韓国メディアにも「1ドル=1,400ウォンが秒読み」なんて記事が出るほどで、ウォン安進行が深刻なことになっています。
通貨安が進行してもドルがあるうちは大丈夫でしょうから、ドタバタしないでも良さそうなものですが、ウォン安がかつての通貨危機水準に達していますので「落ち着いてなどいられるか!」ということなのでしょう。
(よせばいいのに)取り憑かれたように各メディアが「通貨スワップ」を連呼しています。
ずいぶん前にご紹介したことがありますが、『中央日報(日本語版)』は実に「通貨スワップ」がお好きで、こういう時には先陣を切って「通貨スワップ」の記事を出します。
「1ドル=1,390ウォン」を突破した、2022年09月15日、やっぱり「金融危機当時も1,400ウォン台…通貨スワップで衝撃一時緩和」という記事が出ました。
特に実のある話はありませんが、
(前略)
当時米韓通貨スワップも初めて締結されたが、為替相場の衝撃を少しの間だけでも落ち着かせる「一発」の役割をした。
(後略)
と書いていますので、一瞬相場を落ち着かせるためだけにも「通貨スワップが要る!」と言いたいのだと思われます。
一万歩譲って「一瞬だけ効いた!」ところで役に立ちません。
今回のウォン安進行は、アメリカ合衆国がインフレ退治のためにドルの流動性を絞りにかかっていることが原因なので、合衆国の動きが止まらない以上、基本的にはウォン安は続くのです。
ウォン安進行を止めたければ、ウォンの流動性を合衆国以上に絞るしかありません。まあ、それが利上げであるわけですが、韓国の場合、企業負債・家計負債の爆弾に点火しないようにハナから利上げ競争は無理なのです。
あっちが0.75%ならこっちは1.25%だ、みたいなチキンレースは韓国には不可能です。
それを熟知している『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、「(韓国は)0.25%ずつの利上げが望ましい」と意見表明しているのです。
いわば「マイルドにいこう」というわけです。
『韓国銀行』総裁の発言が敗着という指摘
『中央日報(日本語版)』の同記事内に面白い指摘が出ていますので、以下に引用してみます。
(前略)
延世(ヨンセ)大学経済学部の成太胤(ソン・テユン)教授は「米国が0.75%ずつ金利を上げる状況で、韓国は0.25%ずつ持続的に金利を引き上げると公言したことが決定的な敗着とみられる。
韓米の金利差が出続けているのに金利を大幅に上げられないほど韓国経済の内部状況は不安だという認識を海外の投資家に植え付けた格好になった」
と話した。
成教授は続けて「通貨危機や金融危機とは違い決定的事件もないのに為替相場が1400ウォン台に入ることになったが、そうした意味で現状は深刻だとみる」と強調した。
成太胤(ソン・テユン)教授は、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の「マイルドでいこう」発言が「敗着になった」と断言しました。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁発言のおかげで、海外から「韓国は大きな利上げができないほど国内経済が不安なのか」と見られるようになった――というのです。
で、ウォン安が進行している――と。
家計負債の異常な増加速度が世界一であるというのは『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)、『OECD』も統計で出しているところですから、今さら「見られるようになった」というのはおかしな話です。
韓国経済がコロナ禍によって(あるいは文在寅政権によって)おっかしなフェーズに入ったと海外の専門家に認知されている――と思っていなければいけないでしょう。
そもそも李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「米韓通貨スワップ締結でドル強を防ぐことができるというのは誤解だ」と指摘していらっしゃいます。
自国の中央銀行総裁の言葉を信じたらいかがでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)