2023年03月27日、『韓国銀行』が非常に興味深い統計データを出しました。「2022年知識財産権の貿易収支(暫定)」のデータです。
知的財産権についての外国との取引の貿易収支は、通常の商品の貿易と同じように、知的財産権の輸出から輸入を引いて求めます。
つまり、輸入より輸出の方が多ければ、プラスになって外国からお金が入ってきたことになり、輸入が輸出よりも大きければマイナスになって、お金が出ていったことになります。
外国の皆さんがよく使う(消費する)知的財産権を多く持っている国が有利になります。例えば、製造業で使う特許や、韓国の皆さんが誇るK-Popや映画などは知的財産権の取引対象です。
このデータを見ると、韓国の知的財産権の貿易は2022年は赤字でした。以下をご覧ください。『韓国銀行』が公表したエクセルのデータから切り出した、品目 ☓ 国別のクロス集計シートです。
↑黄色でフォーカスしてあるのが、2022年の知的財産権の貿易の総収支。オレンジが国別の総収支です。2022年の韓国の知的財産権の貿易収支
総貿易収支:-13億2,720万ドル●韓国の知的財産権貿易での赤字国 Top10
対アメリカ合衆国:-18億9,610万ドル
対イギリス:-17億2,660万ドル
対オランダ:-9億8,890万ドル
対スウェーデン:-3億7,520万ドル
対日本:-3億6,540万ドル
対ドイツ:-2億9,160万ドル
対フランス:-2億8,610万ドル
対スイス:-1億5,740万ドル
対マレーシア:-1億310万ドル
対デンマーク:-8,740万ドル●韓国の知的財産権貿易での黒字国 Top10
対ベトナム:+17億600万ドル
対中国:+10億3,000万ドル
対シンガポール:+6億3,250万ドル
対インド:+4億8,110万ドル
対スロバキア:+2億930万ドル
対台湾:+2億910万ドル
対香港:+1億3,650万ドル
対タイ:+4,950万ドル
対ブラジル:+4,210万ドル
対ロシア:+4,060万ドル
その他:+5億3,610万ドル⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2022年知識財産権の貿易収支(暫定)」
まず、総収支は「-13億2,720万ドル」で赤字です。
つまり、知的財産権の貿易で、お金が入ってくるよりも出ていくお金の方が多いのです。また、赤字の国と黒字の国では、明らかな傾向が見えます。
当然のことかもしれませんが、韓国は先進国に対しては赤字であり、開発途上国に対しては黒字です。知的財産権の貿易において、先進国にはお金を貢ぐ立場ですが、開発途上国からはお金をかっぱいでいるのです。
「韓流」でもうける話はどうなったのか?
面白いのは、個別の品目がどうなっているかです。
↑黄色でフォーカスしているのが「Publishing, Motion Pictures, Broadcasting, Information and Communications」です。総収支は「-3億9,580万ドル」。⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2022年知識財産権の貿易収支(暫定)」
韓国が自慢する「韓流」なるものは、恐らく「Publishing, Motion Pictures, Broadcasting, Information and Communications(出版、映画、放送、情報通信)」に計上されていると思われるのですが、上掲のとおり赤字です。
『イカゲーム』が誇らしいとか言っていたのはどうなったんだ、という数字なのです。
ただ、これを企業規模のクロスで見ると、謎が解けます。
Large Enterprises(大企業):+16億7,740万ドル
Small and Medium-sized Enterprises(中小企業):-20億9,620万ドル
「Publishing, Motion Pictures, Broadcasting, Information and Communications(出版、映画、放送、情報通信)」においては、大企業はもうけているのですが、中小企業は大赤字なのです。
大企業が扱うコンテンツの知的財産権はお金を稼いでくれる(入ってくる方が大きい)のですが、中小企業においては外国にお金を払う方がはるかに大きいのです。
総体として、「出版、映画、放送、情報通信」ではお金は稼げない、「赤字じゃん!」ということになっています。
韓国は現在、輸出がさっぱりなので、企画財政部の長官が「K-ライフスタイルでコンテンツの輸出が期待できる」などと言っているのですが、この数字を見ると、貿易収支が赤字な以上は頑張っても望み薄なんじゃないのか?と思われないでしょうか。
日本は韓国に黒字を恵んでいる!
これを隠しておくとフェアではないので書きますが、この「Publishing, Motion Pictures, Broadcasting, Information and Communications(出版、映画、放送、情報通信)」と国別のクロス集計のデータを見ると、韓国にこのジャンルでもうけをもたらしているのは、以下の国です。
「出版、映画、放送、情報通信」知的財産権貿易収支が黒字の国
対中国:+15億4300万ドル
対日本:+2億4,390万ドル
対台湾:+2億290万ドル
対香港:+9,420万ドル
韓国は、中国から15億4,300万ドルもかっぱいでいますし、日本からも2億4,390万ドルを稼いでいます。
ただ、2023年は『スラムダンク』など日本の映画が韓国で爆発的ヒットを飛ばしているので、赤字は減少するかもしれません。また、中国が韓国への制裁として「韓流を禁止する」というのも、この数字を見る限り「効く」と考えられます。
最後に付記しておかなければいけないのは、この『韓国銀行』が公表したデータは、国際収支統計における「Balance of charges for the use of intellectual property」(知的財産権等使用料の収支)とはまるで合わないということです。
『韓国銀行』は知的財産権貿易収支としてこのデータを公表し「-13億2,720万ドル」としていますが、これはあくまでもこう集計したら、という話。
同じ『韓国銀行』が公表した国際収支統計における2022年の「Balance of charges for the use of intellectual property」(知的財産権等使用料の収支)は、「-37億5,100万ドル」とはるかに大きな赤字なのですから。
念のために、『韓国銀行』ECOSにあるデータから切り出したものを以下に貼って、この記事を終えます。
↑黄色でフォーカスしたセルが2022年の「Balance of charges for the use of intellectual property」(知的財産権等使用料)です(単位は100万ドル)。「-37億5,100万ドル」です。
⇒データ出典:『韓国銀行』公式サイト「ECOS」
(吉田ハンチング@dcp)