会社が税金を納める場合、従来は「所得」について税金が掛かっていました。つまり所得が「0」や赤字、もうかっていない場合には税金が掛けられなかったのです。しかし、「外形標準課税」というシステムがあって、これは赤字の会社からも税金を取れるという課税方法です。
■法人が納めている税金は少ない!?
日本の法人で所得についての税金を納付しているのは約30%といわれます。つまり黒字の法人がそれぐらいしかないというわけです。
これで困るのは、税収が安定しないという点です。どの法人が黒字になるのかは決算が終わってみないと分かりませんし、景気が悪くなると途端に税収が少なくなるといったことが起こります。
■規模に応じて課税しよう!
実際、バブルがはじけた後、2003年(平成15年)ごろの法人の決算は非常に悪くなり、税収は落ち込みました。法人の支払う税金が少なくなると、地方自治体の歳入が減ります。そこで、ある程度の規模を持つ会社からは、所得が赤字でも税金を取ろうという動きが起こりました。
法人の規模、つまり「外形」に応じて、という意味で「外形標準課税」というわけです。
外形標準課税は現在地方税として「資本金が1億円以上」の法人について課せられます。
■「外形標準課税」ってどのくらいなの!?
ここで法人が支払う税金がどのくらいなのかを見てみましょう。
法人に掛かる税金 = 法人税 + 法人住民税 + 法人事業税
法人税は、国に支払う税金。
法人住民税と法人事業税は、地方税です。
*……他に消費税があります。これは黒字・赤字に関係ありません。
東京都に法人があったとすると実効税率は「35.64%」になります。
上記のうち、法人事業税は「所得割」と「外形標準課税」を足したものです。
「所得割」はその法人の所得に対する課税部分ですから、赤字の法人はこの部分がないことになりますね。ちなみに所得割の税率は「2.9%」です。
では、肝心の「外形標準課税」がどのように計算されているか見てみましょう。
①外形標準課税 = 付加価値割 + 資本割
となっています。「付加価値割」とは、「その法人の生み出した付加価値を基準にした課税」と説明されますが、これだけでは何のことか分かりませんね。
計算式ではこうなります。
付加価値割 = 付加価値額 × 0.48%
付加価値額 = 収益配分額(報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料) + 単年度損益
問題なのは「収益配分額」のうちの「報酬給与額」です。これは「給与、賞与、手当、退職金などの合計金額」と規定されています。
「純支払利子」は利子収入がなければ関係ありませんし、「純支払賃借料」は土地・家屋の貸し借りをしていなければ関係ありませんが、資本金が1億円以上で人を雇用していない法人はまずないでしょう。
計算式から分かるとおり、人をたくさん雇用して、いわゆる「人件費」をたくさん払っている法人ほど多く支払わなければなりません。
また①の式の「資本割」は、「法人税法の規定に関する資本金等の額、または連結個別資本金等の額」に課税され、その税率は「0.2%」とされています。
仮に資本金を1億円とすると、
1億円 × 0.2% = 20万円
ですね。
また「地方法人特別税」というのがあって、外形標準課税が適用される法人については所得割に関して徴収されます。これが「所得割額の148%」となっています。
■法人税を下げる一方で……
現在、法人税率を下げようなんて話がある一方で、外形標準課税の課税対象を拡大しようという話があります。経済評論家の先生の中には、外形標準課税の課税対象を拡大すると中小企業の倒産が増えると指摘する人もいらっしゃいますが……。
この「外形標準課税」の問題はさてどうなるでしょうか!?
*……正確には、赤字やもうけが0の会社でも、法人住民税の「均等割」は支払わなければなりません。
(高橋モータース@dcp)