韓国メディアに「적취율(積取率)」に注目した興味深い記事が出ています。
積取率というのは、貨物全体に占める国内船社(韓国籍の船舶)が輸送した貨物量の割合のことです。概念でいえば「cargo share of national fleet」あるいは「national carrier transport share」に近いものです。
例えば、
LNG輸入:8,685万9,000トン
韓国籍の船での輸送:2,995万4,000トン
――であれば、2,995/8,685 = 約34.5%になるわです。
『ソウル経済』の記事はこのままいくと、エネルギー輸送において自国籍の船舶はゼロになってしまうぞ、と警告しています。同記事から注目箇所を以下に引用してみます。
(前略)
政府が原油や液化天然ガス(LNG)など核心エネルギーの積取率(国内船舶による輸送比率)引き上げを推進し始めた。背景には、エネルギー物流こそ国家安全保障であるという切迫した危機感がある。
ロシア・ウクライナ戦争に続き、アメリカ合衆国・イラン間の戦争まで長期化の兆しを見せる状況で、エネルギー問題をこれ以上民間の自律だけに任せることができなくなったという意味だ。
国内海運業界のある高位関係者は10日、「新型コロナ当時、海運船社が韓国をパッシングした際、国籍船社が輸出の息の根をつないでくれたことで危機を克服することができた」とし、「世界的に地政学的緊張が高まっているだけに、さらに強力な国内船社支援対策が必要だ」と強調した。
実際、韓国の核心エネルギーの積取率は毎年下降傾向を示している。
2024年基準でLNG積取率は34.5%で、前年(38.2%)に比べ3.7ポイント減少した。
総輸入量8,685万9,000トンのうち、国籍船社によって運ばれた物量は2,995万4,000トンに過ぎなかった。
LNG積取率は2020年に52.8%を記録した後、継続して下落している。
民間が輸入を主導する原油も、輸入の半分以上を外国船社に依存していることが分かった。
原油積取率は2020年以降上下しながら推移したが、2024年には前年(50.1%)より1.2ポイント下がった48.9%を記録した。
総1億4,427万4,000トンの輸入量のうち、7,065万2,000トンのみを国内船舶が輸送したのである。
イラン戦争勃発以降、現在中東産原油を積んで韓国に向かう予定の船舶11隻のうち、韓国籍の船舶は2隻にすぎない。
(後略)
Money1でもご紹介しましたが、コロナ禍のさなか海運が逼迫して運賃が高騰。高いところに船舶が集中して韓国がパッシングされる(船舶がよりつかない)という事態に陥ったことがあります。
そこでいわれたのは「韓国籍の自国の船舶を増やせ」という話でした。
イスラエル+合衆国 vs イランの戦争が発生し、エネルギー輸送が梗塞されている現状で、またぞろ「韓国籍の自国の船舶を増やせ」という主張が出てきたわけです。
ところが――です。現状を調べてみるとエネルギー輸送に従事している韓国籍は、特にLNGで減少していることが分かりました。以下をご覧ください。

2020年には50%を超えていたのですが、2024年には全輸送量のうち韓国籍の船舶のシェアは34.5%まで低下しています。
なぜこんなことになったのかというと、契約の形態が変化したためです。
FOB契約(Free On Board)からDES契約(Delivered Ex Ship)が多くなったのです。
FOBというのは「買い主が船を手配する契約」です。LNG売り手(カタールなど)が港で積み込み、そこから先の輸送は買い主が手配します。
つまり、韓国の場合『韓国ガス公社』が船を手配しますので、韓国船社・韓国LNG船を使うことができます。その結果、積取率が高くなるわけです。
一方のDESの場合は、売り主が輸送する契約です。
売り手が船を用意し、買い主の港まで輸送。港で引き渡します。つまり、韓国は船に関与しません。ですから、船はカタール船、欧州船、ギリシャ船、日本船などの外国船が使われることが多くなります。
結果、韓国籍の船舶が使われないことになり、積取率が下がるのです。
なぜDES契約が増えたのかというと、理由は簡単でDESの方が安いからです。
売り手(大手LNG会社)は大量のLNG船を保有し、船隊を効率運用できます。そのため輸送費は、FOBよりもDESの方が安くなることが多いのです。
で、安いならDESにしよう――となるわけです。買い主の『韓国ガス公社』もそれを良しとしてきたのですが、結果韓国籍の船舶のシェアが下がり続けています。
さらに問題なのは長期契約です。この『ソウル経済』記事によると、『韓国ガス公社』がFOB契約で使う船は、
2024年:13隻
2029年:4隻
2037年:0隻
――となります。で、記事の嘆きに戻ります。
「0隻って大丈夫なん?」「また韓国パッシング(素通り)?」というわけです。
何より、この数字は安全保障に直結しています。なぜならLNG輸送が全部外国船に依存することになるからです。
海運契約には「戦争条項」があります。戦争地域の場合、船社は輸送拒否できます。いざというときにLNGが来ません――があり得ます。
これは海運政策としてはかなり深刻な話ですよ。
(吉田ハンチング@dcp)





