韓国・ソウルで4年5カ月ぶりに開催される「日中韓首脳会談」のために、2024年05月26日(日)、日本の岸田文雄首相、中国の李強首相が韓国に到着。
日中韓首脳会談自体は27日(月)ですが、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は中韓首脳会談、日韓首脳会談をそれぞれ行いました。
まずは中韓首脳会談です。
以下は、中韓首脳会談が行われた後に韓国外交部が出したプレスリリースの全文和訳です。
尹大統領、日中韓首脳会談を機に中国の李強首相との会談の結果
2024.05.26
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領、日中韓中首脳会談を契機に中国・李克強首相との会談結果について尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、本日(5月26日:日曜)午後15:05~16:10の間、第9回日中韓日首脳会談出席のため訪韓した李強(リ・チャン)中国首相と会談を行い、韓中関係、地域およびグローバル情勢など相互の関心事について意見を交換しました。
尹大統領は、最近、さまざまな分野で両国間の閣僚級対話が再開され、地方自治体間の交流も活性化していることを歓迎し、交流と協力を強化し、相互尊重し、共同の利益を追求していくことを表明しました。
また、尹大統領は、中韓両国が二カ国間関係を超えて、国際社会の平和と繁栄のために緊密に協力していかなければならないとし、今日のグローバルな複合危機の中で、両国間の協力をさらに強化していくことを希望しました。
李首相は、中韓関係を重視し、これを持続的に発展させていきたいという中国側の立場に変わりはないとし、両国関係の発展のために韓国側が一緒に努力していくことを希望すると述べました。
尹大統領と李首相は、両国関係が揺るぎない発展をしていくためには、いかなる内外の環境下でも緊密なコミュニケーションを持続していくことが重要であるとの認識を共有しました。
このような観点から、両者は、外交・安全保障対話、1.5トラック対話、外交次官戦略対話など、両国間の外交・安全保障分野のコミュニケーションチャンネルを新設または再開していくことにしました。
経済・通商に関し、両者は、韓中間の経済協力が互いの経済と民生に貢献する重要な原動力であることに共感し、両国間の貿易・投資をさらに活性化するため、2011年以降中断された「韓中投資協力委員会」を13年ぶりに再開することとし、FTA首席代表会議を06月初めに開催し、韓中FTAのフォローアップ交渉の動力を再び生かしていくことにしました。
また両国は、
▵今年下半期に「韓中サプライチェーン協力・調整協議体」の開催、
▵「韓中サプライチェーンホットライン」の随時稼働、
▵「韓中輸出統制対話体」の発足などを通じて、原材料と核心鉱物の需給など安定的なサプライチェーン管理のために協力していくことにしました。
両国は今年下半期に第2回「韓中経済協力交流会」を開催し、両国の企業家と中央・地方政府関係者間の交流と協力も促進していくことにしました。
大統領は、中韓間の航空便と人的交流の規模が回復していることから、今後、両国間の人的交流をさらに活性化させようと述べました。
両者は、麻薬・違法賭博・詐欺(フィッシング)などの超国境犯罪に対応するため、警察機関間の協力を強化し、国民の安全を実質的に促進していくことにする一方、中韓人文交流促進委員会を再稼働し、コロナで中断された両国の青年交流事業を再開することにしました。
面白いのは、韓国が懸念することが全面に表れている点です。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、これまでの左派・進歩系政権とは異なり、アメリカ合衆国よりに舵を切りました。それによって中国からいじめられることを心配しています。
そもそも韓国は「製品輸出で食べている国」(貿易黒字で成立している国)であり、その輸出先の第1位は中国かアメリカ合衆国なのです。
中国との貿易が赤字に転落したからといって貿易をやめるわけにはいきません。その輸出金額ぶん食べている企業・人がいるからです。韓国からの製品輸入をやめる・韓国への資源や中間財の輸出をやめるといった措置を講じられると、先に韓国が干上がってしまいます。
「自由主義陣営国側につくけと見逃してね」という了解を中国から取り付けなければならないのです。
書いているだけでも「無理スジ」な主張ですが、そのために「韓中サプライチェーン協力・調整協議体」を作り、「韓中サプライチェーンホットライン」なるものを随時稼働させ、 「韓中輸出統制対話体」を発足させたいのです。
中国に蹴られたくない韓国、「お金くれ」な中国
また、2011年以降に中断された「韓中投資協力委員会」を13年ぶりに再開し、FTA首席代表会議を06月初めに開催するというのも、中国に蹴られないようにするための方策です。
「韓国必死だな」といったところですが、中国側にも余裕はありません。経済が傾いているからです。
「韓中投資協力委員会」を再開するのも、「……両国間の貿易・投資をさらに活性化するため……」という点に理由があるでしょう。とにかく中国は「お金入れてくれ」なので、韓国に資金投入させたいのです。
韓国企業もバカではないので、実際にお金を入れるとは考え難いのですが、とりあえずは(この会談では)これでいいということなのでしょう。
注目したいのは、とりつかれたように「2トラック」「2トラック」と連呼していた韓国なのに、この文書では「1.5トラック対話体」という見慣れない言葉が登場していることです。
しかし、これはそもそも中国の習近平総書記が尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領に持ちかけた話で、1.5トラック対話体というのは、「政府と共に民間専門家が参加する『反官半民』形態での協議チャンネル」を意味しています。
これが提案されたのは、2022年11月15日に行われた中韓首脳会談でのことでした(G20首脳会議に併せて習近平 – 尹錫悦会談が実現しました)。
中国からすれば、韓国企業を本土に引きずり込むための方策です。「中国に投資します」と言わせたいものと見られます。
かつての宗主国と朝貢国との「化かし合い」みたいになものですが、韓国としては必死です。
(吉田ハンチング@dcp)