韓国の家計負債の異常な増加は国内外から問題視されています。
時に韓国内では死神と呼ばれる『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)、『OECD』(Organisation for Economic Co-operation and Developmentの略:経済協力開発機構)、ラスボス『BIS』(Bank for International Settlementsの略:国際決済銀行)のみならず、世界的信用格付け会社3社からもです。
韓国政府、『韓国銀行』としてはなんとしても家計負債の増加を食い止めなければなりません。さもなければ、南欧型の経済危機を迎えないとも限らないからです。
韓国の金融行政の司令塔である金融委員会は、家計負債の増加を阻むために2021年から融資制限をかけてきました。その効果が現れ出したようです。
家計ローンの残高は減少が顕著になった
2022年02月10日、『韓国銀行』が「2022年1月中の金融市場の動向」を公表しました。まず、以下をご覧ください。
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2022年1月中の金融市場の動向」
2021年12月は「-0.2兆ウォン」(約-192億円)、2022年01月は「-0.4兆ウォン」(約-384億円)とローン残高の減少が顕著になっています。
家計ローンは需要が安定してあるので、マイナスになることは普通見られません。上掲のとおり住宅担保ローンについては「2021年12月:2.0兆ウォン」「2022年01月:2.2兆ウォン」と増加しております。
ところが、その他ローンの方は「2021年12月:-2.2兆ウォン」「2022年01月:-2.6兆ウォン」と大きく減少を見せました。
つまり、それだけ当局の融資規制が厳しいものだったことを物語っています。
ちなみに、銀行家計ローン(住宅担保ローン・その他ローンの合計)がこのように2カ月連続で減少を見せたのは、統計を取り出した2004年以来初のこと。いかに金融当局が必死にブレーキを踏んだのかが分かります。
企業向けの融資が13.3兆も増えた!
もう一つ、今回公表されたデータからは興味深いことが分かります。以下をご覧ください。
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2022年1月中の金融市場の動向」
韓国企業は銀行からの借り入れを「13.3兆ウォン」(約1.28兆円)も増やしています。上掲のとおり増やしているのは中小企業で、01月だけで「9.2兆ウォン」(約8,800億円)の増加です。
銀行から借り入れた資金が投資に回るのであればいいのですが、これが単に「経営が傾いているので資金が要る」のなら大問題です。
また、興味深いことに01月だけで株式発行が「13.0兆ウォン」(約1.25兆円)に達しています。上掲のとおり、2020年通期での株式発行は「11.0兆ウォン」(約1.06兆円)ですから、2022年01月だけでそれを上回っています。
例の『LGエネルギーソリューション』のIPO(新規株式公開)が入っていますので当然でしょうが、韓国では株価が下落局面となり、IPOを延期するという動きも出ています。これらの企業はIPOが無理なら別の資金調達手段を考えなければなりません。それによって企業負債が増加する可能性はあります。
――というわけで、家計の方の銀行からの借り入れが減少しているのが現れていますが、企業の借り入れが増加しています。政府・企業・家計の3部門のうち、まだまともなのは企業負債のみですが、これが増加する兆しが現れているかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)