おススメ記事

中国財政部長官が「中国の財政は大丈夫!」

広告

2024年10月12日、中国の国務院新聞弁公室は「財政政策のカウンターシクリカル調整の強化と質の高い経済発展の促進」についての記者会見を開催。

財政部の藍佛安部長(長官:財務大臣に相当/Chinese Ministry of Finance)が「何をするのか」の説明を行いました。

要点は以下です。

●さらなる財政支出の拡大
景気を回復させるために「お金をもっとまく」という宣言です。赤字予算の赤字幅を拡大し(1,800億元拡大して4兆600億元とする)、超長期債(1兆元)、特別債の発行などの手段を用いて資金を調達してまきます。

●地方財政の支援
地方債の管理強化や、移転支払(地方交付税みたいなもの)を通じて地方財政の支援を行う。税収の地方政府への付け替えです。

●民生の改善を行う
教育、医療、年金など、国民生活に密接に関わる分野への財政支出を拡大し、国民の生活水準の向上を図るとしました。基本的な公共サービスや社会保障への支援を強化する方針が打ち出しました。

●リスク管理の強化
地方政府の債務問題や経済の不確実性に対処するため、積極的なリスク管理を行うことが強調されました。特に、地方政府の債務リスクを緩和し、財政健全性を確保するための措置を推進するとのこと。

要は、財政を破綻させないでお金をまいて景気を回復するぞ――というお題目です。

問題は――中国の場合はお金をまいてもまいてもさっぱり効かない――という点です。

一応、以下に説明を全訳しますが、藍佛安財政部部長は「中国は大丈夫だ! 十分に弾力性がある」と述べています。

まさに「財務相、必死だな」の構図です。こういうことを言えば言うほどに聞く者は不安にならないでしょうか。

10月12日午前、国務院新聞弁公室は記者会見を開き、財政部の責任者が状況を紹介した。

財政部長の藍佛安は、中国の財政は十分な弾力性があり、総合的な措置を講じることによって、収入と支出のバランスを達成し、年間予算目標を達成できると述べた。

藍佛安は、今年に入ってから、財政部門は中央経済工作会議の要求を忠実に実行し、積極的な財政政策を堅持し、適切な増加、改善、効率化を図り、赤字、特別債券、超長期特別国債、減税・免税、財政補助金などの政策手段を組み合わせ、財政政策の力を高め、重点分野の保護を強化し、リスクの積極的な予防と緩和を行い、持続的な経済回復を促進してきたと説明した。

これは主に以下の6つの側面を含む。

第1に、財政支出の規模を拡大する。
2024年には、財政赤字を4兆600億元とし、前年度当初予算より1,800億元増やす。

地方政府の新たな特別債務上限額を3兆9,000億元とし、前年度より1,000億元増やす。

超長期特別国債を1兆元発行し、2023年の国債追加発行による資金を適切に活用する。

一般公共予算の年間支出規模は28兆5,500億元に達し、比較的高い支出強度を維持し、高品質な発展に強力な支援を提供する。

第2に、税制および料金の優遇政策を最適化する。

構造的な税制および料金の引き下げ政策を実施し、研究開発費に対する税引き前追加控除、先進製造企業に対する付加価値税の追加相殺、科学技術成果の転換に対する減税および免税などの政策を引き続き実施し、製造企業の技術転換に対する税制優遇措置を改善する。

01月から08月にかけて、技術革新および製造業の発展を支援する主要政策による減税および料金引き下げ、税還付は1兆8,000億元を超えた。

第3に、国内の実効需要を積極的に拡大する。

地方政府が追加国債の資金を十分に活用し、災害後の復旧・復興を支援し、災害防止、軽減、救援能力を向上させるよう監督する。

超長期の特別国債の発行と利用を適切に行い、戦略上重要な分野や重点分野における国家安全保障能力の構築を支援し、大規模な設備更新や民生用商品の下取りを積極的に推進する。

地方特別国債の管理を継続的に強化し、投資分野と資本としての利用範囲を拡大し、地方自治体が重点分野におけるギャップを埋める取り組みを強化できるよう支援する。

01月から09月までに、3兆6,000億元の新規特別国債が発行され、3万以上のプロジェクトを支援し、2,600億元以上がプロジェクトの資本金として利用された。

第4に、草の根レベルでの「三保」※1を強化し、重点分野における保護を確保する。

政府部門および機関が質素な生活を送るよう求める要求は、誠実に実施され、一般支出を厳格に管理することで、重点分野における基本的な生活、賃金、運営、支出を確保するための資金を確保した。

