先にご紹介した「日本-トルコ通貨スワップ」についてです(トルコの求めているのはFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)いうところのスワップラインだと思われますが)。
2020年05月21日(木)、「バシャクシェヒル都市病院」(バシャクシェヒル・マツ・サクラ都市病院)の開院式典が、エルドアン大統領臨席の下、行われました。
トルコ最大のインターネット新聞とされる『Habertürk』の記事では、このセレモニーで「日本・トルコ通貨スワップ」の締結が発表されるのでは?となっていました。
そこでリアルタイムライブ配信映像をかぶりつきで見ていたのですが、安倍首相は確かにライブビデオで式典に参加したのですが、「日本・トルコ通貨スワップ」が発表され……ませんでした。
安倍首相は、この式典への出席を依頼されたのですが、この新型コロナウイルス騒動で現地に行けない非礼についておわびをし「離れていても、私の心はエルドアン大統領、トルコ国民の皆さんと共にある」と述べました。
↑建設中の「バシャクシェヒル都市病院」。森を切り開いて造られた巨大病院。2万3,600人の患者に対応できるとされる。
⇒引用元:『ronesans.com』
この「バシャクシェヒル都市病院」は、日本の双日株式会社の協力で建設されたトルコ一の規模を誇る総合病院で、上掲写真のような偉容を誇っています。
調べてみると「巨大な病院」を造り、トルコの医療体制を拡充するというのがエルドアン大統領の構想だったそうで、日本がそれを支援したわけです。
で、祝辞と共に安倍首相は医療機材の協力・緊急支援物資の提供などと共に「アビガンの無償供与を行う」旨を述べました。
ついで経済協力について触れたのですが……。
安倍首相は「円借款など」と含みは残した
「通貨スワップ」にこそ言及しませんでしたが、経済協力についても触れ、「円借款など」で支援を行う用意があると述べています。さらに「……状況が落ち着き次第、二国間関係の強化に向けて協力していきたい」と含みを残しました。
というわけで、『Habertürk』の記事は「飛ばし」とまではいかなくても非常にフライングした記事であったと思われます。
『Reuters』の報道どおり、恐らく「スワップラインを締結してほしい」という要請が日本政府にあったのでしょう。しかし、日本はアメリカ合衆国との関係もあってイエスとは言いにくい立場です。
以前にご紹介したこともありますが、合衆国のトランプ大統領とトルコのエルドアン大統領はもめています。実際、FED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)はトルコ中央銀行とのドル流動性スワップを締結してはいません。日本が独自にスワップラインを締結するとはいいにくい状況です。「円借款とか、他の支援方法じゃダメなの?」といった対応をしているというのが本当のところではないでしょうか?
とりあえず「日本とトルコのスワップライン」については05月21日に発表はされませんでした。だからといって、韓国と締結しても恐らくトルコの役には立たないと思われますが。
⇒参照・引用元:『Takvim』「エルドアン大統領と安倍晋三氏の参加により、バシャクシェヒル・マツ・サクラ都市病院が開院」(原文・トルコ語/筆者(バカ)意訳)
Photo(C)『Takvim』
(柏ケミカル@dcp)