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1,000兆円の借金を財務省はこう考えている!

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「日本の国債や借入金、政府短期証券を合わせた国の借金の残高がついに1,000兆円を超えた!」という発表が2013年8月9日に財務省からありました。1人頭800万円の借金などといわれますが、さてこの借金はどうやったらなくなるのでしょうか?

こんな難しい話は財務省に直接聞いた方が早い!というわけで、1,000兆円の借金について、ちまたでよくいわれている素朴な疑問を財務省にぶつけてみました。その回答をまとめてみましたので、ご覧ください。

日本には資産もあるはず!?

――日本の借金は1,000兆円となっていますが、日本には資産もあるはずで、それと差し引きしないとフェアではないのではないでしょうか? また、日本の資産の部はいくらあるのですか?

財務省 政府が公表している平成24年度「国の財務書類」(民間企業におけるバランスシートに当たるもの)によると、日本は資産を約640兆円持っています。これを聞いたら640兆円分の借金は、資産を売ればいつでも返せるのだから、その分は差し引きして考えようと思いますよね。

でも、その考えには大きな落とし穴があります。確かに、国が持っている資産が、今すぐ売ってお金に換えられるものばかりだったら、そういう考え方もアリかもしれません。しかし、国の資産にはすぐに売って借金の返済に充てられないものが多く含まれているのです。

例えば、皆さんが老後にもらえる年金の積立金が約110兆円あります。もしこれを借金返済のために使ってしまうと、せっかく毎月払った年金がもらえなくなるかもしれません。また道路や堤防は約180兆円ありますが、これは基本的に売り物になりません。だって道路が欲しくて買いたい人いませんよね。

こうした理由で、政府が財政状況を説明するときには、借金から資産を差し引いた額ではなく借金の総額を使っています。欧州連合(EU)でも加盟国が守るべき基準として借金の総額を使っているので、こちらがワールド・スタンダードだといえるでしょう。

ちなみに、それでも資産を差し引きしたときの日本の借金はどのくらいなのか、他の国と比較したらどうなのかを知りたい場合は、OECD(経済協力開発機構)という機関が出している統計が役立ちます。

それによると、2013年末の日本の借金残高は対GDP比で230%、ここから資産を差し引いても140%。これは、主要先進国の中でダントツの水準です(2位のイタリアの借金残高が150%、差し引きで120%)。こんな種目で金メダルはちょっと悔しいですね。

借金返済の解決策は!?

――このまま借金が増え続けると大変だと思うのですが、解決するにはどんな方法があるのですか?

財務省 借金を帳消しにする魔法の杖はないので、コツコツ借金を返していくしかありません。

そのためのカギとなるのがプライマリー・バランスです。プライマリー・バランスとは、その年の政策に必要となるお金をその年の税金でどれだけカバーできているのかを示す指標です。

例えば、「プライマリー・バランス」が±0になれば、借金に頼らずに政策の経費を100%税金でカバーできるということを意味します。ただし、このときの経費には、国の借金の元利払いなどの分が入っていないことに注意する必要があります。

ただ、まずはこの「プライマリー・バランス」をプラスにすることが、国の財政を良くするための第一歩なのです。

政府は、すでに、2015年度までに(2010年度を基準にして)プライマリー・バランスのマイナスを半分に、2020年度までにプライマリー・バランスをプラスにする、という計画(「中期財政計画」2013年8月8日)を立てています。

この目標を達成するために、予算をスリムにして出ていくお金を節約すると同時に、経済成長などによって入ってくるお金を増やす、という「出」と「入」両方の取り組みを進めていきます。

2020年といえば東京オリンピック開催の年。その時までに、借金部門金メダルを手放すための準備体操は済ませておきたいものですね。

お札を刷って返せるか!?

――いざとなったらお札を刷って返せばいいじゃんという意見もあるようですが、これについてはどう思われますか?

財務省 そのアイデア、いただき!と言いたいところですが、現実はそう甘くありません。

日本銀行が国の借金と同じくらいお札をたくさん刷ると、世の中のお金の量が急に増えて、急激なインフレーション(物価の上昇)という現象が発生します。これは、お金の価値が急落することを意味し、最悪の場合、お金が紙くず同然となってせっかく貯めた貯金がパー、買い物するのにショッピングカートいっぱいのお金が要るような異常事態になってしまいます(第一次世界大戦後のドイツでは、パン1個の値段が1年間で数千億マルク(!)になるほどの強烈なインフレーションが発生しました)。

また、このような極端なことをすれば、日本政府や「円」という通貨に対する海外からの信用もなくなって、金利は急上昇、為替は下落して、海外からお金を借りたり物を買ったりできなくなります。

付け加えれば、そもそも、お札を刷る日本銀行は政府から独立しているので、仮に日本銀行が市場に出回っている国債(国に貸したお金を返してもらえる権利)を買い集めて、全て保有したとしても、政府の借金そのものがなくなるわけではありません。

このように、借金を返すためにお札をたくさん刷るという方法は、問題の根本的な解決にはなりません。

日本人が諦めたらなんとかなる!?

――日本の借金はそのほとんどが日本政府が日本人にしたものなので、最終的には日本人が諦めたらチャラになるという意見もありますが、こういった意見についてどのように思われますか?

財務省 こうした意見をおっしゃる方は、「私は政府にお金を貸していないし、関係ないかな。チャラにしてあげればいいじゃん」と思っているかもしれません。

しかし、実際にチャラにすると私たちの生活にも影響が及んでしまうとしたらどうでしょうか?

順に説明していきましょう。

日本政府の借金は、その9割以上が日本国内に対するものです。お金を貸しているのは主に銀行や生命保険・損害保険などの金融機関、そして年金を積み立てて運用する年金基金です。

これらの機関などが、政府に貸したお金を返してもらえる権利を手放せば、政府の借金のほとんどは消えてなくなります。

しかし、これらの機関も、当然ボランティアではなく、商売や資金運用のためにお金を貸しているわけですから、常識的に考えれば、貸した多額のお金を帳消しにするはずありません。

万が一、権利を手放した場合には銀行や生命保険・損害保険などの金融機関は倒産し、年金基金は残高がほとんどなくなります。

そうなると、銀行に預けていた私たちの預金が失われ、保険金・年金は受け取れなくなるなど、私たちの生活にも大きな悪影響が及んでしまう可能性があります。

以上、素朴な疑問にお答えさせていただきましたが、いかがだったでしょうか。借金を帳消しにする「うまい方法はない」ということをご理解いただけたら幸いです。

政府としては、先ほど申し上げた、「2015年度までにプライマリー・バランスのマイナスを半分に、2020年度までにプライマリー・バランスをプラスにする」という計画に基づいて、地道に、しかし着実に財政再建に取り組んでいくこととしています。

⇒以上が財務省よりのまとめ

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いかがだったでしょうか。やはり借金は地道に返していくしかないようですね……。

(高橋モータース@dcp)

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