株式の売買でもうける方法の基本は「安く買って高く売る」ですが、そのためには割安株を見分けられなければなりません。株式銘柄のスクリーニング(ふるいに掛けるという意味です)用にいろいろな指標(INDEX)Iがあります。今回はそのINDEXのひとつ「PBR」についてです。
PBRは「Price Book-Value Ratio」の略で「株価純資産倍率」と訳されます。
計算式は、
PBR(株価純資産倍率) = 株価 ÷ 1株当たり純資産
になります。※1
これを理解するには貸借対照表を理解する力がちょっとばかり必要です。その会社の発行した株式を持っている人は、その会社の持ち主でもあります。「会社は株主のものである」といわれたりしますが、それはその会社が発行した株式を購入し、会社に資金を提供しているからですね。
さて、仮に会社が解散することになったら、株主は残された会社の資産を持っている株式の数量に応じて分配してもらう権利があります。普通、この分配の対象となるのは「純資産」というものです。純資産は「自己資本」と呼ばれたりします。これは返済する必要のない安定した資金で、ですから解散なんてことになったら、これが分配対象になるわけです。
株主はその純資産について権利があるわけですから、1株当たり純資産がいくらであるかを計算してみるのです。
例えば「満天堂」という世界的に有名なゲーム会社があって、貸借対照表によると純資産が「1兆円」、満天堂の発行済株式数が「1億5,000万株」だったとします。
●満天堂株式会社
純資産:1,000億円
発行済株式総数:1億5,000万株
1株当たりの純資産 = 1兆円 ÷ 1億5,000万株
で「6,667円」となります。
この1株当たり純資産と実際の株価を比較するのです。
企業というのは、資本を元に製品を作るなどして新たな価値を作り出し、それが利益を生むわけです。その利益によって会社が評価され、株価が決まるわけです。つまり、資本を元手にどのくらいに膨らませているかを、1株当たりを目安に計算するのです。
例えば満天堂の株価が「2万9,000円」だったとすると、
2万9,000円(株価) ÷ 6,667円(1株当たりの純資産) = 4.35
となります。つまり満天堂の株価は1株当たりの純資産の4.35倍の価格となっているわけです。これが「PBR」(株価純資産倍率)です。
PBRの値が小さいほどその会社の株式は割安と考えることができます。なぜなら、資本をできるだけ活用し利益を生むのが企業ですから、その倍率が低いということは企業活動が株価に反映されていないと見ることができるからです。
このPBRはその会社の株式を購入するリスクについて教えてくれる指標でもあります。例えばあなたが満天堂の株式を1株購入しましたが、満天堂が急に会社を解散する事態になったとしましょう。
その場合、あなたの1株は上記で見たように本来「6,667円」です。会社が解散したら戻ってくるお金は「6,667円」と考えられます(実際はもっと下がります※2:後述)。ですが、あなたは「2万9000円」でこれを購入しました。つまり、あなたの「2万9,000円」は「1/4.35」になってしまったわけです。
このようにPBRは企業の純資産に注目し、株価の割安度を測る共にリスクについても示してくれるINDEXなのです。
※1この場合の純資産は貸借対照表の「純資産の部」の金額から「少数株主持分および新株予約権等」を除いた金額です。つまり「自己資本」を意味しています。
※2実際に会社が破綻などして解散といった事態になると純資産の部も「安定」ではありません。ですので純資産を元に1株当たりの純資産を計算しても、その金額が「安定」とはいえないのです。
(高橋モータース@dcp)