短信ですが、興味深い話ですのでご紹介します。
UAEといえば、原子力発電所(バラカ原発)の建設を依頼するほど韓国と因縁のある国ですが、韓国製武器の購入に踏み切るかもという情報が流れています。
韓国メディアも大いに盛り上がっているのですが、元ネタは以下のUAE国防省のtweetです。
アラブ首長国連邦国防省は、国防能力を質的に向上させるため韓国航空防衛システム(MSAM)を買収する予定であり、取引の価値は約35億米ドル(約129億ディルハム)に達する可能性があると説明しています。
今回、UAEが購入する予定としたのは「天弓2」という地対空迎撃ミサイルおよび運用システムです。韓国メディア『朝鮮日報』の記事によれば、イスラエルと競合して韓国製「天弓2」が選ばれたとなっています。
↑「天弓2」の動画。音量にご注意ください
以下に『朝鮮日報』の記事から一部を引用します。
(前略)
軍消息筋は「世界市場で性能を認められているイスラエル製迎撃ミサイルとの競争で勝利したのは意味が大きい」と話した。UAEへの原発輸出、韓国軍「アーク部隊」の持続的な派兵も今回の決定に肯定的な影響を及ぼしたと伝えられた。
(後略)⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「イスラエル製に勝利、天宮II、UAEに史上最大4兆ウォン分輸出」
日本ではあまり知られていませんが、韓国はUAEに対してUAE特殊部隊の教育訓練、UAE居住国民の保護などを目的に2011年から派兵を行っています(2011年01月から2021年までで18回)。「アーク」はアラブ語の「Akh(兄弟)」に由来する命名です。
2009年には韓国は例の「バラカ原発」を受注。この受注の裏には「UAE有事の際には韓国が軍を派遣する(しかも自動介入)」という密約(秘密軍事協約)を結んでいたことが明らかになっています。格安な上にそのような密約まで結んで受注したわけです。
文在寅政権が成立してから密約の存在が暴露されたのですが、「アーク部隊」の派遣も秘密軍事協約が絡んでいます(だからこそ10年間も撤収せず派兵され続けている)。
しかし、記事内にもあるとおり、それが今回の「天弓2」の受注につながったのであれば、何が幸いするか分からないものです。
「天弓2」について『朝鮮日報』では以下のように説明しています。
(前略)
「韓国型パトリオット」と呼ばれる「天宮II」は、交戦制御所と3次元位相配列レーダー、垂直発射台などで構成され、発射台1基当たり8発のミサイルが搭載されている。最大迎撃高度は15㎞で、パトリオットPAC-3 CRI(最大迎撃高度20㎞)より少し低い。航空機撃墜用天宮Ⅰミサイルの最大射程距離は40キロだ。
天弓IIの最大速度はマッハ5で、長さは4m、重さは400kg、ミサイル1発の価格は約15億ウォン水準だ。
2017年の試験発射で100%の命中率を記録した。
垂直発射台で「コールドロンチ」※方式で発射され、ミサイルが垂直に射出された後、方向を急激にひねって目標物(敵弾道ミサイル)に向かって飛んでいく方式で迎撃する。
ロシアの技術協力で開発され、ロシア製S-350迎撃ミサイルと似ている。
(後略)※データ引用元は同上/コールドローンチというのは発射される弾体のロケットではなく、加圧された気体を送って弾体を射出する方式のこと
韓国は「天弓2は弾道ミサイルの迎撃にも使用できる」としています。本当にUAEが韓国の天弓2を導入するのか、最終契約はこれから。また妙な密約込みの契約でないといいですが。
それにしても「イスラエル製との競合で勝った」というのが本当であれば、実に不思議です。
(吉田ハンチング@dcp)