日本の岸田文雄首相が韓国を訪問し、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領と会談を行いました。
非常に興味深いことに、「少人数による協議」、「拡大会談」と2つのレベルでの会議が行われました。
↑「少人数協議」で公表された写真/出典:『第20代大統領室』(以下同)
↑「拡大会談」で公表された写真
「シャトル外交の復活だ」として日韓関係が正常化の軌道に乗った――と日本メディアは報じています。尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が記者会見で何を述べたのかを見てみましょう。
以下が第20代大統領室が出した全文です。
日韓首脳共同記者会見文
岸田総理の訪韓を心から歓迎します。
去る03月、東京で私と岸田総理は 日韓首脳間のシャトル外交の再開に合意しました。
それから2カ月も経たない今日、岸田総理は 日本首相の二国間訪問としては12年ぶりに韓国を訪問しました。
今回の訪韓を通じ、首脳間のシャトル外交が 本格化したことを意義深く思います。
今日の首脳会談で私と岸田総理は、普遍的な価値を共有する日韓両国が 安全保障、経済、グローバルアジェンダに対応する過程において 緊密に協力していかなければならないということで改めて一致しました。
私たち両首脳は、日韓関係の改善が 両国国民に大きな利益になることを確認し、今後もより高い次元で両国関係を 発展させていくことに合意しました。
岸田総理はまず私に 去る04月24日にスーダンから日本人が撤退する過程において 我が国側が提供した協力に感謝の意を表されました。
撤退の過程で行われた両国の協力は、変化した日韓関係を示す象徴的な場面でした。
私たち両首脳は、03月の首脳会談で合意された外交安全保障当局間の安全保障対話とNSC間の経済安全保障対話、そして財務長官会議など、安全保障、経済分野の協力体が本格的に稼働していることを歓迎しました。
また、両国の代表的な非友好的措置であったいわゆるホワイトリストの原状回復のための手続きが順調に行われ、着実に履行されていることを確認しました。
去る03月の私の訪日を機に、全経連と経団連が設立することに合意した「日韓未来パートナーシップ基金」が正式発足を控え、最後の準備を進めている状況です。
私たち二人は、日韓未来世代の交流拡大のために 多くの関心を払い、必要な仕事を続けていきます。
私と岸田総理は、日韓両国の人的交流の規模が 今年に入って3カ月で200万人に近づくほど急速に回復していることを歓迎しました。
両国国民がお互いの理解を深め、友好と信頼を築くためには未来世代の交流が重要であるという認識を共有しました。
民間レベルでの交流協力に加え、両国政府レベルにおいても 青年を中心とした未来世代の交流を拡大するため、具体的な方策を協議することにしました。
私と岸田総理は 日韓両国間の人的交流が大幅に増加する傾向を踏まえ、 首都圏だけでなく、地方間の航空路線もコロナ禍以前の水準に回復するよう努力していくことにしました。
経済協力について、私と岸田総理は、韓国の半導体メーカーと日本の優秀な素材・部品・装備部門の企業が共に強固な半導体サプライチェーンを構築できるよう、この分野での協力を強化しようということで意見が一致しました。
一方、本日の会談では、宇宙、量子、AI、デジタルバイオ、未来素材など、先端科学技術分野に対する共同研究とR&D協力推進についての議論が行われました。
私と岸田総理は、北朝鮮の核とミサイル開発が韓半島と日本はもちろん、世界の平和と安定に重大な脅威であるという認識を共有しました。
これに対応するため、日米韓の協力が緊要な状況で、間もなく開催されるG7首脳会議を機に3カ国首脳会談など、日米韓3カ国首脳間の緊密なコミュニケーションと協議が非常に重要であるとの認識を共有しました。
また、昨年11月のプノンペンにおいて日米韓3国首脳会談で合意された、北朝鮮のミサイル警報情報のリアルタイム共有に関連し、その実現方策について当局間での議論が進んでいることを歓迎し、今後も日米韓3国間の安全保障協力を継続していくことにしました。
両国が共に共有する自由、人権、法治という普遍的な価値を守るために、引き続き共に努力していくことにも合意しました。
私たちは、インド太平洋地域の戦略的重要性に共感し、韓国の「自由、平和、繁栄のインド太平洋戦略」と日本の「自由で開かれたインド太平洋」の推進過程で緊密に協力し、交流していくことにしました。
両首脳は今回の会談で 福島汚染水(原文ママ:引用者注)に関連して、韓国の専門家による現地視察団の派遣に合意しました。
科学に基づいた客観的な検証が行われるべきであるという韓国国民の要求を考慮した有意義な措置が行われることを願っています。
岸田総理は今年、広島G7サミットの議長として私を招待してくださいました。
今回のG7首脳会談を機に、日韓両国が保健、グローバルサプライチェーン、気候変動など、グローバルな課題に対する協力をより具体化していくことができることを願っています。
また、私の広島訪問を機に、私たち二人の首脳は、広島平和公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑を一緒に参拝することにしました。
今回の岸田総理の訪韓を通じて 首脳間のシャトル外交の復活、そして両国関係の正常化が軌道に乗ったと思います。
私は、岸田総理との友情と信頼を基に新たな未来に向けてさらに深化した両国間の協力を推進していきます。
そのために、今後も私たち両首脳は形式にとらわれることなく、引き続き緊密に意思疎通し、協力していきます。
ありがとうございました。
⇒参照・引用元:『韓国 第20代大統領室』公式サイト「日韓首脳は形式にこだわらず緊密にコミュニケーションして協力していく」
気になるのは「宇宙、量子、AI、デジタルバイオ、未来素材など、先端科学技術分野に対する共同研究とR&D協力推進」です。これが日本から韓国への技術供与を意味するなら、いつか来た道です。
また、福島処理水の海洋放出について、韓国の視察団を受け入れるというのは大きな後退です。
反日、また政治的な背景から「科学的な事実」を認めることができないのが韓国という国です。日本は国際機関『IAEA』の理解だけ取り付けて進めばよかったものを、「日本に難癖しかつけない国」の視察団を受け入れることになりました。
この視察団が科学的な根拠に基づいて意見を表明するのかは見ものになるでしょう。
「岸田首相が謝罪するかどうか」が韓国メディアから注目されていましたが、岸田さんは以下のように述べています。日本国 首相官邸の公開文から引用します。
(前略)
そして、3月に、尹大統領が訪日された際、私は、1998年10月に発表された、日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいると明確に申し上げました。この政府の立場は今後も揺るぎません。
尹大統領の御決断により、3月6日に発表された措置に関する韓国政府による取組が進む中で、多くの方々が過去のつらい記憶を忘れずとも、未来のために心を開いてくださったことに胸を打たれました。
私自身、当時、厳しい環境のもとで多数の方々が大変苦しい、そして悲しい思いをされたことに心が痛む思いです。
日韓間には様々な歴史や経緯がありますが、困難な時期を乗り越えてきた先人たちの努力を引き継ぎ、未来に向けて尹大統領を始め、韓国側と協力していくことが、日本の総理としての私の責務であると考えております。
(後略)⇒参照・引用元:『日本国 首相官邸』公式サイト「日韓共同記者会見」
結局、岸田首相は「新たな謝罪」はしませんでした。
歴代内閣の認識を引き継ぐと述べ、個人的に「心が痛む思い」と心情を吐露したにとどめています。うまくガラをかわしたといえるでしょう。
もっとも韓国の左派・進歩系は「謝罪しなかった」と言い募るかもしれませんが。
(吉田ハンチング@dcp)