WTO(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)事務局長選挙ですが、アメリカ合衆国通商代表部(UTSR)が声明を出し、「ナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ候補を支持できない」旨を明確にしました。
ヌゴジ・オコンジョイウェアラ候補と韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)候補の得票数では大きな開きがあります。オコンジョイウェアラ候補は参加国164カ国のうち「104票」を獲得したとされています。
しかし、事務局長選挙は全会一致が決まりですので、合衆国が反対を表明し続ける限り、新しい事務局長は永遠に決まりません。
韓国メディアでは「合衆国が韓国を支持している」「まだ逆転の芽はあるぞ」などと喜びの声が上がっていますが……率直なところ、合衆国が反対している本当の理由は「事務局長を選出させないことでWTOを骨抜きにしたいから」だと思われます。
ずっと以前にご紹介したとおり、合衆国が上級委員の再任・指名を拒否し続けたため、WTOは紛争解決のための二審制を維持できなくなっています。これは現トランプ政権がWTOを不公正な組織として名指して非難し、瓦解させようとしているためです。
今回の事務局長選挙での事実上の拒否権発動も、特にオコンジョイウェアラさんは絶対だめ、兪さんでないとだめ、などというわけではなく、WTOを機能停止に追い込むために行っている、という文脈で見た方がよいのではないでしょうか。
トランプ大統領が再選されれば、このWTO機能停止作戦は継続されるので、このままずっと新事務局長が決まらないという状態が続くでしょう。
だからこそWTOは次の一般理事会を合衆国大統領選後の「11月09日」としたわけです。
(松田ステンレス@dcp)