2022年08月10日、日本の
『DENSO(デンソー)』
『SONY(ソニー)』
『NTT』
『NEC』
『SoftBank(ソフトバンク)』
『KIOXIA(キオクシア)』
『三菱UFJ銀行』
8社が計73億4,600万円を出資して『Rapidus(ラピダス)』という会社を設立しました。
目的は世界的な半導体製造拠点をつくることです。
2022年11月08日、『NEDO』(経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募した「ポスト5G通信システムの基盤強化に関する先端半導体開発委託事業」で同社が採択されました。
この採択によって、『ラピダス』には政府支援の700億円が投入されることが決定。『ラピダス』は、2020年後半には2nm以下の微細工程の半導体を量産できることを目的にしています(以下は経済産業省が出した資料から引用)。
最速で世界に追いつくという意志の表れとして「Rapidus」と名付けられたわけですが、経済産業省は同社のことを「次世代半導体の量産製造拠点を目指すため、国内トップ技術者が集結し、主要企業からの賛同を得て設立された事業会社」と説明しています。
危機感を表明する韓国
この日本の動きについて、危機感を表明しているのが韓国です。韓国にはメモリー半導体で世界的なシェアを持つ『サムスン電子』、『SKハイニックス』がありますが、製造技術については台湾に水を開けられつつあります。
また、韓国は(まだまだながら)中国の追い上げも気にしなければなりません。もっとも、中国の半導体産業はアメリカ合衆国の締め付け強化によって崖っぷちに直面しており、韓国にはまだ少しの時間的余裕が与えられそうですが。
『ラピダス』について韓国メディアの報道を見てみましょう。『メトロ新聞』の記事から一部を以下に引用します。
(前略)
特に『ラピダス』は、次世代工程である線幅2ナノ以下までも念頭に置く方針だ。グローバルに日本技術者を結集するという構想も明らかにした。
『サムスン電子』が2027年に1.8ナノレベルの量産を宣言した状況で、『ラピダス』が計画どおりになるなら半導体業界で一気に最高レベルの工程を備えることになるわけだ。
(中略)
日本の半導体産業技術力は世界最高水準だ。
半導体機器業界で3位圏の『東京エレクトロン』があり、シリコンウエハも『信越化学』と『SUMCO』が半分以上シェアを占めている。素材部門でも日本企業が最高水準の品質を誇る。
微細工程の必需品であるEUVに取って代わることが期待されるナノインプリントリソグラフィー(NIL)装置も日本の『キヤノン』が開発中だ。
日本の半導体技術が力を合わせれば十分に半導体強国に発展する力量を備えているという話だ。
(中略)
そのため業界でも『ラピダス』を注視する雰囲気だ。
日本がかつて全世界最高の半導体強国だっただけに、再びその座を取り戻そうとすれば、韓国半導体産業には脅威となる可能性があるからだ。
特に韓国は半導体特別法すら保留され投資も萎縮しているだけに、半導体強国の立場を守れるのかという危機感はさらに大きくなる見通しだ。
(後略)
『メトロ新聞』は同記事内で「一方、懐疑的な視点もある。半導体の量産は技術力だけで始めるのは難しい分野だからだ。すでに半導体チキンゲームなどで主導権を失った状況で、『キオクシア』も着実にシェアを奪われる姿だ」と否定的な見方も紹介しています。
「半導体チキンゲーム」というのは、かつて日本企業がさらされた、韓国・台湾との安値叩き合い競争のことです。
韓国の半導体関連記事には、この「半導体チキンゲーム」という言葉がしばしば登場します。韓国企業は、「かつてのチキンゲームを勝ち抜いた」という自負心を強く抱いているのです。
『朝鮮日報』では『ラピダス』のことを報じた記事末に以下のように書いています。
(前略)
しかし、5年内に2ナノ未満の回路線幅の半導体量産が実際に可能かどうかは未知数だ。『サムスン電子』と『TSMC』など世界トップ企業とほぼ同じロードマップを提示しているからだ。
現在、サムスン電子も4~5ナノ回路線幅の半導体量産で歩留まり悪く、苦戦している状況だ。
『ラピダス』は「10年の遅れを5年で取り戻してみせる」という野心的な挑戦です。
できれば既存の企業を一気に蹴散らすモンスターのような圧倒的な力を備えてほしいものです。
日米半導体協定などによって傷つき、深海に潜らざるを得なくなったリヴァイアサンが再浮上しようというのです。その雄姿をぜひ見たいものです。
(吉田ハンチング@dcp)