が緊急だ。先延ばしするほど急速に悪化するにもかかわらず、「心配しすぎだ」「数十年後のこと」という意識が韓国社会を支配している」
(後略)
ユンさんの危機感は相当なものです。
現在の低福祉を維持しようとしても、保険料率を2倍にしないと不可能だというのです。こういう保険の計算というのは実に単純で、高橋洋一先生が指摘していらっしゃるとおりほぼ外れません。
国民年金は2088年には「1京7,000兆ウォン」の赤字に達する――とのこと。これも恐らく正しいでしょう。
ユンさんは、文前政権での年金改革の試みについて以下のように述べています。
(前略)
――文在寅政府の年金改革の試みをどのように評価するか。「文在寅政府の年金改編案は大国民詐欺劇だった。
年金財政評価は70年後の財政状態を見ながら制度改編の議論をしなければならない。
しかるに文政府は、評価期間を40年に減らして改革案とした。
寿命延長を勘案すれば、少なくとも70年以上を推計しなければならないにもかかわらず、単に基金が使い果たされる時期を数年後にしてみせて、国民を欺いたのだ」
文前政権の手口は国民を欺いた一大詐欺劇だったと怒っていらっしゃいます。年金基金が枯渇する時期を数年延ばしただけだ、と。
日本も年金基金についてはいろいろいわれていますが、韓国は日本よりもずっと早く老いていく国です。そのため、年金改革については、本当に焦眉の急で「待ったなし」なのです。
さて、尹政権がどのような施策を打ち出すのかにご注目ください。これは日本にとっても参考になるかもしれません。
※合計特殊出生率は「女性一人が15歳から49歳までに出産する子供の数の平均」です。
(吉田ハンチング@dcp)