韓国の短期資金調達市場が、『韓国レゴランド』の不渡り騒動によって麻痺状態に陥りました。
2022年10月23日、韓国金融当局は素早く流動性を回復しようと「緊急マクロ経済会議」を招集して「50兆ウォン+アルファ」規模の支援を決定。
翌24日には「債券市場安定ファンド」による社債・CPの買い取りを始めました。
張り子の虎の再稼働と最初の咆哮
先にご紹介したとおり、債券市場安定ファンドは、2020年03にの韓国市場が危機的なほど下落したのを契機に前文在寅政権が立ち上げたもの。
当時も20兆ウォン規模と呼号しましたが全く役に立ちませんでした。お金を集めるのに時間がかかった上に、「さあ投入しようかな」というときは最も危険な時期が通過していたからです。
今回の危機に際して、この「張り子の虎」を利用できるファシリティーとして再稼働しようと決めたのですが、投入可能な資金は1兆6,000億ウォンしかありませんでした。
それでもないよりはマシです。
緊急なので利用できるものはなんでも使うという尹政権の姿勢は褒められるべきでしょう。素早く動いて支援を決めたのは正解でしたが……しかし、金利急騰は止まりませんでした。
もちろん1兆6,000億ウォンというような金額では、市場の混乱を止めるには全くの役不足ですが、実際に買い取りを行ったのは、稼働初週(24~28日)で3,000億ウォンにとどまったのです。
緊急だというのに、なぜこのように少ないのでしょうか。後から玉が補充されるならドンといくべきす。その姿勢がまた市場を安定させる方向へのアピールになるというのに。
これは債券市場安定ファンドの買い取る社債・CPのレギュレーションが厳しいためです。
3,000億ウォンしか買えなかったわけは……
「ナニやってんだ!」という叫びが聞こえてきそうな、『ソウル経済』の記事から以下に引用してみます。
(前略)
債券市場安定ファンド買取基準の「高いハードル」のため、稼働初週に約3,000億ウォン分の債券だけ買い入れたことが確認された。債安ファンド(債券市場安定ファンドの略:引用者注)が今回の危機の主役であるプロジェクトファイナンシング(PF)融資の借り換え発行に投入されたが、買取基準が信用格付けA1以上であり、これを満たす唯一の建設会社である『現代建設』の物量だけ買い入れたのにとどまったのだ。
(後略)⇒参照・引用元:『ソウル経済』「【独占】債安ファンドはわずか3,000億の買いで終わり…『厳しい基準に大型会社ABCPのほとんどを除外』」
債券市場安定ファンドは、「A1以上の格付けの社債・CPしか買い取らない」というレギュレーションがあるため、それより下の格付けのものは助けられないのです。
A1格付けの建設会社は韓国に3社しかありません。
A1
『現代建設』
『現代エンジニアリング』
『DL E&C』
A2~A3
『大宇建設』
『ロッテ建設』
『SKエコプラント』
『GS建設』
『テヨン建設』
『ポスコ建設』
『ハンファ建設』
『HDC現代産業開発』
A3~A3+
『鷄龍建設産業』
『錦湖建設』
『東部建設』
『双竜建設』
『アイエス東西』
『中興建設』
『中興土建』
『Kolon Global』
『Halla』
『韓信工営』
『漢陽』
つまり、ほとんどの会社は債券市場安定ファンドを利用できないことになります。
債券市場安定ファンドが「また張子の虎」で終わりたくないのであれば、また本当に市場を安定させたいのであれば、レギュレーションを現実的なものに変更する必要があります。
そうでなければ役に立ちません。
(吉田ハンチング@dcp)