アメリカ合衆国国務省のウェンディ・R・シャーマン(Wendy Ruth Sherman)副長官が中国を訪問し、王毅外務相と会談を行いました。
この会談では、人権問題などが議題に取り上げられました。日本ではあまり報道されませんが、合衆国国務省は報道の自由について中国を批判する声明を出しています。
読者の皆さんもご存じのとおり、中国河南省などは大雨・洪水による甚大な被害を受けました。河南省鄭州市では地下鉄・トンネルが水没して死者が出るほどの惨事が起こりましたが、中国当局は報道陣を締め出し、弾圧する強硬な措置を取っています。
「中国の恥となるようなものを撮るな」と個人撮影も禁じて、自国民にも箝口令を敷く有り様です。
以下が合衆国国務省が出した、プレスリリースです。
The United States is deeply concerned with the increasingly harsh surveillance, harassment, and intimidation of U.S. and other foreign journalists in the People’s Republic of China (PRC), including foreign journalists covering the devastation and loss of life caused by recent floods in Henan. The U.S. government reiterates the condolences of the American people to all those affected.
合衆国は、最近の河南省での洪水による被害と人命の損失を取材した外国人ジャーナリストを含め、中華人民共和国(PRC)における米国およびその他の外国人ジャーナリストに対する監視、嫌がらせ、脅迫がますます厳しくなっていることに深い懸念を抱いている。
合衆国政府は、被害を受けたすべての人々に対し、合衆国国民の哀悼の意を改めて表明する。
The PRC government claims to welcome foreign media and support their work, but its actions tell a different story. Its harsh rhetoric, promoted through official state media, toward any news it perceives to be critical of PRC policies, has provoked negative public sentiment leading to tense, in-person confrontations and harassment, including online verbal abuse and death threats of journalists simply doing their jobs. Foreign journalists are increasingly refused visas to enter or remain in the PRC, severely limiting the quantity and quality of independent reporting on important issues. We call on the PRC to act as a responsible nation hoping to welcome foreign media and the world for the upcoming Beijing 2022 Winter Olympic and Paralympic Games.
中国政府は、外国メディアを歓迎し、その活動を支援すると主張しているが、その行動は違っている。
中国の政策に批判的であると認識したニュースに対して、国営メディアを通じて厳しい言葉を浴びせ、国民の否定的な感情を引き起こし、仕事をしているだけのジャーナリストに対して、面と向かっての難詰、ネット上での罵詈雑言、殺害の脅迫などの嫌がらせを行っている。
外国人ジャーナリストは、中国への入国や滞在のためのビザを拒否されることが多くなり、重要な問題に関する独立した報道の量と質が著しく制限されている。
我々は中国に対し、2022年に開催される北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、外国メディアや世界の人々を歓迎する責任ある国家として行動することを求める。
In her July 26 meetings with PRC officials in Tianjin, Deputy Secretary Sherman specifically raised the importance of media access, freedom from harassment, and press freedom. We call on PRC officials to ensure that journalists remain safe and able to report freely.
シャーマン副長官は、07月26日に天津で行った中国政府関係者との会談で、メディアのアクセス、ハラスメントからの自由、報道の自由の重要性を特に強調した。
報道の自由を守れという激しい叱責ですが、注目ポイントは「北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会」に言及している点です。
現在合衆国では、北京冬季五輪をボイコットすべきではないのかという件が議論されています。これは超党派で賛同者を得ており、その動きが大きくなるかもしれません。言外に「ボイコットするかもよ」というニュアンスを含ませたものと推測できます。
中国に報道の自由は端(はな)からありませんが、北京冬季五輪を突かれたのは少しは効いたのではないでしょうか。イギリス、合衆国など自由主義陣営がボイコットを主導したら面子が潰れることになりますので。
最後になりましたが、中国で水害に遭われた方に心よりお見舞いを申し上げます。
(吉田ハンチング@dcp)