韓国の鉄鋼企業が窮地に陥っているのはご紹介してきたとおりです。
韓国最大の製鉄会社『POSCO(ポスコ)』は中国に設立した工場(中国・江蘇省の製鉄所)を売却しましたが、ここにきてトルコに設立した工場を売却しようとしている――という報道が出ました。
しかもトルコメディアの報道です。例えば、以下はトルコメディア『Demir Çelik Store』の記事です。
※『Demir Çelik Store』はトルコの鉄鋼・金属産業向けの業界メディア。運営は『Metal Medya(メタル・メディア)』グループです。

↑スクリーンキャプチャー
『POSCO』がトルコのステンレス冷延会社『POSCO Assan TST』の段階的撤収(売却)を検討している――と報道しています。
3.5億ドル突っ込んだが累計2億ドルの損失!
『POSCO Assan TST』は2011年に『POSCO』とトルコの『Kibar Holding』が約3.5億ドルで設立、年産20万トンのトルコ最大のステンレス冷延工場を有しています。
しかし、2013年の稼働開始から2024年までに累計約2億ドルの損失が出たとトルコ側で伝えられてきました。
3.5億ドルで造って、2億ドルの損失というの洒落になりません。
そんなに儲からないのか――ですが、この背景には毎度おなじみ、イナゴのような中国製品の流入があります。
中国発の供給過剰 ⇒ 低価格製品の流入でトルコ市場の採算が悪化、同社の損失が拡大しているのです。
『POSCO』側は「その件(工場売却・撤退)で協議された事実はない」とコメントしています。
しかし構造不況+再編路線という流れから、『POSCO』が売却・縮小のオプションを持っているのは確かです。
トルコ側では買収意向や政策要求が続くため、売却・共同再編・操業見直しのいずれかになるだろう――というのがコンセンサスなのです。
「構造不況」というのには少し説明が必要でしょう。
トルコで事業やっても儲もうからない
この『POSCO Assan TST』は、輸入したステンレス半製品を冷間圧延する事業が中心で、トルコ業界側も付加価値は最大でも約15%と指摘しています。
つまりもともと利幅の薄い商売。ダンピング価格で流入する中国製品を封じようとして、鉄鋼製品に課す輸入関税を上げれば、同社の巻き沿いを食って利益がさらに減る――という難儀な構造になっているのです。
トルコ国内需要の約70%は依然として輸入に依存しているとされます。
さらにはトルコは通貨がどんどん安くなるヤな国で、ハードカレンシーで半製品を輸入しても、国内価格に換える際に「高くなりがち」です。ダンピング価格で流入する中国製品に勝てる見込みはありません。
トルコに進出したまでは良かったのかもしれませんが、『POSCO』はここでも「どうすんべ」という事態に陥っています。
トルコ側では「売却してくれ」という声が上がっていますので、傷口が拡大する前にさっさと損切りした方がいいのかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)






