日本ではあまり報じられませんが、韓国では「労働時間を短縮する」方向で動いています。
そもそも韓国大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんが「労働時間短縮」論者で、ポピュリストの権化であるこの人らしい話ですが、要するに労働組合に阿った政策なわけです。
2026年現在、単なるスローガンではなく、韓国政府が予算を投入して企業に労働時間短縮を促す段階まで進んでいます。
李在明(イ・ジェミョン)政権の基本方針は、単純に「法定労働時間を一気に週40時間から36時間へ変更する」というものではありません。
まず「実労働時間」を減らすことを優先し、
-「週4.5日制」などの導入
-賃金を減らさず労働時間を短縮した企業への助成
-包括賃金制の原則禁止などによる「サービス残業」の抑制
-年次有給休暇の取得促進
-長時間労働の多い交代制勤務の見直し
-将来的な法定労働時間そのものの短縮
――を組み合わせる構想です。
雇用労働部自身が政策名を「週4.5日制など実労働時間短縮および包括賃金制禁止」としています。
特に面白いのが、2026年から始まった「워라밸 + 4.5 프로젝트(ワーク・ライフ・バランス+4.5プロジェクト)」です。
労使合意によって賃金を減らさず週4.5日制などを導入した企業に対し、政府が労働者1人当たり年間最大720万ウォンを支援。
さらに新規雇用を増やした場合には1人当たり年間最大960万ウォンを追加支援します。
2026年度の実労働時間短縮関連の政府支援事業全体は9,363億ウォン規模です。
「週4.5日制」といっても方式は一つではありません。
実際の参加企業では、金曜午後を休みにする、隔週で特定曜日を休みにする、週38時間にする、毎日1時間ずつ短縮して週35時間にするなど、かなり自由な方式が採られています。
06月末には224社が参加し、政府の年間目標220社を半年で超えました。7月末には293社まで増えています。
ここで重要なのは、「韓国がすでに全国一律の週4.5日制になった」という話ではないことです。
現在は政府補助による自主導入・実証・普及の段階です。法定労働時間そのものの短縮について、政府は「社会的対話を通じて進める」としています。
李在明(イ・ジェミョン)さんの政権が掲げている最終的な数値目標はかなり明確です。
大統領選時から、2030年までに韓国の年間労働時間をOECD平均以下へ引き下げることを公約としており、週4.5日制を段階的に普及させ、その先には「週4日制」も視野に入れています。
そもそも韓国の労働時間はそんなに長いのか?
確認しなければならないのは、そもそも韓国の労働時間は「そんなに長いのか?」です。
『OECD』(Organisation for Economic Co-operation and Developmentの略:経済協力開発機構)のデータを基に2025年の各国の労働時間を比較すると以下のようになります。

韓国政府の国内統計でもほぼ同じ傾向です。
雇用労働部の「事業体労働力調査」では、2025年の労働者1人当たり月平均労働時間は153.8時間。年間換算で1,846時間となり、2024年より13.2時間減りました。
『OECD』の1,833時間と韓国政府の1,846時間が13時間ずれているのは、調査対象・算定方法などが異なるためです。「どちらかが間違っている」という話ではありません。
韓国の労働時間は依然として長いです。しかし昔ほど突出してはいません。
2024年で見ると韓国は1,865時間で、『OECD』平均1,736時間より129時間長かったのですが、過去10年間で韓国は「2,075時間 ⇒ 1,865時間」と210時間も減少しています。
同期間の減少幅は『OECD』平均52時間、合衆国34時間、日本112時間でした。『中小ベンチャー企業研究院』も、韓国の減少幅が非常に大きいことを指摘しています。
そして2025年にはさらに1,833時間まで下がりました。
ですから「韓国 1,833 vs 合衆国 1,800」になります。
差は年間33時間。週換算すれば「33 ÷ 52 = 約38分/週」に過ぎません。
一方、「韓国 1,833 vs 日本 1,598 = 235時間」なので、日韓の差は依然かなり大きいですね。
ドイツとの差501時間は極端に大きく見えますが、ここにはパートタイム労働者の割合など労働市場構造の違いが大きく効いています。
『OECD』自身、「年間平均労働時間の国際差には労働市場の構造や測定方法の違いが含まれる」と明確に注意しています。
したがって、これをそのまま「韓国人はドイツ人より37.6%も長く働かされている」と読むのは危険ですし、恐らく労働実態からは乖離した認識になるでしょう。
李昌鏞『韓国銀行』前総裁が論文を公開!
