韓国メディアでは、産業通商資源部のプレスリリースを基に「65年ぶり輸出最高額」「輸出金額を連続更新」などの派手な惹句が目立ちます。
輸出一本で食べている韓国ですから、輸出金額が大きくなるのは大変に良いことです。しかし、最も重要なのは貿易のもうけを示す「貿易収支(輸出 – 輸入)」です。
この貿易収支が十分に大きくないと韓国の経常収支は黒字になりません。以下は2017年01月~2020年08月の経常収支の4つの要素の月次平均金額です。
↑「貿易収支:76.9億ドル」あっても「経常収支:55.9億ドル」になります。つまり、韓国の場合、貿易収支の黒字を「サービス収支」「第1次所得収支」「第2次所得収支」が食う構造になっているのです。
ここのところ「連続で輸出金額の過去最高を更新」などと誇らしげですが、では貿易収支は増えているのか?です。
ちょうど09月が終わり、2021年の第3四半期が終わりました。韓国の産業通商資源部自身が公開しているデータの中に、「輸出・輸入・貿易収支」を2020年・2021年で比較できる資料がありましたので、論より証拠でご紹介します。
⇒参照・引用元:『韓国 産業通商資源部』「2021年9月の輸出入動向」
基データが小さくなってしまって申し訳ありませんが、上掲のとおり、
2020年:160億7,000万ドル
2021年:76億8,100万ドル
76億8,100万ドル減少(-52.2%)
と貿易収支は激減しています。貿易のもうけは半分未満になったのです。
これは、
2020年:1,300億7,400万ドル
2021年:1,645億2,000万ドル
344億4,600万ドル増加(+26.5%)
と確かに輸出は増加しているものの、
2020年:1,140億6,700万ドル
2021年:1,568億3,800万ドル
427億7,100万ドル増加(+37.5%)
と輸入の方が、輸出を上回る勢いで増えたせいです。
韓国にとっては大変に困った状況ですが、ただし、筆者はすぐに韓国の貿易収支が赤字になる(= 経常収支が赤転する)とは考えません。なぜかというと、輸入金額の増大は資源価格の急騰によるところが大きいからです。韓国は資源、中間財を輸入して完成品を製造して輸出する国です。
もうからないとなれば、各企業は完成品の価格を値上げして利益を確保しようとします。(それで価格戦闘力が維持できるかはともかく)そうすれば貿易収支の赤字を免れることが可能です。少なくともその時は。むしろ問題は、韓国企業の利益が薄くなって、体力を失うことになる点ではないでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)