韓国政府の態度が非常にいきあたりばったりだ、と韓国メディア『毎日経済』が報じています。なんの話かというと、Money1でも少しご紹介したことのある「個人投資用国債」の件です。
非常にお得な個人投資用国債だったが……
これは、2021年03月ごろから政府が発行を検討していると話題になったもので、個人の投資用に特に優遇した国債を発行しようと推進してきました。10年物で追加金利30%、20年物で追加金利60%をオンしようという大盤振る舞いで、また利子所得税(15.3%)を減免しよう――という非常に期待させるものでした。
が、この年内発行は見送りになりました。
これが発行された場合現在の国債市場に混乱を生まないか、税制に歪みが生じないかなどの検討が足らず、細部の運営上の方針ができ上がるのが12月までかかると見込まれたためです。
本件を報じた『毎日経済』は、04月07日に行われたソウル・釜山市長選前まではごりごり推進していたのに終わってみたら前に進まなくなったと皮肉っています。
しかし、これはいささかうがち過ぎな意見であるかもしれません。というのは、両市長選挙で政府与党が惨敗した後、2021年05月04日には個人投資用国債を導入するための国債法の一部改正を閣議決定しているからです。
もちろん政府としては、この国債発行で資金獲得を容易にしようという目論見もあったでしょう。
お得ファンドの資金募集規模が半分に!理由はお金がないから
『毎日経済』は「韓国版ニューディールファンド」についても俎上に上げています。
すっかり忘れている読者がいらっしゃるかもしれませんので、念のために説明しますと、韓国経済を支える次世代の有望な業種(AI、5G、環境など)に投資すべく、資金を集めるためのものです。
韓国はなにかというとファンドを作りたがるヘンな国ですが、投資家のみならず政府も資金を出してファンドを組成してお金を突っ込もうという企画です。面白いのはこの中の「ポリシー型ニューディール・ファンド」です。
目指した規模は「13兆ウォン」(約1兆2,740億円)で、上半期には2,000億ウォン分(約196億円)が募集され、きれいに埋まりました。
この人気にはからくりがあります。
2,000億ウォンのうち430億ウォン(約420億円)は韓国政府と運用会社が出しているのです。しかも劣後出資であるため、残り1,570億ウォンを出した投資家の皆さんは、ファンドの運用実績が悪くても、430億ウォン分すなわち「21.5%」下がるまでは損を被ることはありません。
事実上の元本保証のようなものです。ですので、これを理解している投資家に人気になったのです。
ところが、下半期には半額の「1,000億ウォン」の募集規模だというのです。
理由は簡単で、政府・運用会社に投入する資金がないからです。同紙によれば残金は200億ウォン(約20億円)しかないとのこと。
そのため投資家は800億ウォン(約78億円)しか投入できません(同様に政府が劣後出資するため20%は損失補償される)。
こちらは行き当たりばったりと批判されても仕方がないかもしれません。それよりも問題は、そもそもの構想では「13兆ウォン」規模のファンドにするつもりだったことです。
これは先々どうするのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)