2025年01月20日、中国の国家衛生健康委員会が記者ブリーフィングを行ったのですが、興味深い点があるのでご紹介します。
『南方日報』（南方+）記者の質問：
現在、多くの人がメンタルヘルスの問題に悩まされており、効果的な解決策が求められています。「民衆のための8つの施策」の中には、心理カウンセリング外来、睡眠外来、心理支援ホットライン、心理健康講座などが含まれていますが、これらの施策をどのようにして実際に市民に利益をもたらすことができるのでしょうか？『国家衛生健康委員会』医政司 司長 焦雅輝の回答：
ご質問ありがとうございます。経済や社会が急速に発展する中で、人々の生活リズムが加速し、ストレスが増加しており、メンタルヘルスや睡眠の問題がますます社会の関心を集めています。
このため、国家衛生健康委員会は2025年～2027年を「精神衛生サービス年」と定め、以下の3つの施策を重点的に推進します。
①心理カウンセリング外来・睡眠外来の設置
2025年までに、全国すべての市に少なくとも1つの公立病院で心理外来と睡眠外来のサービスを提供することを義務付けました。
2024年末時点で、全国には約1,000の公立精神科病院、約2,000の公立総合病院が心理または精神科を設置しており、すでに一定の基盤が整っています。
（中略）②心理支援ホットライン「12356」の設置
現在、全国で600本以上の心理支援ホットラインが開設され、1,200以上のオペレーターが配置されていますが、番号が多岐にわたるため、市民が覚えにくいという課題があります。そこで、全国統一の心理支援ホットライン「12356」を導入し、心理支援サービスの利便性とアクセス性を向上。すでに北京、天津、上海、浙江、広西などの省市で「12356」のホットラインが開通しており、他の省も積極的に準備を進めています。
（中略）③心理健康講座の開催
心理健康の知識を普及し、早期の自己認識とセルフケアの能力を高めることが、予防と介入の重要な手段である。全国各地の衛生健康行政機関や医療機関が、オンライン・オフラインの講座を実施し、2025年には、さらに質の高いリソースを活用し、科学的な普及活動を強化。
（後略）
中国の記者ブリーフィングなんてものは、「当局の言いたいこと」を記者に割り振って質問させる――みたいなものなので、これも当局が言いたいことなのです。
「2025年～2027年を『精神衛生サービス年」」とする――というのがアピールしたいわけで、記者の質問「（中国では）多くの人がメンタルヘルスの問題に悩まされており、効果的な解決策が求められています」こそが注目ポイントです。
なぜメンタルヘルスの問題が中国で深刻になるかというと、「明日が不安だから」です。
職がない、給料は削減される、住宅ローンの支払いができるかどうか分からない、子供の養育費はどうする――といった暗闇の中に放り込まれれば、誰だって精神の平衡を失います。精神疾患（mental disorder）を発症してもむしろ当然の心の動きといえるでしょう。
中国共産党がいるからこのような状況だというのに、中国共産党が人々を癒やすための手を打つというのです。
マッチポンプですし、壮大な悲喜劇という他ありません。
↑『WHO』公式サイト「中国のメンタルヘルス」ページ。5,400万人がうつ病と推計と書いてあります。
『WHO』の推計データによれば、「中国の14億人の人口のうち、5,400万人がうつ病、4,100万人が不安障害に罹患している」――となっています。
また中国の心理学専門メディア『第一心理』は「世界のうつ病患者は3.5億人を超えると推計されるが、そのうち5,400万人が中国人を占める。中国の総人口の4.2％に当たり、100人に4人がうつ病患者である計算になる。研究によると、18～34歳の若者の発症率が最も高く、大学生や社会人が多くを占める」と説明しています（2021年のデータを基にした説明）。
中国共産党の施策など役に立つはずがありません。中国共産党の存在と指導が人々のメンタルを追い込んでいるのですから。
また、「全国すべての市に少なくとも1つの公立病院で心理外来と睡眠外来のサービスを提供することを義務付けました」という施策も大笑いで、Money1でもご紹介しましたが、中国全土で公立病院がバタバタ破綻するという事態になっており、医師でさえ給与不払いに苦しんでいるのです。
どうやって精神科やメンタルクリニックのサービスを充実させるつもりなのでしょうか。
中国の皆さんのメンタルヘルスを良好にしたいなら、中国共産党が潰れればいいのです。自由民主主義の社会システムになれば、それは達成されるでしょう。
（吉田ハンチング＠ｄｃｐ）
