2023年04月04日、韓国の企画財政部が国務会議で「2022会計年度国家決算報告書」を開陳し、審議・議決されました。
以下は企画財政部が出したプレスリリースですが、これがなかなか興味深い内容です。
韓国がドボン騒動を再び起こすのではないか、と注目している向きからすれば、負債が気になるとことです。以下をご覧ください。
中央政府と地方政府の負債を足した政府負債(= D1)は計「1,067.7兆ウォン」で、対前年比で97.0兆ウォン増加し、対GDP比は「49.6%」まできました。
「国庫債(= 国債)」「国民住宅債券」「外国為替平衡基金債」を足した国債による債務は計「1,031.5兆ウォン」。
文在寅大統領が「政府負債は対GDP比40%までというのは誰が決めたんだ」と言い、これまで(暗黙の了解として)40%に抑えられてきた政府負債はついに約50%まできたわけです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権ではこれをなんとか抑えようとしていますが、膨れ上がった支出を抑制するのは容易なことではありません。足りない分は、国債発行で補うしかないのです。
MMT的な視点に立てば、いけるところまで(インフレが亢進しないように)国債発行で突き進めば、いい経済的な実験になるはずだったのですが、ここでブレーキがかかるのは惜しいことです。
面白いのは、政府資産が減少したことです。以下をご覧ください。
韓国政府の総資産は「2,836.3兆ウォン」となっています。
上掲のとおり、「流動・投資資産」が「1,662.9兆ウォン」と2021年比で「70.8兆ウォン」も減少しています。
韓国政府の資産がYoYで減少したのは、史上初のことです(財務決算報告が導入された2011以来で初)。
なぜ減少したのかというと、これは国民年金が資金を投入している流動資産(株式や債券)の価値が2022年に大幅に下がったのが主要因と推定されます。
では、政府の総負債がどうなっているのかというと、以下です。
韓国政府の総負債は「2,326.2兆ウォン」となっています。韓国のGDPを超えており、2021年から130.9兆ウォンも増加しました。
ただし、これは年金引当金などの将来に支払うことになる「非確定債務」を足しこんだ金額です。国民年金、公務員・軍人年金などの将来の出金を現在価値に見込んで足していますので、これはあくまでも現在換算でこう推計されるというもの※。
※だからといって無視し、これを除いて債務を見ましょう――にはなりません。将来支払わなければならないことに変わりないからです。年金財政が危うくなっている状況ですので、この負債は拡大する可能性の方が高いのです。
注目したいのは、確定債務が「2021年:818.2兆ウォン」から「2022年:907.4兆ウォン」と、89.2兆ウォン(10.9%)も増加しているのです。
総じていえば、韓国政府の負債は拡大を続けており、「異常なほど早い」といわれた負債の増加速度に歯止めがかかったわけではありません。
D1だけ見ても、「2021年:970.7兆ウォン」から「2022年:1,067.7兆ウォン」に、「10.0%」の負債が増加しているのですから。
(吉田ハンチング@dcp)