【IMFは警告する】強まる下方リスクが重い! 韓国の経済成長は1%も下方修正された

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2025年04月22日、『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)が「World Economic Outlook, April 2025」を公開しました。

アメリカ合衆国と中国の貿易戦争が激しくなり、その最中ですから、今回の『IMF』のリポートは非常に興味深い内容となっっています。もちろん『IMF』は、連銀の支店と揶揄される存在ですので、いかなる意味においても中国側ではありません。

以下が今回のエクゼクティブサマリーです。長くて恐縮ですが、一応全文和訳を以下に引きます。

EXECUTIVE SUMMARY(エグゼクティブ・サマリー)
前例のない一連の衝撃が過去数年にわたり世界経済を襲った後、2024年の世界成長は安定していたが、期待外れの水準にとどまり、2025年01月の『世界経済見通し(WEO)アップデート』でもこの傾向が継続する見込みであるとされていた。

しかし、情勢は変化した。

各国政府が政策の優先順位を見直す中で、アメリカ合衆国による新たな関税措置と、それに対抗する貿易相手国の報復措置が発表・施行され、04月02日には事実上の「全輸入品対象」米国関税が導入された。

これにより、実質的な合衆国の関税率は、過去100年で見たことのない水準にまで引き上げられた(図 ES.1 参照)。

この動き自体が経済成長に対する大きなネガティブ・ショックであり、かつ、これらの措置が予測困難な形で展開されていることが、経済活動や見通しにマイナスの影響を及ぼしている。

こうした不確実性により、一貫性とタイムリーさを保った経済予測の前提を立てることが例年以上に困難となっている。

現在の見通しに基づく「参考予測(reference forecast)」
このレポートでは、2025年04月04日までに得られた情報(04月02日の関税措置および初期反応を含む)に基づく「参考予測」を提示しており、通常のベースライン予測に代わるものとして採用されている。

これに加えて、さまざまな貿易政策シナリオに基づく補足的な予測も併記されている。

貿易緊張の激化と政策不確実性が世界成長を下押し

急速に高まる貿易緊張と極めて高い政策不確実性は、世界経済活動に大きな悪影響を与えると見込まれている。この参考予測によれば:

世界成長率は、2025年に2.8%2026年には3.0%へと減速すると予測されており、

これは01月のWEOアップデートでの 3.3%(両年)から引き下げられたものである。

結果として、累積の下方修正幅は0.8ポイントに達し、過去の平均(2000~2019年の平均3.7%)を大きく下回る水準となっている。

ここまでで、「過去100年で見たことのない水準」の高い関税率が合衆国によって導入され、これが世界経済の大きな下押し圧力として機能している――と指摘。

2025年と2026年のGDP成長率は01月の予測から大きく下方修正されました。

『IMF』は、韓国の2025年のGDP成長率を、01月時の「2.0%」予測から、「1.0%」まで大幅下方修正しました。

実に1.0%の下げです。

先にご紹介したとおり、『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「輸出中心の構造を持つわが国経済は、外部環境の変化に特に脆弱だ」と指摘しています。

合衆国と中国が戦っているのは、まさにこの「輸出を巡る攻防」ですので、脆弱な韓国が経済的に揺れないわけがないのです。

景気減速し、債務危機を抱える国々には特に影響が大きい

以下に『IMF』のエクゼクティブサマリーの続きを引きます。

参考予測によれば、先進国の経済成長率は、2025年に1.4%に減速すると予測されている。

合衆国の成長率は1.8%に鈍化すると見込まれており、これは2025年01月時点のWEOアップデートの予測値より0.9ポイント低い。

これは、政策の不確実性の増大、貿易摩擦の激化、需要の勢いの鈍化によるものである。

ユーロ圏では0.8%の成長が予測されているが、これも0.2ポイントの下方修正である。

新興国および途上国では、2025年に3.7%、2026年に3.9%へと減速が見込まれており、特に最近の貿易措置によって大きな影響を受けた国々(例:中国)が深刻である

インフレとリスク
世界全体のインフレ率は、2025年に4.3%、2026年に3.6%と、01月の予想よりもややゆるやかな低下ペースになると予測されている。

●先進国はやや上方修正
●新興国・途上国はやや下方修正

下方リスクが支配的
見通しには、以下のような強まる下方リスクが重くのしかかっている:

●貿易戦争の激化
●貿易政策の不確実性
●政策余地の縮小による将来ショックへの耐性低下

急速に変わる政策方針や市場心理の悪化は、資産価格の再調整を招き、為替や資本の流れを混乱させ、債務危機を抱える国々には特に影響が大きい。

●合衆国の04月02日の大規模関税発表後、さらに市場が混乱する可能性がある

●国際金融システムへの損害、国際的な金融不安にもつながる恐れ

●人口構造の変化と外国人労働力の減少は、成長率と財政持続性を脅かす

社会不安と低所得国への影響
●生活費危機の影響が残存

●成長見通しが暗い中で社会不安の再燃の可能性

●限られた国際的支援は低所得国への圧力を増大させ、財政赤字か借金の拡大を迫る

前向きな材料も存在
現在の関税措置が緩和され、新たな協定により貿易政策の明確性と安定性が確保されれば、世界経済の成長が押し上げられる可能性もある。

今後の道筋:協調と明確性が鍵
各国は以下のような取り組みを通じて、安定した貿易環境と内外の均衡回復を目指すべきと強調する。

●安定的かつ予測可能な貿易ルールの構築
●国内の財政・構造的問題の是正
●インフレと成長のトレードオフの調整
●財政バッファの再構築
●中期的成長の活性化

中央銀行には、インフレと金融安定のバランスをとるために柔軟な政策対応と明確なコミュニケーションを求められる。為替の急変に対しては、IMFの「統合政策枠組み(IPF)」に基づくターゲット介入が有効とされる。

財政政策と構造改革の必要性
●中期的な財政健全化計画の信頼性
●労働市場・年金改革
●各国の人口構造に応じた対策
●移民政策の受け入れ先の変化による影響にも注意が必要

はっきり成長が大きく鈍化すると書いていますし、「債務危機を抱える国々には特に影響が大きい」としています。

そのような国が本当に飛びそうになったら、支援に駆り出されるのは、それこそリポートを書いている『IMF』なのですが……さあ、やる気はあるのでしょうか。

(吉田ハンチング@dcp)

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