読者の皆さんもすでにご存じかもしれませんが、2024年02月18日、中国の国家外貨管理局が2023年第4四半期の国際収支統計を公表しました。
これによって「外国から中国共産党への直接投資が激減した」と他メディアでも報じられていますが、それでは済みません。これは、ただ単に「中国への入り」しか見ていないからです。
「出る」方の数字も見て、「収支」を確認すると、実は非常に深刻な事態に陥ったことが分かります。
直接投資
資産:-433億ドル
負債:174億ドル
直接投資収支:-258億ドル
※中国の公表データの「+」「-」表記に準じています。記事末参照
公表されている「2023年第3四半期」までのデータにこれを足し込んで、「金融収支 – 直接投資」の数字を見てみると――外国から中国に投資されたと直接投資の金額推移(金融収支 – 直接投資 – 負債の部)※は以下のようになります。
※金融収支(Financial Account)- 直接投資(Direct Investment)-負債の部(Liabilities)
2023年は、習近平さんはじめ、商務部、外交部など、御用メディアまで動員して、「中国に投資しよう。今がチャンス」とウソばっかり言ってたわけですが――上掲のとおり、それもそのはず、2023年の直接投資はなんと「330億ドル」しかなく、2022年の「1,802億ドル」から、81.7%も減少しました。
外国の皆さんは、「習近平には騙されないぞ!」と、約82%も中国に投入するのをやめたのです。
実は、これよりももっと深刻な数字があります。
中国からお金が出ていくのだ!
国際収支統計は、その名のとおり「収支」を計算したものです。
上掲は、直接投資における「外国から中国への投資」の数字です。すなわち、外国人投資家が中国にナンボお金を入れたのか(ナンボの資産を増やしたのか)を表しています(上記のとおり負債(Liabilities)に表れる)。
しかし、中国から外国への直接投資で出ていくお金もあるわけです。これが資産の部(Assets)に表れます。外国の資産をナンボ増やしたかの数字で、上記とは逆に、中国からナンボ出ていったのかも表しています。
この「資産(Assets)」と「負債(Liabilities)」を差し引きすれば、直接投資において、実際にはナンボ資産が増えたのか(ナンボお金が入ってきたのか/ナンボお金が出ていったのか)が分かります。これが直接投資の収支です。
2023年第3四半期までのデータに今回発表された第4四半期のデータを足し込んでみると、2023年通期の直接投資は、以下のようになります。
2023年 直接投資
資産:-1,855億ドル
負債:330億ドル
直接投資収支:-1,525億ドル
※中国の公表データの「+」「-」表記に準じています。記事末参照
この直接投資収支の推移をグラフにすると以下のようになるのです。
2023年は、直接投資において中国は資金の純流出に陥りました(正確には資産減少)。しかも1,525億ドルという巨額です。
なぜ、こんな惨状になったかというと、中国が巨額の「外国への直接投資」を行ってきており、それが2023年も続いたからです。
2016年には「2,164億ドル」に達し、直近の2023年でも「1,855億ドル」となります(今回の公表データを足し込んだもの)。
それだけお金が外国に出ていくわけです。
なぜ、国がもつかというと、それ以上の直接投資が外国から入ってきていたからです。だから直接投資収支においては「資金流入」になってきました。
ところが、2023年は外国からの直接投資が上記のとおり約82%も減少しました。例年のごとく「1,855億ドル」も外国に資金を投じていたら、収支がマイナスになって当然です。
1998年から2023年までの累計の資産・負債を普通の国際収支統計の表記にすると以下のようになります。
直接投資
資産:1兆9,779億ドル
負債:4兆1,533億ドル
直接投資収支:-2兆1,370億ドル
※国際収支統計はフローの統計なのでフローの累計であることに注意してください。
中国は対外資産を1兆9,779億ドル増加させました。つまり、それだけキャッシュアウトしたわけです。しかし、負債はその倍以上の「4兆1,533億ドル」となっています。つまり、それだけ外国からお金を入れてもらった(外国からすると中国の資産を増やしたことになる)わけです。
それが差し引き(収支)の「-2兆1,370億ドル」です
これが中国が回ってきた理由で、自国が出す直接投資の倍以上をお金を外国から入れてもらってきたわけです。
――それが上記のとおり、外国からの資金流入が激減。これによって直接投資の収支が「資金流出」に一気に傾いたのです※。
これは習近平さんでなくても青ざめて当然です。
※中国からお金を逃がすために「海外への投資」という手があります。「もう中国になんかお金を置いておけない!」となれば「海外に◯◯という企業と合弁会社をつくります」などの名目でお金を外国に送金してもらうのです。
さあ、どうしましょう? 習近平さんがいかに笛を吹いても、いかに王毅外相が踊ってみても、もう中国に資金を投入しようなんて「ばか」がいるとは思えません。
どうなるかというと――これまでのように「外国に投資することはできない」ことを意味しています。なぜなら外国からの投資がないので、巨額のキャッシュアウトを続けられないからです。
中国を石器時代にまで戻して、安全な世界を作るためには、とにかく中国にお金をやらないことです。
逆に「負債の部」は「負債がどのくらい増減したのか」を示します。「+」になっていれば、外国からお金が自国の資産に入ってきたことを示します。つまり、対外負債が増加したことになりますが、どれだけお金が入ってきたかを示しています。
国際収支統計は、直接投資による「対外資産の増加」と「対外負債の増加」の収支を計算しています。
普通は、資産の方も「+」で資産の増加を示すのですが、中国の国際収支統計では「-」で記載しています。なんでこんな表記になっているかというと「金がナンボ入ってきたんや」がスグ分かるようにと思われます。
上記のとおり、対外資産が増加するということは、外国にお金が出ていっていることを意味します。ですので、直接投資における対外資産の増加をキャッシュアウト、つまり「-」の符号で示し、対外負債の増加はキャッシュインなので「+」の符号で示し――その収支は、「-」なら「お金がこれだけ出ていった」、「+」なら「お金がこれだけ入ってきた」としているのでしょう。
(柏ケミカル@dcp)