毎年のようにひどい水害が発生し、雨季になると都市部が水没する映像がネットに上がる中国。その一方で、土壌から水分がなくなり「干上がる」という被害も頻発しています。干魃(かんばつ)です。
とにかく国土が広いので、あっちで水害だが、こっちでは干魃なんてことが起こり得るのです。
以下は中央気象台が出した、2025年04月22日08時時点での「10厘米土壤相对湿度」のマップです。
日本ではあまり見掛けない天気予報図ですが、中国では「10センチメートル深の土壌における水分状況」というステータスが公表されているのです。
赤色:深刻な土壌水分不足
黄色:軽度の土壌水分不足
緑色:適正な土壌水分
青色:過剰な水分
灰色:資料が存在しない地域
という凡例になっていますが、このマップを見ると、土壌に水分が枯れているエリア、早い話が干魃状況となっているところが分かるわけです。
「赤色」で(深刻な土壌水分不足)となっているエリアは――、
●四川省中部~西部(特に成都周辺や雅安)
四川盆地西縁、明らかに広い赤ゾーン。
農業と茶葉栽培が盛んな地域。
●陝西省中部~南部
西安の南部一帯や漢中地域。
小麦の栽培地帯として影響大。
●湖北省北西部(襄陽など)
●広西チワン族自治区北部
柳州、来賓などに赤いゾーンが点在。
●河南省中部
鄭州南方や開封周辺に赤いゾーン。
小麦主産地であり、干魃の影響が懸念される。
●内モンゴル自治区東部
赤いゾーンが帯状に分布。草原農業地帯。
――で、小麦などの穀物の生産地が干魃に遭っていることが分かります。軽度の水分不足となっている黄色のエリアは省きますが、こちらも要注意で危ないのです。
そもそも降雨量が少ない! 例年の7割減!
『CCTV』の報道でば、04月21日09:00時点の統計で、広西チワン族自治区の南寧、柳州、桂林、梧州、防城港、欽州、貴港、賀州、河池、来賓、崇左など11市52県で干ばつ災害が発生しています。
累計で40.5万人が被災、干ばつによる飲料水の入手が困難で救援が必要な人口は累計8.3万人に達している――とのこと。
農作物の被災面積は5万1,300ヘクタールで、直接的な経済損失は2億1千万元。広西水利庁は、04月19日18時に干ばつ災害への対応として、3級の緊急対応を発動しました。
また、広西防汛抗旱指揮部からの情報によると、現在広西チワン族自治区は干ばつが深刻化の一途を辿っています。
17日時点での観測によると、同自治区で干ばつ被害となっている面積は97.5%に達し(ほとんど全域なわけです)、このうち「極度の干ばつ面積」は68.7%に上ります。
※広西チワン族自治区は「極度干魃しなさーい」になっているわけです。
この干魃の原因は、極端に降雨量が少ないためです。
↑貯水池が次々と干上がっていっています。
広西気象局の統計では、2024年11月以降、広西チワン自治区の平均降水量は「110.0ミリ」しかありません。同時期に比べ約70%も少ない――とのこと。ちなみに1961年以降で同時期としては最小です。
作物の栽培がうまくいっていない――という話が動画となって、あちこちから上がっています。
↑湖北省襄陽市棗陽市太平鎮の小麦が干ばつで枯死し、全滅しました!――という動画。
↑陝西省では深刻な干ばつが発生し、小麦はほぼ全滅状態です――という動画。
ネット上にはさまざまな声が上がっているのですが、現地広西チワン自治区に住んでいるという方からは――、
「(前略)消防が水を村に運んでくれているけど、水がなくなり、給水が足りない。サトウキビももうすぐ枯れそう。都市の道端の緑地の木々の葉も枯れ始め、山の木も枯れてる!」
「天気予報も全然当たらない。清明節からずっと雨の予報だったのに、毎日猛暑が続いてる(後略)」
――という投稿がありました。
夏の水害の前に干魃です。作物がうまく収穫できなければ、食糧危機だってあるかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)