日本メディアでは久しぶりに中国『恒大集団』が話題になっており、03月23日に返済ができませんでした――と報じられていますが、そんなことよりも03月22日に同グループが出した資料の方が問題です。
上掲がそれですが、PDF文書で201ページもある大部のリリースで、債務処理をどのように進める(進めたい)のかのプランをまとめた内容となっています。これによって明らかになったのは、『恒大集団』が抱える天文学的な債務の額です。
本グループの貸借対照表(概要)が出ているのですが、以下をご覧ください。
総資産:1兆6,990億元
総負債:1兆8,980億元
株式資本:1,990億元
すぐにお分かりになるでしょうが完全な債務超過です。債務超過は、全ての資産を売却しても負債を返済できない状態のことをいいます。
超過額は約2,000億元(約3兆8,440億円)※。約4兆円の債務超過です。
負債総額「1兆8,980億元」(約36兆4,796億円)です。
気の遠くなるような金額ですが、これは2021年12月31日時点のデータ。なぜ2022年末時点のデータを出さないのかと不思議ですが、理由は不明です。
読者の皆さまもご存じのとおり、2022年には中国の不動産市場は大きな下落に見舞われました。そのため、『恒大集団』が保有している資産も目減りしたはずです。総資産の額は減少し、債務超過の状況は悪化したと見なければなりません。
03月23日に償還できなかったのは、このような財務状況がさらに悪化し、お金の手当てがつかなかったためと見られます。
※03月23日の人民元・円レート「1人民元=19.22円」で換算/以下同
国内債務は約1兆円!
国内の債務もべらぼうな金額です。上掲資料の中に以下のように書いてあります。
国内では、提案された事業再構築の完了により、国内債権者と当社グループとの間で和解が成立し、当社グループが秩序ある事業を再開し、債務返済のためのキャッシュフローを徐々に生み出すことができるよう、事業再開のための必要条件を提供したいと考えています。
関係する元本は535億元、利息は37億300万元でした。
同時に、当社グループの国内債務は大幅に延滞しており、2022年12月31日現在、国内有利子負債は約2,084億元、国内商業受入金は約3,263億元、国内偶発債務は約1 ,573億元、一部の国内債権者はこの点で当社グループに対して法的措置をとっています。
(後略)
債務元本が「535億人民元」もあるというのです。日本円で「約1兆283億円」と巨額です。
しかもこれは、2021年12月31日時点でのデータであって、クロスデフォルトやアクセラレーションなどの規定が考慮されていません。ドボンがどこまで連鎖するのか不明です。
借金を返す気はない!
今回『恒大集団』が公開した資料の中に、債権者がどのくらいのお金を回収できると見込まれるのか?があります。以下をご覧ください。
上掲のとおり、最も回収率がいいとされる「『景程』の債券を保有する債権者」でも「6.49~9.34%」と予測されています。『恒大集団』の債券を保有する債権者でも「5.92%」となっていますので、突っ込んだお金はほぼほぼ回収できない、というわけです。
※『景程』は『恒大集団』の子会社、『天基』はオフショアの金融部門。
今回公表されたのは、債務の再編・再建プランなわけですが、どうするつもりなのかというと、債権者に対して新しく発行する債券との交換などでガラをかわそうとしています。
『恒大集団』が発行した債券を保有する債権者に対しては、新発する債券(償還期間10~12年)、あるいは『恒大地産』(中国本土の不動産会社)『恒大新能源汽車』(電気自動車の開発・製造会社)、『恒大集団』本体の株式に関連したSecurities(証券類)と交換する――としています。
『景程』の債権者は65億ドル相当の新発債券、また『天基』の債権者は8億ドル相当の新発債券との交換――というプランです。
つまり、クズになってしまったSecurities(証券類)の代わりに、新しいSecurities(証券類)と交換しましょう、というのです。クズ紙の代わりにティッシュペーパーをくれる、みたいな話です。
『恒大集団』は、投資家にお金を返すつもりなどありません。
いったん債権者をなだめ終わったら、また同じことを始めるでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)