この週4.5時間実働制度の導入に対して、『韓国銀行』の前総裁である李昌鏞(イ・チャンヨン)さんが批判の論文を公開しました。

Money1でもご紹介したとおり、李昌鏞(イ・チャンヨン)さんは現在『ソウル大学』で名誉教授となっています。異例なことに、『韓国銀行』総裁を退任したのに、『韓国銀行』チームと研究を続けているのです。
Money1でもご紹介したことがありますが、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「『韓国銀行』こそ良きシンクタンクであれ」と部下・行員を叱咤激励しました。
結果、『韓国銀行』から出る論文の質は確かに向上したように見えます。Money1でもよくネタにさせていただきました。李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁率いる『韓国銀行』には感謝しかありません。
李昌鏞(イ・チャンヨン)さんは「はは、オレばか嫌い」という風な方ですが、政権に阿った発言、非合理的な発言などは一切せず、韓国経済をうまく回すために求められる言動をとり続けました。
その意味では、非常に信用できる方で、韓国にはもったいないほどの中央銀行総裁でした。
もう何度だって言いますが、あのロクでもないことしかしなかった文在寅の「唯一の功績」は、『韓国銀行』の総裁に李昌鏞(イ・チャンヨン)さんを指名したことといっても過言ではありません。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は象牙の塔に戻ったわけですが、韓国政府が進めている政策に科学のメスを入れる――という研究は非常に良いことです。
大学教授というのは「Publish or perish(論文を書け、さもなくば滅びよ)」です。論文を書かないで毎日YouTubeに動画を上げている大学教授など信用できません。
労働時間を短縮しても韓国経済を棄損する恐れがある!
『朝鮮日報』の記事から以下一部を引きます。
李昌鏞(イ・チャンヨン)前韓国銀行総裁が、退任後初となる研究成果を06日に発表した。
韓銀の研究陣とともに、韓銀で主導してきた「構造改革シリーズ」を引き継ぐ報告書「労働時間制度、どう変えるべきか?」を発表した。
最初のテーマは韓国の労働時間制度で、硬直的な週52時間勤務上限制(52時間制)および労働界が要求する週4.5日勤務制は、生産性向上の助けにはならないとの見解を盛り込んだ。
研究者に復帰した李前総裁は、52時間制に代表される韓国の硬直的な労働時間制度を最初の「標的」とした。研究チームの分析結果によると、週52時間制導入後、全体として見れば、時間外労働が減少し、賃金は維持されるなどの効果があった。しかし、労働条件による差が大きかった。
働く時間が減るとともに所得まで減少するという副作用は、低所得層にのみ集中的に現れた。
所得下位20%の労働者は、時間外労働時間と時間外給与がそれぞれ16%ずつ減少し、その結果、総給与が1.3%減少した。
高所得層では給与がむしろ小幅に増加した。
研究チームは「高所得層は時間外勤務への依存度が低いため、定額給与や手当などを通じて十分な賃金補填が行われたものとみられる」とした。
労働組合への加入の有無によっても影響が分かれた。労組加入者の賃金は補填された一方、労組未加入者の賃金は52時間制導入後に減少した。労働市場の「弱い環」に52時間制の副作用が集中したという意味だ。
期待されていた生産性向上効果がなかったことは、さらに大きな問題として指摘された。
労働時間短縮の前提は、適度に休み、効率的に働けば、あまりに長時間働く場合よりも生産性が上昇するだろうというものだ。
実際、2002年以降、週5.5日制から5日制へ段階的に移行したことで、1人当たりの生産性が高まったことが過去の研究で実証されている。
しかし研究陣が52時間制導入後について分析したところ、生産性の伸びはむしろ鈍化していた。研究陣は「こうした違いは、過去に週5日勤務制が導入された当時とは異なり、現在の韓国の労働時間が非合理的に過度な水準ではないことを示唆する」とし、「労働時間短縮による生産性向上効果を期待することは難しいとも解釈できる」とした。
成果給の割合が高い企業では、52時間制がむしろ生産性を押し下げたと分析された。
(後略)
この研究論文は非常に興味深いもので、韓国のドメスティックな労働環境におけるものですが、日本にも示唆を与える内容といえます。
研究の結論をまとめるなら、「韓国の労働時間をこれ以上、一律に法律で短縮することには慎重であるべきだ」というものです。
週52時間制を実証分析すると、時間外労働は減ったものの、期待された生産性向上は確認されず、むしろ生産性の伸びが鈍化しました。
特に成果給の割合が高い企業ほど生産性への悪影響が大きかったとしています。
さらに副作用は均等ではありません。
52時間制導入後、所得下位20%では時間外労働が15.5%、時間外給与が15.9%減り、総給与も1.3%減少しました。
一方、高所得層への影響は小さく、最上位20%の総給与はむしろ1.1%増加しました。つまり一律の時間規制は、残業収入への依存度が高い低所得労働者ほど打撃を受けやすい、という分析です。
要するに、現在の李在明(イ・ジェミョン)さんの政権が進めている「労働時間短縮」の方向は生産性を高めはしないし、低所得層をより困窮に追いやる可能性がある――というわけです。
経済的無知蒙昧な李在明(イ・ジェミョン)さんを大統領のママにしておくとダメですよ。文在寅と同じで韓国経済にダメージを与えます。
(吉田ハンチング@dcp)




