予告されていたとはいえ、ついに来るべきものが来ました。
2021年08月26日、『韓国銀行』金融通貨委員会は、基準金利を現在の韓国史上最低の「0.5%」から「0.25%」上げて「0.75%」とすることを決定しました。
2018年11月に利上げして以来、2年9カ月ぶりの基準金利の上昇です。
これはインフレ懸念を考慮し、アメリカ合衆国のテーパリングに先行する先制的な利上げです。
インフレは物の価値が上がることですので、相対的にお金の価値を高めてこれに対抗しなければなりません。つまり、お金を吸い上げる方向で動く必要があります。そのために金利を上げて、お金を借りることに躊躇(ちゅうちょ)する方向、銀行にお金を預ける方向に誘導する必要があるのです。
ただし、問題は何度もご紹介しているとおり、最高に膨らんだ「家計負債」です。
韓国の場合、ローンでは70%が変動金利を選択しているといわれます。基準金利が上昇すれば、貸し付け金利も上昇します。つまり、ローンの返済金額が上がります。
所得が上昇していない中、ローンの返済金額が増えれば、借金の返済に耐えかねる家庭が増えることが予想されます。ドボンになる家庭が増えれば社会不安を醸成しますし、多くの返済が滞れば金融機関に不良債権が増えるなど、総じてお金が回らなくなるリスクが高まります。
また、金利が上昇すれば、借金をして株式、不動産などの資産にお金を突っ込む、といったことはできにくくなるのは確かです。
金利上昇が新たな危機を招く可能性があると指摘する識者もあり、今回の金利上昇がどこまで韓国経済に影響するのかは、様子を見ないと分かりません。
ちなみに、『韓国銀行』の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は、「今回の利上げでもまだ緩和的だ」として追加の利上げを示唆しています。
下馬評では10月に追加の利上げがあると見られています。
以下は『韓国銀行』のプレスリリースの全文和訳です。もし時間があれば、お読みいただければ幸いです。『韓国銀行』が現状・この先をどう読んでいるのかが分かりますので。
金融政策の方向
■金融通貨委員会は、次の金融政策の方向決定時までに韓国銀行基準金利を現在の0.50%から0.75%に上方修正して金融政策を運用することにした。□世界経済は主要国のワクチン接種の拡大、経済活動の制約の緩和などで回復を続けた。国際金融市場では、コロナ19再拡散の影響で主要国国債金利が下落し、合衆国FRBは年内のテーパリングの可能性を示し、米ドルは強気を見せ、新興市場国の株価は下落した。今後、世界経済と国際金融市場は、コロナ19の再拡散の程度とワクチン普及状況、主要国通貨政策の変化と波及効果などに影響されると思われる。
■国内経済は良好な回復を続けている。コロナ19再拡散の影響で、民間消費がやや鈍化したが、輸出が好調を持続して設備投資も堅調な流れを示した。雇用状況は、就業者数の増加が持続するなど回復を続けた。今後、国内経済は、輸出と投資が好調を持続する中で、民間消費がワクチン接種の拡大、補正執行などで徐々に改善され、回復を続けるものと思われる。今年のGDP成長率は、今年5月に見られたように、4%レベルを示すことが期待される。
■消費者物価上昇率は、石油類と農畜水産物価格上昇を続け、サービス価格の上昇幅の拡大などで2%台半ばの高いレベルを続けて行き、生鮮食品及びエネルギーを除く総合消費者物価指数(食料品やエネルギーを除いた指数)は、1%台前半を示した。一般人の期待インフレ率は2%台半ばに上昇した。今年の消費者物価上昇率は5月の見通し(1.8%)を上回る2%台前半に高まるとみられ、コアインフレ率は1%台前半となることが期待される。
■金融市場では、国際金融市場の動きは、国内コロナ19再拡散などの影響受けて株価が下落してウォン/ドル為替レートが相当幅上昇した。国債金利はジャンギムルを中心に下落した。個人向け融資は増加傾向が拡大しており、住宅価格は、首都圏と地方の両方で高い上昇を持続した。
■金融通貨委員会は、今後の成長の回復が続いて中期的時計の物価上昇率が目標水準で安定するようにする一方、金融の安定に留意して金融政策を運用していくものである。コロナ19関連の不確実性が続いているが、国内経済が良好な成長を持続して物価がしばらく2%を上回る上昇を示すと予想されるので、金融政策の緩和の程度を段階的に調整していく。この過程で緩和程度の追加調整時期はコロナ19の展開状況と成長・物価の流れの変化、金融不均衡の累積リスクは、主要国通貨政策の変化などを綿密に点検しながら判断するだろう。
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「金融政策の方向(2021.8.26)」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
(吉田ハンチング@dcp)