ロシアと北朝鮮が急接近。北朝鮮は「外貨稼ぎ」でウクライナに労働者を送りたい。北朝鮮10万人義勇軍という話まで出た

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日本語ではあまり報じられないのですが、北朝鮮ロシアが急接近しています。

まさに「さびしん坊」同士の連帯ともいうべきものですが、北朝鮮はロシアが無法に起こした戦争に積極的に協力する姿勢を見せているのです。

エールの交換でもやっているのか

2022年02月
ロシアがウクライナに侵攻

04月
北朝鮮メディアがロシアの侵略行為への支持を表明

05月
ロシアが国連で北朝鮮への追加制裁を阻止

07月14日
北朝鮮が、ドネツク人民共和国とルハーンシク人民共和国を正式に承認
(ウクライナ東部の2つのロシア語圏)
これによりウクライナは北朝鮮と国交を断絶

ロシア下院独立国家問題委員会のカズベク・タイサエフ副議長が、北朝鮮を「ロシアにとって非常に大きな戦略的パートナー」と発言。

07月19日
駐北朝鮮ロシア大使のアレクサンドル・イヴァノヴィチ・マツェゴラさんが、日刊紙『イズベスチヤ』のインタビューに応えて「北朝鮮の労働者はロシアにとってドンバス地域の再建に役立つ資産となり得る、と発言

このように、北朝鮮とロシアはまるでエールの交換のようなことを行っています。

⇒参照元:『イズベスチヤ』「北朝鮮は、国連で投票するたびに私たちに請求しません」ロシアの駐北朝鮮大使アレクサンドル・マツェゴラが北朝鮮がDPRとLPRを承認した動機について語る」

マツェゴラ駐北朝鮮ロシア大使へのインタビュー記事は大変興味深いものです。

詳細は上掲URLの『イズベスチヤ』の記事を読んでいただきたいのですが、ウクライナからの分離独立を画策している自称国家「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」への支援を北朝鮮が行う可能性がある――としているのです。

北朝鮮は労働者を派遣するつもりだ、との報道あり

『イズベスチヤ』のインタビュー記事を受けて、北朝鮮を注視するメディア『デイリーNK』が北朝鮮当局が「ドンバス地域に派遣する労働者の選別にかかっている」と報じています。

同紙の記事から一部を以下に引用します。

(前略)
複数の情報筋が『デイリーNK』に語ったところによると、北朝鮮の指導部は、戦争がまだ続いている間に同胞をウクライナ領に派遣することを熱望しているようだという。

ロシアのある情報筋は7月25日、『デイリーNK』に対し、北朝鮮当局がロシアで活動する企業に対し、戦地への労働者派遣の準備をするよう指示したことを明らかにした。

北朝鮮当局は、すでにロシアにいる1,000人以上の労働者をドンバス地方に送る予定だという。

そのため、ロシアにある北朝鮮企業は今月末までに、平壌に派遣する労働者のリストを提供しなければならない。

また、北朝鮮当局はドンバス地方に派遣する国内の人材を選定している。
(後略)

⇒参照・引用元:『DAILY NK』「N. Korea has selected workers to be dispatched to eastern Ukraine」

『デイリーNK』の情報が正しければ、北朝鮮当局はウクライナに1,000人規模の労働者を送り込みたいようです。

もし本当なら、これは外貨稼ぎのためだと思われます。

マツェゴラ大使が「過去にはウクライナから北朝鮮に原料炭や小麦を送ったこともある」という旨の発言をしていますので、資源・食料狙いであるとも考えられます。

北朝鮮は飢餓、コロナ禍に見舞われ、二進も三進もいかなくなっていますので、ロシア側からの勧誘があればまさに渡りに船でしょう。ただし、北朝鮮に対する国連制裁決議があるので、これをいかに「かいくぐるか」が問題です。

しかし、ロシアとしても、もはやここまできたら国連制裁決議など一顧だにしないのではないでしょうか。

いくらなんでも……な話まで出ている

このような状況があるためでしょう、「北朝鮮がウクライナに10万人規模の派兵を行うのではないか」という都市伝説のような情報まで出ています。

例えば以下の『Military Watch Magazine』2022年08月07日の記事です。


⇒参照・引用元:『Military Watch Magazine』「Will North Korea and Russia Soon Be Fighting NATO Together in Ukraine? 100,000 Koreans to Reportedly Join War Effort」/スクリーンショット

「ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両共和国および多くのロシア情報筋からの報告によると、北朝鮮はウクライナ政府とそのNATO支持者に対する3者の継続的な戦争努力を支援するために、最大10万人の人員を派遣する予定であるという」と書いています。

情報の出どころは、上掲の『NewYork Post』が報じているとおり、ロシア国営テレビで、国防専門家というイーゴリ・コロチェンコさんが主張したものです。

コロチェンコさんは「10万人の北朝鮮の志願兵が紛争に参加する準備ができている、という報告がある」と述べました。

また「北朝鮮がウクライナのファシズムと戦うという国際的義務を果たしたいと表明するなら、我々はそれを受け入れるべきだ」とも。

しかし、にわかには信じがたい話です。

実現したら歴史の皮肉

外貨が喉から出るほどほしい国ですし、軍隊を食わせることも困難になっていますので、確かに10万人を外国に送りたいと思っているかもしれません。その分、北朝鮮内の食料が助かりますから。

ロシアでは兵士の損耗が激しく、北朝鮮が兵士を補充してくれるならお金を払ってもいい、と考えるかもしれません。ロシア人の代わりに北朝鮮人に死んでもらうわけです。

両独裁者の思惑は一致するかもしれませんが、現実問題として北朝鮮の現状で10万人を動員してウクライナまで送るような力があるとはとても考えられません。ロシアがロジスティクスの部分を全部引き受けるのであれば可能かもしれませんが。

つまり、「身一つで来てもらえればいいから」とプーチン大統領が言えば、できるかもしれません。北朝鮮の常で、先に金正恩にお金を入れないと北朝鮮は動かないでしょうが。

この話がもし実現すれば、歴史の皮肉を感じさせるものとなるでしょう。

韓国はベトナム戦争に参戦して、アメリカ合衆国からお金をもらいました。「人力輸出」です。これによって韓国は外貨を手に入れ、経済発展の基礎を築くのに回しました。

1972年に韓国の人力輸出が終わって50年。

今度はソ連の後身たるロシアに北朝鮮が義勇軍を出すかも――というのです。歴史の皮肉を感じずにはいられません。冷戦の最前線で向き合ってきた韓国・北朝鮮が、朝鮮半島以外の場所で、バックについた国のために戦うのです。しかも動機は両方ともお金です。

朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は韓国経済を発展させるために、どうしても外貨が欲しかった。

金正恩総書記は外貨がないと生活が維持できません。

労働者の方は国連制裁など無視してすぐにでも実現しそうですが、10万人の義勇軍の話はまだ眉唾です。ただし、ロシアと北朝鮮が急接近しているのは事実なのです。

(吉田ハンチング@dcp)

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