誰もが「一度は映画をつくってみたいなあ」と思うのではないでしょうか。ところが、映画製作とは難しいもので、ヒット作というのはそうそうできるものじゃありません。お金がないとできませんが、お金を掛ければヒット作になるわけではないのです。今回は、お金を掛けたんだけど……という映画をご紹介します。
■映画史に残る大失敗! 『クレオパトラ』
エリザベス・テイラー主演の史劇大作として企画された『クレオパトラ』。今見てもちっとも面白くない大味大作ですが、これぞ映画ファンなら誰もが知っている大ずっこけ映画なのです。ロンドンにセットを組むぞ! と造り始めたら、「ここには入んないや!」でやり直し、など信じられないような失敗を重ねます。
また、脚本がずーっとできなかった、エリザベス・テイラーが恋愛で撮影に来ない、などなどずっこけの連続で、投じたお金はなんと3,111万ドル! 信じられないかもしれませんが、最初の企画段階では予算は「300万ドル」だったのです。
それでも映画が当たれば良かったのですが、興行収入は散々で、製作の20世紀フォックスは製作費の半分ほどしか回収できませんでした。この映画のせいで20世紀フォックスは倒産しそうになったのです。
■シュワルツェネッガーなんですが…… 『ラスト・アクション・ヒーロー』
アーノルド・シュワルツェネッガーといえばカリフォルニア州知事を務める前には、当代一のアクションスターでした。そのキャリアの絶頂期に企画・製作されたのがこの映画です。主演が主演なので破格の予算が組まれました。
突っ込んだ予算はなんと8,500万ドル! NASAの無人ロケットの枠を買って(50万ドルを掛けたといわれます)そこに宣伝を打って打ち上げるなど、ド派手なプロモーションも行いました。でも……ものすごい空振りだったのです(笑)!
■橋を造ればいいじゃない! 『ポンヌフの恋人』
よせばいいのにセットを造って大失敗というのは映画製作でありがちなことですが、この恋愛映画もそのパターンにハマった作品です。そもそもちょっと小粋な恋愛ものという企画だったのですが、舞台となるフランスの「ポンヌフ橋」で撮影ができませんでした(撮影許可の期間が切れちゃったのです)。
どうしたかというと、ポンヌフ橋の4/5スケールの橋を3年間かけて造って撮影したのです。この無駄な製作費のおかげで予算が大幅に拡大し、大変なことになりました(笑)。身の丈に合った製作をしましょう! という教訓を今に残しています。
■機関車を持ってこい! 『天国の門』
「あの家が邪魔だからどかせろ」と黒澤明監督が現場で言ったなんて話があります。映画監督の武勇伝というのは、こういうむちゃで豪気なものですが、この『天国の門』はそれをとことんやった映画です。
マイケル・チミノ監督は、この映画を撮るために西部の町を再現し、ちょっとしか映りゃしないのに当時の機関車を持ってこさせました。しかも監督はリテイクを繰り返します。最終的に突っ込んだ製作費は4,400万ドル。しかも映画の出来は散々で、アメリカでは1週間で興行が打ち切り。興行収入は製作費の10分の1にも満たない約350万ドルで、製作会社のユナイテッド・アーティスツは倒産しました(笑)。これは映画史に残る武勇伝です。
■日本初の本格SF映画のはずだったんだけど 『さよならジュピター』
『スター・ウォーズ』が世界的に大ヒット。日本だって負けちゃいられないというわけで、小松左京先生の企画を映画化したのが本作。日本SF界の才能がブレストに結集し、モーションコントロールカメラを使った撮影など、意欲作だったのですが……。
製作費に6億円ほどが投じられましたが、興行収入はいまいちで、映画の内容も各方面から突っ込みどころ満載な出来でした。一説によりますと、小松先生ご自身もいくばくかの借金を背負うことになったそうです。映画製作は怖いですね。
(高橋モータース@dcp)