韓国の航空産業のドタバタが続いています。国策銀行『産業銀行』が主導して『大韓航空』による『アシアナ航空』の買収を進めています。韓国与党議員から一部批判も出ていますが、『産業銀行』は何がなんでも実現するつもりです。
そのため韓国メディアには、早くも「資産40兆ウォン世界第7位の航空会社が誕生する」というが惹句が出ています。この40兆ウォンは、
『アシアナ航空』資産:13兆4,010億ウォン
を足したものです。聞くとスゴそうですが、ちっともスゴくありません。
資産だけ見て「負債」を見ていないからです。貸借対照表でいえば左側しか見ないで喜んでいるようなものです。
直近でデータを調べてみました。以下です。
『大韓航空』 | 『アシアナ航空』 | |
売上高 | 4兆1,557億ウォン | 2兆1,801億ウォン |
営業利益 | 274億ウォン | -2,686億ウォン |
当期純利益 | -6,195億ウォン | -6,333億ウォン |
資産 | 26兆6,802億ウォン | 13兆4,010億ウォン |
負債 | 24兆4,558億ウォン | 12兆8,405億ウォン |
負債比率 | 1,099% | 2,291% |
両社の資産をヨコに足して約40兆ウォンとスゴそうに見えるのですが、負債はいくらあるんだよと、同様にヨコに足すと「37兆2,963億ウォン」です。
負債は妥当な水準なのか、その負債を返せるのか?を判断するときには「負債比率」※を使うといいですね。『大韓航空』は「1,099%」、『アシアナ航空』は「2,291%」とヒドイ数字です。
つまり、『大韓航空』は資本(自己資本)の約11倍、『アシアナ航空』は資本の約23倍の負債があるのです。
負債比率がどのくらいで適切なのかは諸説ありますが、まず中小企業の場合は100%を超えたらまずいでしょう。大企業の場合でもどこまで許容できるのか、です。
例えば『株式会社FUNDBOOK』の負債比率について解説したページには以下のように書かれています。
●901%以上
負債比率が高いといえます。返済に充てる自己資本が十分でないため負債比率を下げない場合、倒産の可能性が高まります。
この基準に照らしても、『大韓航空』1,099%、『アシアナ航空』2,291%ですから、倒産の可能性が高まります、どころの騒ぎではないのです。もちろんだからこそ合併なんて事態になっているのです。
まとめますと、「資産40兆ウォン、世界第7位の航空会社誕生!」じゃないのです。「負債37兆ウォンの今にも飛びそうな航空会社誕生!」なのです。
韓国メディアは、両社共そもそも飛びそうな企業であって(『アシアナ航空』はすでに死んでいます)、国策銀行から援助を受けており、仕方なく合併するのだということをもう忘れたのでしょうか。
『産業銀行』がせっせと絵図をかいて急いでいるのは、ほっとくと両社ともドボンでにっちもさっちもいかなくなるからです。もちろん誕生したとたんにドボンもあり得ます。
※負債比率は、「負債(他人資本)」を「資本(自己資本)」で割り100を掛けてパーセント表示にします
(吉田ハンチング@dcp)