韓国造船業Top3の『大宇造船海洋』の売却話が急展開しています。
国策銀行『産業銀行』が絵図を描いた合併話がEUの結合審査でNGとなり、早く引き受け先を見つけないといけない状況です。
先にご紹介したとおり、新しく『産業銀行』会長となった姜錫勲(カン・ソクフン)さんは、2022年09月14日、就任100日の記者懇談会で「『産業銀行』が大株主であるシステムの効用が尽きたかどうか、根本的に判断する」と述べています。
なにせ大赤字の会社ですし、いつまでも『産業銀行』が大株主としてお金を支援し続けるというのにも限度があります。早く足抜けしたいというのが『産業銀行』の本音なのです。
売却先を探さないといけないのですが、韓国メディアには『ハンファグループ』が『大宇造船海洋』を引き受ける――となりました。
買収価格は「2兆ウォン」(約2,000億円)です。
『大宇造船海洋』が有償増資を行い、その新規発行の株式を『ハンファグループ』が引き受けます。これによって、『産業銀行』の持株比率を大幅に下げるのです。
『産業銀行』55.7% ⇒ 28.2%
『ハンファグループ』が投入する資金は以下です。
『ハンファシステムズ』:5,000億ウォン
『ハンファインファクトパートナーズ』:4,000億ウォン
『ハンファエネルギー』傘下の3社計:1,000億ウォン
小計:2兆ウォン
実は、『ハンファグループ』は過去に『大宇造船海洋』の買収に名乗りを上げたことがあります。
2008年03月、『産業銀行』の売却入札に参加して11月には優先売却先に指定を受け、買収了解覚書(MOU)までかわしました(買収履行の保証金で3,150億ウォンを出しています)。
ところが、「2008年」はリーマンショックの年。2008~2009年は韓国通貨危機です。
ご多分に漏れず『ハンファグループ』も資金難に襲われました。『ハンファグループ』は分割払い方式での買収を提案したのですが、これが却下されました。
2009年にはMOUは解除されたのですが、振り込んだ保証金は返金されず、『ハンファグループ』は訴訟を起こすに至りました。
――と、このような因縁が『大宇造船海洋』と『ハンファグループ』にはあります。
今回の『ハンファグループ』による『大宇造船海洋』買収は、事実上、不良債権の処分です。『産業銀行』は再生が不可能と見て売却を急いだものと見られます。
今回は果たしてうまく売却・買収が進むでしょうか。韓国経済に暗雲が垂れ込めていますので、どうなるのかは要注目です。また「資金難で進みませんでした」にならなければいいのですが。
(吉田ハンチング@dcp)