風が吹けば桶屋が儲かるみたいな話で、ピタゴラスイッチ的に韓国の精油会社が枯死しそうになっています。
事の発端は、ロシアが不法に始めたウクライナ侵攻です。
ウクライナ戦争によって、ロシアは資源大国であるにもかかわらず、石油やLNGなどを自由主義陣営国に売るのが難しくなりました。そこで、登場するのがインドや中国です。
ロシアが困っているのをチャンスとばかりに安い石油を購入しています※。自国内で消費するだけではなく、精製して石油製品をつくり外国にも販売しているのです。
元が安く購入したものなので、製品も安くできます。韓国の精油会社はこれの煽りを食っているのです。どのくらい困ってるかというと……直近の産業通商資源部のデータを見ると以下のようになります。
韓国というと、半導体ばかりが注目される傾向にありますが、上掲のとおり直近2023年06月時点で「石油製品」の輸出は対前年同期比で「40.9%」も減少しています。
2022年と比較して約6割まで輸出金額が下落したわけです。韓国にとって石油製品は重要な輸出品目なのですが、非常に低迷しているのです。
韓国石油精製会社は2022年の上半期までは良かったのです。原油価格が高騰したので、精油会社のもうけの源泉である精製マージンも上がったからです。
ところが、下半期には状況が一変。原油価格の下落とロシア産安値原油の影響が直撃したのです。
2023年の第2四半期には精製マージンが「4.1ドル」まで下がりました(シンガポール)。ずいぶん前にご紹介したことがありますが、韓国の精製会社の損益分岐点は精製マージン4ドル前後とされています。
つまり、もうアップアップなのです。
ロシア産の原油が使えればいいのですが、そうもいきません。大変冷たいことに、韓国の証券会社は自国の精製会社の営業利益が80%減少する、と冷酷な予測を出しています。
あまりにも業績が悪化しているので、例えば『LG化学』は麗水にあるNCC(ナフサ分解設備)の二つの工場を04月から稼働していません。
また、上掲のとおりプラスチックなどをつくる石油化学会社も同様の直撃を受けています。上掲のとおり、産業通商資源部の資料でも対前年同期で「石油化学」の輸出は「22.0%」も減少しています。
韓国にとってまずいのは、中国がロシア産の安い原油を仕入れて石油化学製品をつくり、これを輸出していることです。これまで中国は韓国のいいお得意さまだったのですが、お得意さまどころか、ライバルとして韓国にたちはだかる構造となっています。
『朝鮮日報』は、この危機について以下のようにまとめています。
(前略)
業界関係者は「これまで石化業況は不景気が過ぎると好況期が来るサイクルがあったが、今や汎用製品はこれ以上未来がないという悲観論が膨らんでいる」とし「各社が生存のためにバッテリー素材、バイオといった新事業を探している」と語った。
――というわけで、ウクライナ戦争が韓国の精油会社に思わぬ危機をもたらしています。
これも「自由主義陣営国 vs インチキな民主国家」の間にはさまれた悲劇の一つといえるかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)