韓国の『現代自動車』が電気自動車用の二次電池のセルを自社で開発・調達する――としました。
なぜこのような動きに走ったかというと、中国の電気自動車メーカーに押し負けそうだからです。もっといえば(テスラ上海工場産を含む)中国産の電気自動車に韓国自動車市場が蚕食されるようになっているからです。

電気自動車にとって、価格の大きな部分を車載用バッテリーが占めています。数字はいろいろあるのですが、一般論としては、BEV(バッテリーEV)の車載バッテリーパックは、車両コストのざっくり20~30%程度といわれます。
『IEA』(国際エネルギー機関)の分析では、世界平均で、バッテリーはBEVの推定小売価格の約4分の1を占めるとしています(想定している標準例は、車両価格約3万ドル、バッテリー約75kWhです)。
このような重要なパーツを外部供給に依存しているわけにはいかない――というわけです。読者の皆さまもご存じのとおり、『BYD』はもともと二次電池の研究開発・製造会社ですし、自社の車載用電池は自社開発を誇っています。
代表的な車載電池である「Blade Battery(ブレードバッテリー)」も『BYD』が独自開発したLFP(リン酸鉄リチウム)電池です。
『BYD』はセルだけでなく、ブレードバッテリーの製造ラインや主要生産設備についても自社開発していると説明しています。
『BYD』の創業者である王伝福さんは、2021年04月にブレードバッテリーについて、「不会自燃(自燃しない)」と言いました。
より正確にいえば「ブレードバッテリーは自然発火せず、46トントラックに踏みつぶされた後でも正常に使用できる」と述べたのです。

↑「バッテリーブレードは絶対自然発火せぇへんのや」で有名な『BYD』董事長の王伝福さん。
「象が踏んでも壊れない」みたいな宣伝文句ですが、その割に『BYD』車は燃えているような気がしないでもありませんが……バッテリーが自然発火しないのと、クルマが火事にならないのは違います。バッテリーの自然発火以外の原因で火事になったのでしょう。きっと。
それはともかく、バッテリーセルの価格が急に値上げになったり、何らかの原因で輸入できなくなったりしたら困るので、『現代自動車』も自社開発・調達する方向に舵を切ったのです。
『フォルクスワーゲン』はすでに始めています!
韓国メディア『朝鮮日報』の記事から一部を以下に引きます。
(前略)
『現代自動車』は、従来のハイニッケルバッテリーに比べて出力を2倍以上に高め、充電時間を40%短縮した高性能バッテリーセルを自社開発したと明らかにした。
↑2026年08月26日の『2026 CEO Investor Day』で『現代自動車』は「従来のハイニッケルセルの2倍超の出力、充電時間40%短縮」と公表しました。このバッテリーセルは来年上半期に発売する航続距離延長型電気自動車(EREV)に搭載される。今後、ロボットや次世代モビリティーへと適用範囲が拡大すると見込まれている。
『現代自動車』は昨年04月、製造部門傘下に「Bタスクフォース(TF)」を新設し、バッテリーの自社開発を準備してきた。
中長期的なバッテリー競争力強化に向け、全社レベルの統合業務体系を構築することを目的として、バッテリー(Battery)の英語の頭文字を取ってこの組織を新設した。
『現代自動車』は、バッテリーセルの仕様と構造を自社で設計し、バッテリーメーカーに量産を委託する形で事業を進める計画だ。
こうすれば、技術の主導権を確保してバッテリー供給過程での価格交渉力を高めながらも、大規模な工場新設に伴う投資負担を減らせる利点がある。
これまではバッテリーセル全体を高値で調達してきたが、今後は他の部品と同様に、委託・下請け構造を作るということだ。
(後略)⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「현대차·폴크스바겐 배터리 셀 자체 개발에… 배터리 3사, 하청사로 전락하나 ‘전전긍긍’」
バッテリーセル全体を高値で調達してきた「これまでの動き」をやめて、量産だけを委託する形にしようというのです。
この動きは、実は『現代自動車』の独自のものではなく、ドイツの『フォルクスワーゲン』が先行しています。
『フォルクスワーゲン』は2022年、バッテリーセルを製造する子会社『PowerCo(パワーコ)』を設立。

↑『PowerCo』のザルツギッター・ギガファクトリーの全景。
ドイツ・ザルツギッターのギガファクトリーで2025年12月から、グループ傘下の完成車メーカーが共通して使用するUnified Cell(統一バッテリーセル)の生産を開始しました。
『PowerCo』はザルツギッターを単なる工場所在地ではなく、本社+世界のバッテリーセル事業を統括する拠点と位置付けています。
ここから海外工場の運営、セル技術開発、バリューチェーンの垂直統合、各工場への機械・設備供給などを管理します。ザルツギッター工場の年間生産能力は最大で40GWh、EV約50万台分※とされています。
※第1段階では「最大20GWh/年」で、これは第2段階での目標数値。例の『フォルクスワーゲン』のリストラ計画がこれにも影響するものと見られます。なぜなら過剰生産性を削らないとならないからです。
さらに現在は、スペイン・バレンシアとカナダ・オンタリオ州セント・トーマスにもギガファクトリーを展開しており、3拠点合計で最大200GWhを計画しています。
『フォルクスワーゲン』のことはともかく、『現代自動車』も他メーカーとのコスト競争激化にともなって、コスト削減に必死で、ためにバッテリーセルの自社開発調達に乗り出す――というわけです。
(吉田ハンチング@dcp)





