韓国メディアでは「コロナ禍の人の移動制限も緩和され、日本からの観光客も復調し……」といった報道がある一方で、「日本に韓国人が多数出掛けるようになり……」といった報道が出ています。
以下の先記事でご紹介したおとり、2022年の年末年始の旅行先として韓国の皆さんに日本は大人気。
逆に、この年末年始の旅行先に韓国が人気という話はとんと聞きません。もっとも「なぜ冬に厳寒の韓国に行かなければならないんだ。もっと暖かいところに行こうよ」という話ですから、特に韓国が人気にならなくても当然です。
「韓国から日本(外国)へ」「日本(外国)から韓国へ」のお金のイッテコイがまさに「収支」になります。
この収支を「旅行収支」といいます。訪韓外国人の韓国での消費から、韓国人旅行者の海外での消費を差し引いたものです。
簡単にいえば、訪韓してお金を落としてくれれば収入、外国へ行ってお金を使うと支出です。この差がいくら黒字(赤字)になったか――と計上するわけです。
つまり、訪韓してくれる外国人旅行者が多けば、韓国に落としくれるお金が増えて収入が増えます。しかし、いくら収入が増えても韓国人が外国で落とすお金=支出の方が多ければ、赤字です。
出ていくお金の方が多くなってしまうわけです。
韓国メディア『毎日経済』がこの旅行収支に注目した記事を出しています。「韓国の旅行収支は赤字続きじゃないか」という内容です。
記事の一部を以下に引用します。
実際に韓国の旅行収支赤字は、1989年の海外旅行自由化以来数十年続く経済の痛い指になっている。
国際通貨基金(IMF)為替危機時である1998年と1999年を除けば、1991年以来毎年マイナスだった。
2000年(2億9,760万ドル赤字)以後、今年まで22年連続赤字だ。
(中略)
一方、日本はすでに2010年代半ばの観光客3,000万人、観光収入300億ドルを達成して韓国と格差を広げていく実情だ。
(後略)
「韓国は旅行収支が22年赤字」と書いていますが、これは本当です。
国際収支統計から旅行収支の部分だけを切り出して、1980~2021年までの推移をグラフにすると以下のようになります。
⇒データ出典:『韓国銀行』公式サイト「ECOS」
上掲のとおり、韓国の旅行収支のほとんどがマイナスで、最後に黒字になったのは、
1999年:+19.6億ドル
の2年だけで、2000年から2021年まで22年連続の赤字です。
また、日本旅行が大ブームになっていた2017年には史上最高の赤字「-183.2億ドル」を達成しています。逆にいえば、これは2017年がいかに景気が良かったかの証明でもあります。景気が良くてお金があるので、皆さん海外旅行に出掛けるわけですので。
2017年をピークに旅行収支は減少し、特に「2020年:-58.2億ドル」「2021年:-62.3億ドル」と赤字が縮小したのは、言うまでもなくコロナ禍で人の移動が制限されたためです。
先にもご紹介しましたが、コロナ禍で韓国経済にプラス方向での影響があったとすれば、この旅行収支の赤字が減ったことぐらいです。
このように韓国の旅行収支が惨憺たる有り様なのは、外国へ旅行する韓国人に比べて、訪韓する外国人がずっと少なく、お金も入ってこないからです。
俗に「韓国に旅行しても見るところがない」「韓国旅行ではリピーターが少ない」などといわれますが、これらの言説を証明する数字でもあります。
上掲の記事では(よせばいいのに)「日本との格差が拡大するばかりだ」などと日本と比較していますが、観光資源の豊かさが韓国と日本では比較になりませんので、比べるだけ無駄というものです。
(吉田ハンチング@dcp)