「中韓通貨スワップ」で貿易支援。でも「やっぱりドル!」お互いの通貨を信用してはいない

広告
おススメ記事

中央銀行同士の通貨スワップ協定は、別に通貨危機がなくても使用されるという件をご紹介します。主に貿易促進(自国通貨決済促進)のためのもので、韓国の場合には、中国(インドネシア・UAE)との通貨スワップがこれに当たるでしょう。

先の記事と同様に、『韓国銀行』国際協力局金融協力チームのチャン・ジュニョン次長の説明から以下に引用します。

(前略)
中国との通貨スワップを活用して、中韓両国が貿易をする際にウォンや人民元で決済することを支援しています。

韓国は外国為替市場の発展、ウォン活用の向上のために、中国は人民元の国際化、または貿易時人民元使用拡大のためにです。

このように両国の理解が一致したため、『韓国銀行』と『中国人民銀行』は中韓通貨スワップ貿易決済支援制度を設けて運営しています。

その構造を説明しましょう。

少し複雑ですが、大きな流れを中心に簡単にお話しします。韓国の輸入業者が中国から商品を輸入する際、人民元が必要な場合があります。この時、輸入業者が市中銀行に貸し出しを申請すると、市中銀行からこれを受け取った『韓国銀行』が『中国人民銀行』との通貨スワップ資金で輸入代金を支援します。輸入業者はこの資金を使って商品を輸入し、満期日に返済すればいいのです。

実際の企業の立場からすると、普段の貿易資金には内部資金を充てることができますし、また市中銀行を通じても調達が可能です。特に中韓通貨スワップ資金の貿易決済制度を活用する必要はありません。

自分にとって楽な有利な経路を通じて資金を調達すれば良いのです。

しかし、危機が発生した場合、これらの経路を通じた資金調達がどうなるのか分かりません。金利は非常に高くなるかもしれませんし、金利は別にして融資自体が難しくなることもあります。このような危機時にも作動する中央銀行通貨スワップ資金は両国間貿易の支えになるのです。

このように、中韓通貨スワップは、中韓貿易時のウォン、人民元決済の割合が大きくなる裏付けとなりました。

2013年両国貿易決済で両国通貨が占める割合は2.7%しかなかったのですが、2019年にはその割合が8.7%まで上昇しました。

現在、貿易取引はドルが主になっており、ウォンや人民元を活用した決済は急速には増えていないのですが、2010年代初頭の1%より少し上といった水準と比べれば改善されています。
(後略)

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「中央銀行通貨スワップの理解」

『韓国銀行』自身が説明しているとおり、『中国人民銀行』との思惑が一致したので、中韓の通貨スワップは両国の貿易促進のために使われているのです。

中韓貿易は、読者の皆さまもご存じのとおり、韓国側がもうける構造になっています。中国に何かあっても、チャン次長の説明の反対の流れを中国企業がしてくれれば、輸出企業は取りっぱぐれません。とりあえず相互主義が守られる限りにおいて、安全弁の役割は果たしてくれるでしょう。

中国側からすれば、人民元の国際化に一役買ってもらいたいところでしょうが、そうはいかないのが現実です。

中国企業は「ドルで払ってもらいたい」としており、韓国企業も「ドルで払ってくれ」なので、実際には中国・韓国の貿易での決済はドルがほとんどなのです。

以下は『韓国銀行』が公表した「2020年決済通貨別輸出入」です。

韓国の対中「輸出」決済通貨
ドル:87.7%
ユーロ:0.4%
円:1.1%
ウォン:3.3%
人民元:7.4%
その他:0.1%
韓国の対中「輸入」決済通貨
ドル:88.9%
ユーロ:1.0%
円:0.8%
ウォン:2.7%
人民元:6.4%
その他:0.1%

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2020年決済通貨別輸出入」

ご覧のとおり、中国 - 韓国の貿易で使われている通貨は89%、ほぼ9割はドルなのです。

お互いに相手の通貨をほとんど信用してはいない――ということでしょう。

(吉田ハンチング@dcp)

広告
タイトルとURLをコピーしました