市場はあらゆる情報を織り込んで動いています。しかしその動きは全ての面において合理的ではありません。中には「割安な株」があり、これをいち早く見つけて購入し、上がったところで売れば儲かりますね。割安株を見つけるためにさまざまな指標(INDEX)が考えられています。「乖離(かいり)率」(移動平均乖離率)はそのINDEXのひとつです。
「乖離(かいり)」は「離れていること」「ズレ」という意味ですね。つまり乖離率は、「ズレの度合い」「どのくらい離れているかの割合」です。
ではナニからズレているかというと「移動平均」からのズレです。乖離率(移動平均乖離率)は移動平均からのどのくらい離れているか、その割合を示す指標です。
分からない方は少し我慢してください。そもそも移動平均が何なのかを知らないと分からなくて当然です。でも大丈夫! すぐに分かるようになります!
まず「移動平均」について知っておきましょう。
■「移動平均線」を見るとその株の価格変動が分かりやすい!
例えば、世界的に有名なゲーム会社『満天堂』の株価(この場合は終値です)が次のようになっていたとしましょう。
11月28日(月):25,000円
11月29日(火):27,000円
11月30日(水):30,000円
12月01日(木):32,000円
12月02日(金):24,000円
12月05日(月):27,000円
12月06日(火):26,000円
12月07日(水):31,000円
12月08日(木):32,000円
12月09日(金):29,000円
※土日は株式市場が休みなので価格はありません。
11月28日(月)-12月02日(金)の5日(営業日)間の平均株価は「27,600円」です。
これが「5日(営業日)」分の「移動平均(価格)」です。
さらに、これを1日ずらして、
11月29日(火)-12月05日(月)の「5日(営業日)」分の平均株価を計算すると
「28,000円」になります。
同様に続けると
11月28日(月)-12月02日(金):27,600円
11月29日(火)-12月05日(月):28,000円
11月30日(水)-12月06日(火):27,800円
12月01日(木)-12月07日(水):28,000円
12月02日(金)-12月08日(木):28,000円
12月05日(月)-12月09日(金):29,000円
という「5日(営業日)」分の終値の平均株価・移動平均(価格)がそれぞれ計算できます。
これをつないだものが「5日(営業日)」分の「移動平均線」です。
これは「5日」分の移動平均ですが、期間を長く取ることができます。何日分の株価を平均するかで「移動平均」には種類があります。
5日
25日
75日
13週
26週
52週
などです。他に「10日」「200日」など、例えばチャート表示ツールを提供する証券会社によって提供される移動平均線が違ったりしますが、いずれも計算手法は上記と同じで、基本的には対象となる期間が長いか短いかの違いだけです。
移動平均線をチャート上に表示するとその銘柄の平均株価がどのように変動してきたのかが分かり、過去の株価の変動と比べやすくなります。
実際の株価のチャート(任天堂:Yahoo!ファイナンスより引用)を例に挙げますと下のようになります。これは「25日・平均移動線」です。直近25日の株価と比べて株価が高いのか低いのか一目で分かりますね。
■「乖離率」は移動平均線との差に注目する!
さて「乖離率」です。
例えば、以下のチャートを見てください。これは『串カツ田中』(3547)の2016年12月10日のチャートです。
このように実際の株価が25日移動平均線から上にずれたり、下にずれて値動きしているところがあります。上ずれしている部分は「買われぎ = 株価は高い」ところですが、大きくズレていた価格もやがて移動平均線にくことが確認でき、この直近では移動平均線から大きく下ズレしていることが分かります。つまり直近では「売られすぎ = 株価は低い」のです。
このように移動平均からのズレ、つまり乖離は、
「買われすぎ = 株価は高い」
「売られすぎ = 株価は低い」
と判断でき、
「買われすぎ = 株価は高い」 ⇒ 「持っている株を売る」
「売られすぎ = 株価は低い」 ⇒ 「割安だから買う」
と行動を起こすための指標になるわけです。
乖離率は、株価が移動平均から「どのくらいズレているか」すなわち「どのくらい乖離しているか」を表します。計算式は、
乖離率(パーセント) = (株価 - 移動平均) ÷ 移動平均 × 100
です。式から分かるとおり、株価が移動平均(株価)より大きくなる(つまり上ズレしている)と、値は「プラス」に、株価が移動平均(株価)より小さくなると(つまり下ズレしている)と、値は「マイナス」になります。
株価 = 移動平均
であれば値は「0」になりますので、真ん中を「0」として「乖離率プラス○%」の株式と、「乖離率マイナス○%」の株式があるわけです。実際のチャートでは下のような表示がされます。
見方は下のようになります。
この『串カツ田中』ですが、直近では乖離率は「-20%」近くとなっています。乖離率からは「売られすぎ」と見ることができます。
■乖離率は便利で役に立つがこれだけに頼らない!
長い説明となってしまいましたがいかがだったでしょうか。乖離率は有益で便利なINDEXですが、これだけで「売り」「買い」を判断するのは危険です。ひとつひとつのINDEXはあくまでも「目安」となってくれるに過ぎません。ですから、INDEXは複数組み合わせて使うのが基本です。この乖離率も他のINDEXと併せて使いしょう。
(高橋モータース@dcp)