韓国の造船業界はビッグ3企業が全部赤字だというのによくもっています。
値段の叩き合いだというのに中国企業と張り合っていられるのは大したもの――という見方もできます。
イギリスの造船・海運市況調査会社『クラークソンリサーチ』によれば、韓国と中国の造船受注チキンレースは継続中で、10月の実績は以下のようになっています。
中国:180万CGT(34隻:シェア53%)
韓国:143万CGT(22隻:シェア42%)
※CGTは「Compensated gross tonnage」の略で「標準貨物船換算トン数」と訳されます。船舶の建造工事量を表す指標です。
2022年度の累計で見ると以下のようになります。
2022年01~10月累計
中国:1,581万CGT(570隻:シェア46%)
韓国:1,465万CGT(261隻:シェア42%)
世界一の座を巡って中国とのチキンレースを戦っているわけですが、月次で見ると韓国は10月に首位の座から転落し、累計ではいまだ中国に届いておりません。
韓国メディア『韓国経済』には、中国に押されたことについて以下のように報じています。
『韓国造船海洋』『サムスン重工業』『大宇造船海洋』など、韓国造船業界が世界船舶受注首位の座を1カ月ぶりに中国に明け渡した。
中国の低価格受注攻勢に押された結果だ。
韓国企業は「造船業界世界最強」の地位を巡って中国と激しい競争を続けている。
(中略)
中国造船業界が自国政府の資金など支援を背景に低価格受注に乗り出し、韓国造船業界を脅かしているという分析が出ている。
(後略)
「中国造船業界が自国政府の資金など支援を背景に低価格受注に乗り出し、韓国造船業界を脅かしている」なんて書いていますが、じゃあ韓国はどうなんだ?という話です。
すでに事実上破綻していた『大宇造船海洋』に国策銀行の資金を入れて延命させ、安値受注を繰り返した挙げ句にいまだ赤字という事態となっていますが――これを国の補助金によるものといわずしてなんというのでしょうか。
韓国に中国の行っていることを非難などできません。似たりよったりなのです。
両国ともWTOに加盟しているのですから呆れる他ありませんが、中国・韓国の造船産業におけるどつき合いは、結局「国によるドーピング競争」みたいなものです。
ですから韓国はよく戦っているともいえます。図体がでかく、いざとなれば韓国よりもずっと大きな金額を投入できるだろう中国を相手に回し、善戦(?)しているのですから。
「それは、血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ」に等しく、褒められたものではありませんが。
(吉田ハンチング@dcp)