トルコ・韓国の通貨スワップはそもそも「通貨危機」用ではない。危機の役に立たない

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2021年08月12日に締結が発表されたトルコ韓国の通貨スワップ。この通貨スワップで韓国が大損という記事が韓国メディアに出ましたが……。

そもそもこのトルコ・韓国通貨スワップは通貨危機に対応できるものではありません。20億ドル規模という金額からいって無理ですし、そもそもが貿易が主眼のものだからです。

特に筆者が言っているわけではなく、トルコ側でも(少なくとも識者は)そのように認識しているのです。通貨スワップが結ばれた2021年08月にトルコのメディアに出た記事でもそのように書かれています。

新聞記者のErdal Sağlamさんに、トルコ韓国通貨スワップについて、その経緯や意義について聞いた記事があります。『Cumhuriyet』の記事から一部を引用します。


(前略)
――スワップ契約とは何ですか?

2つの当事者が特定の期間内に利息の支払いおよび異なる通貨を交換する契約は、スワップ契約と呼ばれます。中央銀行間のスワップ協定は、主に二国間貿易に大きな赤字を抱える国の要請により実現されます。

――韓国とトルコはなぜ合意したのですか?

トルコは、貿易赤字を抱える国々にスワップ契約を要求してきました。カタールや中国とも同様の協定が結ばれています。近年、韓国との二国間貿易においてトルコは赤字が拡大しています。2021年の最初の6カ月で、赤字は46億ドルに増加しました。

――将来、経済にどのような影響を与える可能性がありますか?

トルコを含む一部の国は、ユーロとドルの支配を打破するために、現地通貨での二国間貿易を望んでいます。ただし、決済システムの構造上、これは不可能です。代わりに、恐らく最初のステップとして、スワップ契約が締結されたと言えます。
(後略)

⇒参照・引用元:『Cumhuriyet』「Erdal Sağlam anlattı: Kore ile yapılan anlaşma ne anlama geliyor?」

トルコは自身が貿易赤字を抱える国に対して通貨スワップ協定を結ぶことを推進してきており、韓国との締結もその一環だと述べています。先にご紹介したことがありますが、韓国はトルコとFTA(自由貿易協定)を結んでトルコから粗稼ぎをしているのです。

上掲記事の中にありますが、2021年01~06月で韓国は46億ドルも稼ぎました。トルコにしてみればたまったものではありません。

なぜなら韓国からの輸入代金の支払いには「ドル」が使われるからです。

トルコリラからドルに換えて支払うわけで、この両替によってトルコリラ安が進行するのみならず、ただでさえ外貨準備が脆弱なのにドルが流出することになります。

ですから、トルコとしてはお互いの通貨で輸出入ができればいいのですが、お互いにローカルカレンシーであるため事実上不可能です。そこで、次善の策として中央銀行間の通貨スワップを利用したいのです。

トルコリラとウォンを換えておいて、代金の支払いが発生したら中央銀行から輸出入銀行や市中銀行などにその通貨を供給し、それで行うわけです。トルコ側からするとあんたの国(韓国)の通貨で支払うんだから文句ないだろというわけです。これができれば、外貨をセーブできます。

また韓国側からしても、たとえトルコが経済的危機に陥っても(もう陥っていますが)、少なくとも韓国企業への支払いは『韓国銀行』からトルコ中央銀行へと渡るウォンで支払われることが期待できるので安全弁になります。先にご紹介した中韓通貨スワップも同様の意義でかつて発動されたことがあります。

以下は『Kronos』のTURHAN BOZKURTさんの記事です。一部を以下に引用します。


(前略)
韓国との協定によると、両国は20億ドル相当の資金(韓国ウォン・トルコリラ)をプールする。外貨準備を増やすためではありません。それは外国貿易の支払いに利便性を提供するためです。

(中略)

トルコはドルとユーロの赤字を止めることはできません

人民元リアルウォンなどの通貨の兌換性はドルユーロと比較することさえできません。

したがって、これらの通貨とのスワップ契約はトルコの通貨危機の救済にはなり得ません。実際のところ、カタール、中国との中央銀行間で確立されたスワップメカニズムは機能しませんでした。
(後略)

⇒参照・引用元:『Kronos』「Güney Kore ile swap merhem olmaz」

TURHAN BOZKURTさんも同じくトルコと韓国の通貨スワップは貿易の利便性のためと述べています。

また、人民元リアルウォンなどのローカルカレンシーは国際市場では兌換性(他の通貨との交換のしやすさ)が低く、ドルやユーロとは比較にならない。そのため、これでトルコの通貨危機を救うことなどできない、と述べています。

全く正しい指摘です。ですから、トルコが韓国と結んだ通貨スワップはそもそもが通貨危機用のものではないのです。機能しないので。

トルコ・韓国の中央銀行間で締結された通貨スワップは、上掲したトルコの方々が語っているとおり、韓国との貿易赤字に困っているトルコが「韓国に要請した」というのが本当のところでしょう。トルコとの貿易で荒稼ぎをしている韓国は、自国企業が売上を取りはぐれないように締結したと考えるべきではないでしょうか。

韓国が損をするとしたら、スワップが発動後、『トルコ中央銀行』がウォンを返せません――となったときですが、たかだか20億ドル規模、まるまる損失になったところで、さすがに『韓国銀行』が揺らぐこともないでしょう。

しかも、スワップバックで返ってこないのは「ウォン」です。最悪、『韓国銀行』は自分で印刷できます。なぜこれで『韓国銀行』が揺らぐのでしょうか。

もっとも『韓国銀行』が急場に使えるドルのキャッシュは恐らく200億ドルないだろう(真水は100億ドルぐらいではないか)、などと筆者は考えます。

あのエルドアン大統領が「ようし通貨防衛に使うぞー」と独自の考えを持っていれば別です。

(柏ケミカル@dcp)

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