2021年01月21日、韓国メディア『韓国経済』に「日本の貿易黒字は韓国のおかげだ」と主張する記事が出ました。
記事からその主張の部分を引用します。
(前略)
輸出の減少にもかかわらず、日本が昨年の貿易黒字を出すことができたのは、韓国との交易で黒字幅が増えたためだ。昨年、韓国の輸出は5.5%減の4兆7,662億円、輸入は12.1%減の2兆8,378億円と1兆9,284億円の黒字を出した。
対韓国の貿易黒字が1年間で6.2%増加した。
韓国はアメリカ合衆国に続いて日本の2大貿易黒字国であった。
日本の対米貿易黒字は5兆1,859億円で21.6%減少した。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国経済』「韓国のおかげで…日本、輸出急減も3年ぶりに「貿易黒字」[ジョン・ウンヒョの日本産業の分析]」
まず、赤いアンダーラインのところがミスリードです。財務省貿易統計の当該資料によれば、日本の貿易黒字国Top5とその金額は以下のようになります。
香港:3兆3,295億9,300万円(対前年比:-3.2%)
韓国:1兆9,284億7,500万円(対前年比:6.1%)
台湾:1兆8,827億9,300万円(対前年比:6.9%)
シンガポール:9,759億7,700万円(対前年比:-27.6%)
第2位は「香港」なので、同記事の主張は「香港は国じゃない。国でいえば合衆国と韓国が2トップ」と言っているのです。
さらに、上掲のとおり対台湾の黒字も増加しており、しかも対韓国の「6.2%」よりも大きく増えた「6.9%」です。黒字金額も韓国と台湾で「1兆9,284億7,500万円」「1兆8,827億9,300万円」と大して変わりません。
これでなぜ日本の貿易黒字は韓国のおかげと断言できるのでしょうか。
以下が2020年の日本の輸出入の金額です。
輸出額:68兆4,066億8,800万円(対前年比:-11.1%)
輸入額:67兆7,319億5,500万円(対前年比:-13.8%)
輸出 – 輸入:6,747億3,300万円
⇒参照・引用元:『財務省貿易統計』公式サイト「令和2年分(速報)」
この日本の貿易黒字は3年ぶりのことですが、黒字になった原因は輸入が13.8%も減少したのに輸出が11.1%しか減少しなかったためです。つまり、あまり言いたくはないですが「不況型黒字」の兆候を示しているわけです。
対韓国のデータは以下になります。
輸出;4兆7,662億3,300万円(対前年比:-5.5%)
輸入:2兆8,377億5,800万円(対前年比:-12.1%)
輸出 – 輸入:1兆9,284億7,500万円(対前年比:6.2%)
これは、韓国は不景気だろうが日本から輸入しなければならない必須のものがあり、逆に日本は韓国からの輸入に頼っているものがほとんどないためだと考えられます。
不景気なときは不要不急なものは買いませんからね。
韓国から買わなければいけないものがないので輸入が大幅減少。しかし輸出はさほど減らなかった――そのために対韓国の黒字はむしろ拡大したのです。
以下を見てください。2020年に日本が輸出を減らした(対前年比で輸出がマイナスになった)国Top5と減少の割合です。
大韓民国:-5.5%
香港:-6.8%%
マレーシア:-7.3%
オランダ:-10.4%
韓国は2位です。コロナ禍で不景気だというのに、韓国は日本からの輸入がほとんど減らなかった国といっていいのです。つまり、それだけ日本からの輸入に頼っているというわけです。
ですから、2020年の日本の貿易黒字は韓国のおかげなどと断言できません。また、今回の財務省のデータは韓国がいかに日本に依存した国であるかを示しています。
(柏ケミカル@dcp)