2024年には、中央政府は地方への移転支出(均衡性转移支付※2)として10兆元以上を準備し、そのうち均衡化移転支出は8.8%増加し、県レベルの基本的な財政能力保証メカニズムのための賞与および補償基金は8.6%増加する。

より多くの資金が地方財源の補充に充てられ、地方自治体が草の根レベルでの「三保」の最低ラインを確保できるよう支援する。

※1「3つの保障」は中国語で「三保」:引用者注
以下の保障されるべき3つの基本的な支出項目を指します。

保基本民生(基本的な民生の保障)
国民の基本的な生活を保障するための支出です。ここには教育、医療、社会保障など、地域住民が最低限必要とする公共サービスの提供が含まれます。

保工资(公務員の給与保障)
地方公務員の給与や、その他の公共機関に所属する職員の賃金を確実に支払うための予算を確保することを意味します。

保运转(政府運営の維持保障)
地方政府が日常的な運営や管理を適切に行うために必要な運営費や、機能を維持するための支出を指します。

※2
均衡性转移支付(均衡性転移支払)」とは、中国の財政制度における重要な政策ツールの一つ。

これは、地方政府間の財政格差を是正し、全国的に財政の均衡を図るために、中央政府から財政力の弱い地方政府へ資金を移転する仕組みを指します。具体的には、中央政府が地方政府に対して一定の基準に基づいて資金を配分することで、地方政府が公共サービスを提供するために必要な財源を確保することを目指しています。

この「均衡性転移支払」は、特に財政力が低い県や地方自治体の基本的な運営や、住民に対する基本的なサービスの提供(教育、医療、福祉など)を支援するために重要な役割を果たします。

中国の中央財政が、地域間の格差を是正し、すべての地方が基礎的な行政サービスを提供できるようにするために設けられた制度です。
引用者注

同時に、科学技術、総合的な農村振興、生態文明の建設への支援も強化されている。中央政府の科学技術関連の支出は10%増加し、農村振興を促進するために1,770億元、汚染対策を支援するために651億元が補助金として割り当てられた。

地域発展の協調を促進する財政・税制政策が改善され、北京・天津・河北地域の発展の協調、長江経済ベルトの開発、長江デルタの統合開発といった地域発展戦略が着実に実施される。

第5に、基本的な生活保障の支援に一層力を入れる。

今年、中央政府は、大学卒業生などの重点グループの就職や職業訓練を支援する地方自治体の取り組みを支援するため、667億元の雇用補助金が割り当てられた。

01月から09月までの間、教育に3兆元が費やされた。

退職者の基本年金水準は全国平均の3%に合わせ引き上げられ、都市部と農村部の住民の最低基本年金は大幅に引き上げられる。

基本的な公衆衛生サービスに対する財政補助の基準は、1人当たり年間94元に引き上げられ、都市部および農村部の住民に対する基本的な医療保険に対する財政補助の基準は、1人当たり年間670元に引き上げられた。

次に、中国の人口発展の状況の変化と国民の多層的かつ多様なニーズに対応し、関連分野への支出をさらに増やし、国民生活により良い利益をもたらす。

第6に、地方政府の債務リスクを効果的に削減する。

地方政府の主な責任を強化し、「1省1政策」の原則に従って、さまざまな債務削減措置を実施する。

2023年の地方政府債務上限を2兆2,000億元以上と中央政府が定めたことに加え、2024年にはさらに1兆2,000億元が追加され、地方政府、特にリスクの高い地域が既存債務のリスクを緩和し、企業への延滞債務を清算するのを支援する。

全体として、地方債務リスクは緩和され、債務緩和の取り組みは段階的な成果を上げている。

藍佛安は、全体として積極財政政策の実施は明らかな効果を上げており、国家の主要戦略任務の実施を効果的に確保し、経済運営の全体的な安定と進歩を促進していると指摘した。

現在、中国経済の基礎的条件や、広大な市場、強い経済回復力、大きな潜在力といった有利な条件は変わっていない。

同時に、経済運営には新たな動きや問題も生じている。

全国の一般公共予算の収入の伸び率は予想を下回る見込みである。

藍佛安は、

「ここで私は責任を持って皆さんに申し上げたい。

中国の財政には十分な弾力性がある。

総合的な措置を講じれば、収入と支出のバランスを保ち、年度予算目標を達成することは可能である。どうかご安心いただきたい!」と述べた。
(後略)

まあこれでなんとかなると考えているなら甘いのではないでしょうか(恐らく当局もこれでなんとかなるとは微塵も思っていないでしょうけれども)。なにせ中国経済は「底なし沼」みたいな状態になっているのですから。

(吉田ハンチング@dcp)

広告
タイトルとURLをコピーしました