韓国の企画財政部が「2021年末時点での対外債権・対外債務の動向および評価」というデータを公表しました(大本のデータは『韓国銀行』が公表した対外資産負債残高「略称IIP」)。
貿易のもうけが減少し、韓国が危なくなってきたと見られる中、これは大変重要なデータです。
「対外債権」は「韓国が外国から取り立てることができる金額」、「対外債務」は「韓国が外国に返済しなければならない金額」です。
国がデフォルトするのは対外債務を返済できなくて――ですから、この金額は非常に注目なのです。以下がプレスリリースです。
21年末の対外債権は1兆779億ドルで前年末(1兆278億ドル)に比べ502億ドル増加
◇’21年末の対外債務は6,285億ドルで前年末(5,449億ドル)比836億ドル増加
ㅇ外人債権投資など長期外債中心増加(+767億ドル)
– 韓国経済に対する海外投資家の肯定的な視点が持続し、外人債券投資歴代最大流入
– 12年ぶりに行われたIMF SDR配分は特異要因として作用ㅇ短期外債増加幅は’16年以降最低水準(+69億ドル)
-パンデミック後の景気回復と貿易改善により民間貿易信用増加
◇外債増加幅は拡大したが、外債健全性は良好な水準維持
ㅇ短期外債/総外債(26.4%)比重は’15年以降最低水準、短期外債/外為保有額比率(35.9%)も前年比より減少
まず、韓国が外国から取り立てることのきでる対外債権は1兆779億ドル。
逆に韓国が外国に返済しなければならない対外債務は6,285億ドルなので、差し引き「4,494億ドル」の余裕(対外純債権)があります。
ただし、債権と債務の増加幅を比べてみると、
対外債権:+502億ドル
対外債務:+836億ドル
と、対外債務の方が「334億ドル」多く増えています。借金の方が増えたわけです。
外国人投資家が韓国の長期債券に737億ドルもお金を突っ込んだとしていますが、これについては先の記事でもご紹介したとおりです。これは利子を付けて返す金額で、債務増です。
一方で短期債券(1年以内に償還する必要あり)には2016年以来の最小金額「+69億ドル」で済んだと書いています。
意味するところは「1年以内に返済しなければならない借金は最小で済んだよから大丈夫」です。その分、利率が高く返済期間の長い長期債券への投資が737億ドルもあります。長く返済を続けないといけないわけです。
「韓国経済に対する海外投資家の肯定的な視点が持続し……」と書いていますが、コロナ禍での世界的な低金利の中、リスクと利率を天秤にかけてまだしも利率の高い韓国の債券に資金が流入したということです。これから資金の巻き戻しが始まったらどうなりますでしょうか。
『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)のSDR分配については僥倖で、Money1でも先にご紹介したとおり、韓国は約117億ドル分の分け前に預かりました。その分、外貨準備に組み込んで『韓国銀行』は公表しています。
次に、「短期外債/総外債比率」と「短期外債/外為保有額比率」※。
※なぜか『韓国銀行』が外貨準備を「外為保有」と言い換えて以降、それにならったのか政府資料も外貨準備高を外為保有額と書いています。
なぜこんなものを計算するかというと、いざというときに耐えられるのかを考える際の指標になるからです。つまり、短期外債は1年以内に返済しないといけない借金ですから、この比率があまりに高いと「スグ返せといわれたらお金が足りなくなるんじゃないの」と推測できるわけです。
で、
短期外債/外貨準備高比率:35.9%
とのこと。「短期外債/総外債比率」は2015年以降最低で、「短期外債/外貨準備高比率」は前年比で減少した――と書いています。つまり、「だから大丈夫だ」と。
どうも韓国は、韓国通貨危機で短期借入金の増加でひどい目に遭ったため、長期借入金なら大丈夫だろうと踏んでいる節があります。
1年以内の借金より安全だろうと考えても無理はありませんが、しかし、Money1で先にご紹介したとおり、長期債券への投資だとしても「738億ドル」(約8兆7,409億円)もの資金が流入しているのは異常です。
また、このような資金流入で資金不足をファイナンスしているのだとすれば、資金流入が止まったらどうするつもりなのでしょうか。韓国はアメリカ合衆国ではありません。常に資金確保とキャピタルフライトについて考えておかねばならないのではないでしょうか。特に貿易のもうけが減少してきた現在においては。
――ともあれ、韓国政府は対外債務の状況については「大丈夫」と言っています。
(吉田ハンチング@dcp)