『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が、直近のウォン安進行について発言しましたので、ご紹介しておきます。
2025年12月17日、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は報告会の後の記者会見において、
「対外債務の返済負担など、金融危機を懸念する状況ではないが、為替が物価に及ぼす影響は安心できる水準ではない」
「為替が上昇すれば輸出企業は利益を得るが、輸入企業は苦しくなる。
為替上昇によって困難を被る内需企業や自営業者と、為替によって輸出が好調な企業との格差が次第に拡大し、『K字型』成長の二極化が発生し得るという側面では、危機だと見ている」
――と述べました。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「K字型の成長」と語りましたが、これはいつもの「何にでもKを付けるヘンな国」だからではありません。
「K字型成長(K-shaped growth / recovery)」 は――、
同じ時期・同じ経済環境の中で、分野や主体によって「好調なグループ」と「不調なグループ」が同時に拡大し、格差が広がっていく成長パターン
※現実経済を説明するために使われる「実務・政策用語」です。
――のことです。
先にご紹介したとおり、ウォン安は輸入にとって不利です。為替安によってコストが増すからです。これは物価高の要因になりますし、内需に大きな影響を与えます。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁がいう2極化は、
上に伸びる側(Kの上側)
輸出企業(特にドル建て売上)
-半導体
-造船
-自動車
-一部のIT・素材産業
etc.
⇒為替差益が利益を押し上げる
⇒利益拡大
下に沈む側(Kの下側)
内需企業
自営業者
輸入依存の高い企業
-原材料・エネルギー輸入
-食品・小売・サービス業
-輸入コスト上昇 → 利益圧迫
etc.
⇒価格転嫁ができず、実質所得が低下
――とまとめることができます。
面白いのは、以下の発言です。
「通常、年末には海外投資の譲渡所得税控除期限に合わせた利益確定売りが多く、海外株式の純買いが大きく減少するが、今年はその減少幅が小さい」
これまでご紹介してきたとおり、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、ウォン安の進行は「対外投資」が急拡大して、「ウォン売り・ドル買い」が膨れ上がっているのが主要因の一つとしています。
普通は年末になると株式の純買いは減少するのですが、この2025年末は例年どおりになっていません。
韓国投資家のによる海外株式の純買い額
2024年12月01~16日:約10億ドル
2025年12月01~16日:約19億ドル
対前年同期比でほとんど2倍の金額です。つまり、それだけ海外にお金が逃げていっており(海外資産を増やすことでもありますが)、その分ウォン安が進行する――というわけです。
(吉田ハンチング@dcp)





